『落ちこぼれ』聖女は語りたい ~聖女の癖に動物と話せるだけの君には失望したと婚約破棄されました。後から妹に騙されていると気づいても遅いです~

日之影ソラ

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「お気づきになられました? そうです、私も聖女になったんですよ? お姉さまと同じ」
「そ、そんな! ありえません! 聖女になる人は生まれた時に決まっていて」
「その前例を覆してくれたんだよ彼女は! なんと素晴らしいことだろう!」
「アイゼン様」

 彼は歓喜し、大げさに両腕を広げる。

「彼女は不可能を可能にしてしまった! 間違いなく君なんかより逸材だ! それに君と同じ家柄の出身で、実質家同士の関係性は変わらない。これほど相応しい相手は他にいないよ。何より美しいしね」
「あら、アイゼン様は口がお上手ですね」
「何を言うか。事実を言っているまでだよ、アリス」
「ふふっ、嬉しいですわ。アイゼン様」

 二人は目の前で恋人同士の様に目を合わせ、私を無視して愛を囁き合う。
 婚約者を奪われたことはショックだった。
 でも、それ以上に信じられなかった。

「やはりありえません! 聖女の力が後から手に入るなんて……その証、本物なのでしょうか?」
「何だと?」
「に、偽物の可能性も」
「ふざけているのか!」

 突然の怒声に、恐怖で心臓の鼓動が早まる。
 アイゼン様の表情は、かつてないほどに怒りに満ちていた。

「ア、アイゼン様?」
「君は彼女が嘘をついているというのかい? 自身の妹を嘘つき呼ばわりするとは、人間として最低なことだぞ!」
「なっ……」
「酷いです……お姉さま。私の頑張りを疑うなんて」

 アリスがシクシクと涙を流し始める。
 私は知っている。 
 それがただの演技であると。
 だから私はもう一度、アイゼン様に考え直してもらおうと思った。

「アイゼン様ののためにも、一度しっかりお調べになられたほうが」
「黙れ! お前の言葉など信じるに値しない。なんという不愉快だ……これほど不快な気分も久しぶりだぞ」

 人間として最低とか。
 不愉快だとか。
 さっきからこの人は、一体何を言っているのだろう。
 どの口が言っているのだろう。
 自分勝手な理由で婚約して、それを破棄したと思ったら正当化して。
 まるで自分は悪くないみたいに……どっちが最低なんだ。
 そう思ってしまったら、彼に抗議する気持ちは勢いを失っていく。

「もういい、これ以上話すことはない!」

 それはこちらのセリフだと、言いかけた口を閉じる。
 代わりに私は、出来るだけ丁寧にこう言う。

「わかりました。二人とも、お幸せに」

 彼は私のことをハズレだと言ったけど、私にとっては逆だと分かった。
 ハズレを引いてしまったのは……私のほうだ。
 他人を地位や力でしか見ていない。
 敬うことも、労わることも出来ない人とは、最初から仲良くなれなかった。
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