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一触即発の雰囲気が一変する。
見知らぬ男性が声をかけ、男たちが振り返った。
途端、彼らの表情が変わった。
ひどく怯えている。
声をかけてきた男性はまだ若く、体格的にも男たちと大きく変わらない。
赤い髪と瞳が特徴的で、どこか貴族っぽさを感じる。
「寄ってたかって女の子一人を脅してたのか?」
「い、いやそういうわけじゃ……」
「じゃあどういうつもりだ?」
「……す」
す?
「すみませんでしたあああああああああああああああああああああ」
ビックリした。
突然男たちが土下座を始めて、私は驚きたじろぐ。
「どうかご勘弁を! もうしませんから!」
「やめろ馬鹿、目立つことをするな」
「ゆ、許していただけるんですか?」
「もうしないと誓うならな」
「は、はいもちろん!」
「じゃあ行け」
「はいぃ!」
男たちは勢いよく立ち上がり、一斉に走り去っていく。
嵐のような出来事に、私はぽかーんと驚きながら見ているしかなかった。
どういうことだよ。
一人の優男相手に、大人六人が土下座して許しを請うって……。
「ったく、大丈夫だったか?」
「え、あ、うん」
「ならよかった。見かけない顔だけど観光にきたのか?」
「いやそういうわけじゃ……」
彼は気さくに話しかけてくる。
土下座のせいだろうか。
周囲の視線が集まっているような……。
いや、私じゃなくて彼にみんなが注目している気がする。
「あの……あんた誰なんだ?」
「ん? 俺か? 別に名乗るほどでもないんだが……」
彼は頭をぽりぽりと触り、勿体ぶってから答える。
「俺はロール・フローレン。この街を含む領地の主で、ここのギルドを統括する冒険者組合、その支部長も兼任してる」
「なっ……りょ、領主様?」
私は聞くと大きく開く。
何が名乗るほどでもない、だ。
こんな大きな街の領主様で、しかもギルドの統括支部長?
要するに、この街で一番偉い人じゃないか。
そんな人に対して横柄な態度……。
「す、すみませんでした。領主様とは知らずに」
「いやいいよ。俺は堅苦しいの苦手だし、自然体で接してもらうほうが嬉しい。それに、そっちも相応の身分じゃないか」
「え……」
彼は私の服。
上着についているエンブレムを指さす。
「それ、宮廷付きの紋章だろ? だったら君も敬われる立場だ」
「これは……」
そうだった。
勢いで飛び出したから、服とかもそのまま……。
宮廷から支給される服を着ているから、私を宮廷で働く人間だと勘違いさせてしまったらしい。
確かに働いていた。
けど、私はもう……。
「何かあったのかな」
「あ、えっと……」
「ここで会ったのも何かの縁だ。話してくれないか? もしかしたら、何か役に立てるかもしれない」
領主様はニコっと微笑みそう言ってくれた。
出会ったばかりのあたしに。
エレインのこともあって、他人を信じるのは少し怖い。
だけど、なぜだろう?
この人には……期待してしまう。
「実は……」
見知らぬ男性が声をかけ、男たちが振り返った。
途端、彼らの表情が変わった。
ひどく怯えている。
声をかけてきた男性はまだ若く、体格的にも男たちと大きく変わらない。
赤い髪と瞳が特徴的で、どこか貴族っぽさを感じる。
「寄ってたかって女の子一人を脅してたのか?」
「い、いやそういうわけじゃ……」
「じゃあどういうつもりだ?」
「……す」
す?
「すみませんでしたあああああああああああああああああああああ」
ビックリした。
突然男たちが土下座を始めて、私は驚きたじろぐ。
「どうかご勘弁を! もうしませんから!」
「やめろ馬鹿、目立つことをするな」
「ゆ、許していただけるんですか?」
「もうしないと誓うならな」
「は、はいもちろん!」
「じゃあ行け」
「はいぃ!」
男たちは勢いよく立ち上がり、一斉に走り去っていく。
嵐のような出来事に、私はぽかーんと驚きながら見ているしかなかった。
どういうことだよ。
一人の優男相手に、大人六人が土下座して許しを請うって……。
「ったく、大丈夫だったか?」
「え、あ、うん」
「ならよかった。見かけない顔だけど観光にきたのか?」
「いやそういうわけじゃ……」
彼は気さくに話しかけてくる。
土下座のせいだろうか。
周囲の視線が集まっているような……。
いや、私じゃなくて彼にみんなが注目している気がする。
「あの……あんた誰なんだ?」
「ん? 俺か? 別に名乗るほどでもないんだが……」
彼は頭をぽりぽりと触り、勿体ぶってから答える。
「俺はロール・フローレン。この街を含む領地の主で、ここのギルドを統括する冒険者組合、その支部長も兼任してる」
「なっ……りょ、領主様?」
私は聞くと大きく開く。
何が名乗るほどでもない、だ。
こんな大きな街の領主様で、しかもギルドの統括支部長?
要するに、この街で一番偉い人じゃないか。
そんな人に対して横柄な態度……。
「す、すみませんでした。領主様とは知らずに」
「いやいいよ。俺は堅苦しいの苦手だし、自然体で接してもらうほうが嬉しい。それに、そっちも相応の身分じゃないか」
「え……」
彼は私の服。
上着についているエンブレムを指さす。
「それ、宮廷付きの紋章だろ? だったら君も敬われる立場だ」
「これは……」
そうだった。
勢いで飛び出したから、服とかもそのまま……。
宮廷から支給される服を着ているから、私を宮廷で働く人間だと勘違いさせてしまったらしい。
確かに働いていた。
けど、私はもう……。
「何かあったのかな」
「あ、えっと……」
「ここで会ったのも何かの縁だ。話してくれないか? もしかしたら、何か役に立てるかもしれない」
領主様はニコっと微笑みそう言ってくれた。
出会ったばかりのあたしに。
エレインのこともあって、他人を信じるのは少し怖い。
だけど、なぜだろう?
この人には……期待してしまう。
「実は……」
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