本物の恋、見つけました ~僕らの恋は偽物だったと言った癖に今さらやり直そうとか無理です~

日之影ソラ

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第一章

21.お前はやり過ぎたんだ

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 ユートは捕らえた暗殺者たちを一か所に集めていた。
 私はそれを少し離れた所で眺めている。

「ユート! その人たちはどうするのですか?」
「王国に引き取ってもらうよ。もう連絡はしてあるから、直に来ると思う」
「そうですか……」

 この人たちは本当に、私やユートを襲ってきた。
 誰かに依頼されて?
 もしかして、こんなのことが毎日のように続くのだろうか。
 そう思うと怖くて、私も身体が震える。

「エミリア」

 そんな私を名前を呼んで、ユートが歩み寄ってくる。

「ユート……この人たち以外にも、まだ暗殺者はいたりしませんか?」
「この周辺にはいないよ。一先ず襲われる心配はない」
「そう……ですか」
「だけど時間の問題だろう。元を絶たない限りは、明日もそれ以降も安心はできないな」
「元……」
「依頼主だよ。俺や君に恨みがあって、暗殺者を寄こせるほどの権力や金がある。そんな人間の心当たりは、一人しかいないだろう?」

 ユートも私と同じことを考えていた。
 私たちに暗殺者を仕向けるような人なら、心当たりがある。
 ユートにではない。
 私にでもなくて、私たちを恨んでいる人のことを、私はよく知っている。

「でも……本当に? 本当にそうなのでしょうか」
「さぁな。そこは調べてみたいと確証はない。ただ……他に思い当たらないだろ? 俺たち二人を狙う奴なんてさ」
「はい……」

 ユートの言う通りだ。
 それでも私は信じたくないと思った。
 どんな理由があれ、こんなにも簡単に人を殺めようと考える人がいることが、信じられなかった。
 何よりとても……悲しい。

「この件は俺に任せてくれないか? エミリア」
「え……ユートに?」
「ああ、俺が何とかするよ」
「で、でもユートも狙われているのですよ?」
「俺の心配なんていらないよ。もう俺が誰なのか知っているだろ?」

 知っている。
 ユートが強いということは私も知っている。
 だけど今は、そのことを言っているわけじゃない。

「わかってるから」
「ユート……」
「安心してほしい。それより君は、次のデートでどこに行きたいかを考えておいてほしいな。俺はそういうのは苦手だし、君が選んでくれると助かる」

 そう言ってユートは恥ずかしそうに笑う。
 彼の笑顔を見ていたら、少しだけ心が安らかになって、大丈夫だと思えるようになった。

「はい! 任せてください」
「ああ」

 こっちも任せてくれ。
 ユートはそう言い残し、その日は終わる。
 だけどたぶん、今日の夜はいつもより長くなりそうだと私は思っていた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ロストロール家の屋敷は、一日を通して厳重な警備がされている。
 内部へ手引きでもしない限り、侵入は不可能に近いだろう。
 ただし今回の場合は運が……いいや、相手が悪かった。
 此度敵に回したのは、この国で最も優れた魔術師……その一人だったのだから。

「だ、誰だ?」

 突然開いた窓に驚くブロア。
 音もなく、気配もなく、人の姿もない。
 ただそこに何かがいるという、漠然とした不安が彼を襲う。
 そして、出入り口の扉の鍵が閉まる。

「なっ……」
 
 彼は慌てて開けようとしたが、鍵は掛けられ頑丈な扉はびくともしない。

「おい開けろ! 誰かいないのか!」
「無駄だ」
「っ――!?」

 バタン!
 空いていた窓が閉じ、そこには一人の男が立っていた。
 黒いコートに身を包み、月明かりに照らされながら、より影は濃くなる。

「お、お前は……」
「さっきは世話になったよ。ブロア・ロストロール」
「し、死神」
「そっちの名前で呼ぶのか。まぁいいけど、その死神に暗殺者を送り込むなんて、本当に良い度胸をしている」
「あ、暗殺者? 何の話だ?」
「とぼけなくて良い。もう――」

 俺は懐から取り出したものを床に落とす。
 彼の名前が書かれた紙や直筆サイン、彼との関係を示す証拠の数々を。

「証拠はこれでもかっていうくらい集まってる。言い逃れは出来ないぞ」
「くっ……」
「簡単に見つけられた。隠ぺいが雑過ぎるし、この件に大人は絡んでいないな? 最後までお前ひとりでやっていたんだろう?」
「そ、そんなものが証拠になるか! 僕は貴族だ。そのくらい後からどうとでもなるんだよ!」

 ブロアは怯えながらもニヤついて話す。
 残念ながら、これだけ証拠を揃えても、罪を隠される可能性はゼロじゃない。
 貴族の面倒な所はそこだ。
 正義とか悪よりも、メンツや金を優先して守ろうとする。

「そうだな。だったらここで殺したほうが早いか」
「……は?」
「聞こえなかったのか? ならもう一度言ってあげようか?」
「ま、待て! 待ってくれ! こ、殺すだと? この僕を殺すというのか?」
「ああ。丁度良い暗殺者も揃ってるしな」
「じょ、冗談だ――」
「死神が冗談で殺すなんて言うと思うか?」

 俺はブロアでもわかる殺気を放つ。
 彼は怯え腰を抜かし、床にしりもちをついて後ずさる。
 ゆっくりと近づく俺に、恐怖の表情は濃くなる。

「お前はやり過ぎたんだ。これ以上、俺たちの周りで何かされる前に、ここで終わらせておくよ」
「ひ、ひぃ!」
「さようなら――」

 俺は彼に手をかざす。
 その時なぜか、彼女の笑顔が脳裏に浮かんだ。
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