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この世界が、誰かが書いた物語だとすれば。
「リリス、君との婚約を破棄させてもらうよ」
「……」
私は……主役にはなれないだろう。
「君と婚約してからというもの、私の『運命書』はおかしくなってしまった。君と関わることで、私の運命に歪みが生じてしまったんだ。この意味がわかるかい?」
「……」
ただ、脇役でもない。
そうね。
しいて上げるなら、悪役……かしら?
「無言……か。君のお父様とも話はついている。すまないがこれは決定事項だ」
「ええ、そうでしょうね」
言われなくても知っている。
理解している。
私はここで婚約者を失い、惨めな思いをすることになる。
その原因が妹であることもわかっている。
嫌というほど思い知っている。
だから――
終わらせてしまおう。
「アブソル様、今日までありがとうございました。心配なさらなくても、あなたの運命は元通りになります」
「何を言って……おい、何をするつもりなんだ」
私は右手をゆっくりと動かし、自分の胸に手を当てる。
傷心の心を癒すように?
違う。
もう何度も経験して、私の心は傷つくことに慣れてしまった。
今さらこの程度のことで傷心したりしない。
これからするのは、単なる作業。
やり直しのボタンを押すだけ。
「リリス……君は一体――」
「さようなら、私の婚約者様。次はもう、関わらないでくださいね?」
私の身体を闇が包み込む。
世界を暗黒に染め上げ、私の人生を終らせる。
闇の引力によって私の身体は消滅し、魂は巻き戻る。
さて、今回はどこまで巻き戻るのかしら?
毎回バラバラだけど、もういっそ生まれる前に戻りたいわね。
そうすれば……もしかしたら……神様からちゃんとした運命を与えられるかもしれないから。
「リリス、君との婚約を破棄させてもらうよ」
「……」
私は……主役にはなれないだろう。
「君と婚約してからというもの、私の『運命書』はおかしくなってしまった。君と関わることで、私の運命に歪みが生じてしまったんだ。この意味がわかるかい?」
「……」
ただ、脇役でもない。
そうね。
しいて上げるなら、悪役……かしら?
「無言……か。君のお父様とも話はついている。すまないがこれは決定事項だ」
「ええ、そうでしょうね」
言われなくても知っている。
理解している。
私はここで婚約者を失い、惨めな思いをすることになる。
その原因が妹であることもわかっている。
嫌というほど思い知っている。
だから――
終わらせてしまおう。
「アブソル様、今日までありがとうございました。心配なさらなくても、あなたの運命は元通りになります」
「何を言って……おい、何をするつもりなんだ」
私は右手をゆっくりと動かし、自分の胸に手を当てる。
傷心の心を癒すように?
違う。
もう何度も経験して、私の心は傷つくことに慣れてしまった。
今さらこの程度のことで傷心したりしない。
これからするのは、単なる作業。
やり直しのボタンを押すだけ。
「リリス……君は一体――」
「さようなら、私の婚約者様。次はもう、関わらないでくださいね?」
私の身体を闇が包み込む。
世界を暗黒に染め上げ、私の人生を終らせる。
闇の引力によって私の身体は消滅し、魂は巻き戻る。
さて、今回はどこまで巻き戻るのかしら?
毎回バラバラだけど、もういっそ生まれる前に戻りたいわね。
そうすれば……もしかしたら……神様からちゃんとした運命を与えられるかもしれないから。
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