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宮廷鍛冶師をクビになった私は、王都を離れることにした。
もっとも栄えていて王国の中心と言える街。
平民にとっても憧れの街だけど、私はあまり好きじゃない。
何より王都には王城があり、宮廷がある。
せっかく辞められたのに、王城なんて毎日見える場所にいたら、嫌でもきつい日々を思い出してしまう。
気持ちをリセットするためにも、新天地へ向かうことを決めた。
特に行く当てもない。
なんとなく王都から北へ進み、ラクストという大きな街にやってきた。
王都ほどじゃないけど栄えた街だ。
特にギルドと呼ばれる冒険者の組織がいくつも拠点を構えているとか。
ギルドについてはあまり詳しくないけど、王国に属さない独自の組織らしい。
街中にはギルドが経営するお店も多く並んでいた。
飲食店に洋服屋さん、アイテムショップなんかもある。
チラッと見た限り、武器屋さんもあるみたいだ。
「そろそろ仕事見つけないとな~」
王都を出てすでに一週間が経過した。
当てもなく彷徨って、何もすることなく一日を負える。
休暇としては十分すぎるだろう。
のんびりな時間も悪くないけど、あたしはどうやら落ち着きがないらしい。
忙しくしていた頃の癖か、何かしていないと落ち着かない。
いや、それ以前にお金の問題もある。
「さすがに減ってきたな……」
宮廷で働いてた頃の給料はほとんど貯金していた。
使う暇なんてないほど忙しかったから。
おかげで相当な金額は持っている。
ただ、お金は有限だ。
徐々に減っていくことを実感し、お金は使えばなくなるという当たり前の事実を痛感する。
まだまだ余裕はあるけど、焦りは感じられてきた。
「新しい仕事場、仕事……」
探さないといけない。
街に武器屋はあったし、鍛冶師として雇ってもらう?
現実的だけど、ちょっと不安だ。
また宮廷みたいな環境だったら、地獄のような日々に逆戻り。
さすがに勘弁してほしい。
仕事量は適切、残業代も支払われて、パワハラを受けない環境がいい。
もしくはいっそ……。
「そこの君ー、暇そうだねぇ~」
「よかったらオレたちと遊ばねぇーかー?」
「は?」
道端でぼーっと考えていたら、いつの間にか知らない男たちに囲まれていた。
ガラの悪い男たちが私を見てニヤニヤしている。
「なんだよ」
「俺らもちょうど暇なんだよ」
「別に、あたしは暇してないから。どっか行ってくれる?」
「ちょっと待ってって。少し遊ぶだけだからさー」
その場から立ち去ろうとした私の手を、男の一人がガシっと掴む。
「離して!」
私は思いっきり振りほどいた。
すると男はギロっと私のことを睨む。
「っつ、痛ぇな。何しやがる」
「そっちが掴んできたのが悪いだろ」
「てめぇ……調子に乗ってんじゃねーぞ。ガキのくせに」
男たちは私を取り囲み、威圧するように見下ろしてくる。
私の態度が気に入らなかったのか、全員が怒っていた。
怒りたいのはこっちのほうだ。
この先のことを真剣に悩んでいる時に邪魔されて……。
「どいてくれ」
「口の利き方がなってねーな? そういう奴には教育的指導をしてやらねーと」
こいつら……。
あたしが女だから油断してるんだな。
人数も六対一。
私に乱暴するつもりなのは、やらしい視線から丸わかりだ。
「はぁ……」
もういいや。
我慢してたけど、ここは宮廷じゃない。
相手も王女や勇者じゃないんだ。
我慢する必要なんてどこにもない。
「退かないなら……」
「――何してるんだ? お前たち」
「あん? なんだて……あ……」
「あ、あんたは……」
もっとも栄えていて王国の中心と言える街。
平民にとっても憧れの街だけど、私はあまり好きじゃない。
何より王都には王城があり、宮廷がある。
せっかく辞められたのに、王城なんて毎日見える場所にいたら、嫌でもきつい日々を思い出してしまう。
気持ちをリセットするためにも、新天地へ向かうことを決めた。
特に行く当てもない。
なんとなく王都から北へ進み、ラクストという大きな街にやってきた。
王都ほどじゃないけど栄えた街だ。
特にギルドと呼ばれる冒険者の組織がいくつも拠点を構えているとか。
ギルドについてはあまり詳しくないけど、王国に属さない独自の組織らしい。
街中にはギルドが経営するお店も多く並んでいた。
飲食店に洋服屋さん、アイテムショップなんかもある。
チラッと見た限り、武器屋さんもあるみたいだ。
「そろそろ仕事見つけないとな~」
王都を出てすでに一週間が経過した。
当てもなく彷徨って、何もすることなく一日を負える。
休暇としては十分すぎるだろう。
のんびりな時間も悪くないけど、あたしはどうやら落ち着きがないらしい。
忙しくしていた頃の癖か、何かしていないと落ち着かない。
いや、それ以前にお金の問題もある。
「さすがに減ってきたな……」
宮廷で働いてた頃の給料はほとんど貯金していた。
使う暇なんてないほど忙しかったから。
おかげで相当な金額は持っている。
ただ、お金は有限だ。
徐々に減っていくことを実感し、お金は使えばなくなるという当たり前の事実を痛感する。
まだまだ余裕はあるけど、焦りは感じられてきた。
「新しい仕事場、仕事……」
探さないといけない。
街に武器屋はあったし、鍛冶師として雇ってもらう?
現実的だけど、ちょっと不安だ。
また宮廷みたいな環境だったら、地獄のような日々に逆戻り。
さすがに勘弁してほしい。
仕事量は適切、残業代も支払われて、パワハラを受けない環境がいい。
もしくはいっそ……。
「そこの君ー、暇そうだねぇ~」
「よかったらオレたちと遊ばねぇーかー?」
「は?」
道端でぼーっと考えていたら、いつの間にか知らない男たちに囲まれていた。
ガラの悪い男たちが私を見てニヤニヤしている。
「なんだよ」
「俺らもちょうど暇なんだよ」
「別に、あたしは暇してないから。どっか行ってくれる?」
「ちょっと待ってって。少し遊ぶだけだからさー」
その場から立ち去ろうとした私の手を、男の一人がガシっと掴む。
「離して!」
私は思いっきり振りほどいた。
すると男はギロっと私のことを睨む。
「っつ、痛ぇな。何しやがる」
「そっちが掴んできたのが悪いだろ」
「てめぇ……調子に乗ってんじゃねーぞ。ガキのくせに」
男たちは私を取り囲み、威圧するように見下ろしてくる。
私の態度が気に入らなかったのか、全員が怒っていた。
怒りたいのはこっちのほうだ。
この先のことを真剣に悩んでいる時に邪魔されて……。
「どいてくれ」
「口の利き方がなってねーな? そういう奴には教育的指導をしてやらねーと」
こいつら……。
あたしが女だから油断してるんだな。
人数も六対一。
私に乱暴するつもりなのは、やらしい視線から丸わかりだ。
「はぁ……」
もういいや。
我慢してたけど、ここは宮廷じゃない。
相手も王女や勇者じゃないんだ。
我慢する必要なんてどこにもない。
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