本物の恋、見つけました ~僕らの恋は偽物だったと言った癖に今さらやり直そうとか無理です~

日之影ソラ

文字の大きさ
20 / 26
第一章

20.楽しみにしています

しおりを挟む
 私は浮かれていた。
 二人でデートしているという状況に。
 いつもと違う積極的なユートに。
 それが不自然だとも思ったはずなのに、深く考えないようにしていた。
 
「ねぇユート、明日のお弁当は何がいいですか?」
「何でも――」
「何でも良いが一番困るんですよ」
「うっ……って言われてもな」

 好き嫌いはないと以前に言っていた。
 そういうのを考えたこともあまりないのだと。
 彼の正体を知った今なら、その言葉の意味も少しだけわかる。

「ならお肉が良いですか? お魚がいいですか?」
「そうだな~ どっちかというと魚かな」
「わかりました! なら明日のメインはお魚にしますね」
「ああ。楽しみにしてるよ」

 そう言ってユートは微笑む。
 優しい笑顔だけど、どこか別の所を見ているような気もした。
 でも私は気にせず接する。 
 ユートとのデートを純粋に楽しみたかったから。 
 それからしばらくブラブラと商店街を歩いていた。
 すると、気づけば私たちは商店街から外れ、人通りの少ない路地へ入っていた。

「あの……ユート。この先は何もありませんよ?」
「ああ、知ってる」

 そう答えたユートは、まっすぐに路地を進んでいった。
 賑やかな商店街からはどんどん離れている。
 さすがの私も不安になって、ユートに尋ねる。

「どこまで行くんですか?」
「もう少し先だ。大丈夫」

 大丈夫って……一体何を考えているのでしょう。
 私にはわからなくて、もっと不安になる。
 心なしか冷たい視線も感じるし、嫌な雰囲気が漂っている。
 そして唐突にユートは立ち止まった。

「この辺りで良いか」
「ユート?」
「ここなら余計な邪魔も入らない」
「え……」

 ユートは振り返り、私の手を優しく握る。
 
「エミリア」

 え、え、えぇ?
 何ですかこの状況?
 二人きりの路地で、邪魔が入らないって……
 まさか、まさかユート……そのつもりなんですか!?

 頭の中に流れたのは、とても他人には話せないような妄想だった。
 自分の頬が赤くなっているとわかる。
 それくらい身体が熱くて、心臓がドクドクとうるさい。
 隠しきれない動揺が震えとなって現れる。

 人通りの少ない路地で二人きり。
 これは間違いありません。
 ユートもそのつもりで……でも待ってください!
 私たちはまだキスもしていないんですよ?
 それなのに……でもでも、ユートがその気なら私はいつでも受け入れる準備があります!

 という感じで吹っ切れた私に、ユートは小さな声で言う。

「ごめん、必ず守るから」
「へ? 守――」

 次の瞬間、鳴り響く爆発音。
 立ち昇る土煙で周囲の視界が閉ざされる。
 気が付けば私は、ユートの胸に抱き寄せられ、透明な結界の中にいた。

「ようやく出てきたか。もういるのはわかってるんだ。さっさと姿を現したらどうだ?」

 ユートがそう呼びかけると、ポツリポツリと黒い影が姿を見せる。
 気配なんて感じなかった。
 いつの間にか私たちは、黒ずくめの八人に囲まれていた。

「ユ、ユート」
「暗殺者だ」
「え?」
「俺を殺しに来たか、あるいは君を攫いに来たんだろう」
「そ、そんな……」
「見られているのは気付いてた。でもこうでもしなきゃ、出てきてくれそうになかったんだよ」

 そうか。
 私をデートに誘ったのも、離れるなと言ったのも、狙われているのに気付いていたから。
 学園を出てからずっと、私を守るために……

「やはり気付いていたか」

 暗殺者の一人が話しかけてきた。
 ユートが答える。

「当たり前だ。俺を誰だと思っている?」
「死神だろう? もちろん知っているさ」
「それを知って挑んでくるとは……命知らずだな」
「そうでもない。我々はプロだからね? 勝算がないのに挑んだりしないさ!」

 暗殺者たちが武器を取る。
 私にもわかるくらいハッキリとした殺意を向けて。

「ユート……」
「大丈夫」

 怯える私を、ユートは優しく抱き寄せる。

「もう終わってる」
「何をっ……馬鹿な」

 ユートの言葉通り、戦いならすでに終わっていた。
 暗殺者たちは全員、彼の魔術によって拘束され、身動きがとれなくなっていたんだ。
 白く光る縄が、暗殺者たちを締め上げている。

「いつの間に……」
「最初からだよ。気付いていなかったんだな」

 倒れていく暗殺者たちを見下ろしながら、ユートは言う。

「覚えておくと良い。勝算なんて言葉を使った時点で、そんなものは消えるんだよ」

 パチンと指を鳴らす。
 すると暗殺者たちは静かになった。
 何をしたのかわからないけど、意識を刈り取ったらしい。

「終わったの?」
「ああ」

 ホッとひと段落する私に、ユートは頭を下げる。

「え、ユート?」
「すまなかった。君を囮にするような真似をして」
「い、良いですよ。だって私を守るためだったんでしょう?」
「それはそうだけど……」
「なら私は満足です!」
「エミリア……」
「あっ! でもデートが嘘だったのは嫌なので、今度はちゃんとデートしてくださいね?」

 次こそは誰にも邪魔されないデートを。
 まずはそこが、私にとって重要なこと。

「ふっ……ああ、また誘うよ」
「はい! 楽しみにしていますね」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

侯爵家に不要な者を追い出した後のこと

mios
恋愛
「さあ、侯爵家に関係のない方は出て行ってくださる?」 父の死後、すぐに私は後妻とその娘を追い出した。

処理中です...