通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ

文字の大きさ
13 / 35

幽霊が仲間になりました③

しおりを挟む
 歴史はそんなに詳しくないんだ。
 俺にあるのは、ゲームとか漫画で得たごちゃまぜの知識だけ。
 これじゃ正解にはたどり着けない。
 ため息をこぼす。

「力になれず申しわけない。その分、剣技で補おう。拙者、自分のことはわからぬが、磨き上げた剣技と、この刀のことならわかる故に」
「うむ。さて、ちょうどよい物差しがきたでござるな」
「え、物さ――!」

 魔物の気配に気がつく。
 現れたのは森でも遭遇したグレイウルフの群れだ。
 数はそこまで多くない。
 目視で五匹程度。

「食べ物の匂いにつられてきたのか?」
「かすかではるが、あの男と同じ気配を感じるでござるよ」
「バルバトスの?」
「左様。おそらくは、飼いならされていたのではないか?」

 そういえば、町の人が言っていた。
 この辺りは悪魔以前に魔物すら出現しない安全な地域だと。
 グレイウルフは元々いたのではなく、バルバトスが放った使い魔だったのか?
 飼い主を失った獣が、餌を求めてやってきた。

「せっかく町はお祭り騒ぎだってのに」
「邪魔するのは無粋でござるな。どれ、拙者たちで対処しよう」
「……まぁそうだな」

 俺だけで戦うのか。
 正直ちょっと不安だが、グレイウルフは一度戦っている。
 油断しなければ問題ない。

「安心するでござるよ。拙者とこの愛刀を握れば、お主も立派な侍だ」
「見た目だけだろ」
「否、文字通りでござるよ」
「は? 何を言って――」

 話の途中だが、グレイウルフの群れが襲い掛かってきた。
 咄嗟に妖刀を抜く。
 身体は軽くなり、まるで誰かに動かされているかのように、ウルフの攻撃を往なす。
 
「その刀には、拙者の経験、技量が宿っているでござる。抜いている間、主はそれらを読み取り、扱うことができるようになる」
「なるほど。だから身体が勝手に動くのか」

 使ったことがない刀。
 誰かに教わったわけじゃないのに、身体が覚えている。
 この違和感の正体は、小次郎の経験を憑依させているからなのか。
 身体が他人に動かされているような感覚も、今の俺を動かしているのが、小次郎の経験だから。

「もっとも経験を読み取るだけで、動かすのはあくまでお主自信だ。お主が成長しなければ、その力を最大に引き出すことはできないでござる」
「そういうことね」

 グレイウルフを二匹斬り裂く。
 俺自身の経験じゃない。
 俺が弱ければ弱いままなのは理屈もわかる。
 一か月で成長こそしたが、所詮は付け焼刃だ。

「バルバトスにはまったく歯が立たなかったしな」
「そういう時は、拙者の出番でござる。身体をちと、拙者に預けてもらえぬか?」
「どうやって?」
「心の中で許可を出すのでござる。拙者に身体を預ける許可を」

 心の中で……。
 戦闘中だが距離もある。
 俺は目を瞑り、小次郎の意識に集中させる。

 えっと……。
 どうぞお入りください?

 直後、魂の入れ替えが発生する。
 自分の肉体から魂が抜け落ちる感覚は、なんとも奇妙だ。
 そして代わりに、半透明だった小次郎の魂が俺の身体に入っていく。
 立ち位置がかわる。
 次に目を開いた時、俺は俺にあらず。

「これにて準備は整ったでござる」

 俺の肉体に憑依した小次郎は、笑みを浮かべて刀を振るう。
 変化を気配で悟ったのか。
 グレイウルフたちは警戒を強めていた。

「怯えることはないでござるよ。さぁ、来るがいい獣の群れよ」

 挑発する。
 グレイウルフが一斉に襲い掛かるが、小次郎はその場から一歩も動かず、目にも止まらぬ速度で刀を振るった。
 襲い掛かってきたウルフは、勢いをそのままに通り過ぎる。
 三匹とも、真っ二つになって。

 ぐちゃっと地面に落ちた死体。
 主観で見ているはずの俺にも、完全には認識できなかった。
 バルバトスとの戦いと同じだ。
 これが……。

「これが剣術でござるよ」
「――!」

 凄いと思った。
 これは素直に感心した。
 剣士というのは、剣術というのは……極めればここまで強くなれるのか?

「褒めてもらえるのは嬉しいが、拙者はまだまだ修行中の身でござるよ」
「いやいや、十分すぎるだろ。これだけ強いなら、魔王だって斬れるんじゃないか?」

 バルバトスとの力の差を見せつけられて、魔王討伐なんて無理なんじゃないかと不安になっていた。
 ちょっと希望が出てきたぞ。

 戦闘が終了し、妖刀を鞘に納めると肉体の主導権も切り替わった。
 その直後、どっと疲れが押し寄せる。

「うおっ、身体が重い……」
「それだけ負担が大きいということでござるよ」
「な、なるほど……」

 これが憑依のリスクか。
 俺の身体は未熟だから、完成された小次郎の剣技を体現するには相応の体力がいる。
 わずか数秒でこの疲労感。
 そう言えば、バルバトス戦の直後も、俺に戻ったら一気に疲れが押し寄せて、その場で倒れ込んだ気がする……。

「多用はできないってことか」
「長時間の憑依を目標にするなら、相応の鍛錬が必要でござるよ」
「特訓あるのみってことか。毎日走り込みとかして」
「体力づくりは必要でござるな。ただ、注意すべきは肉体への負荷だけではござらん。拙者の立場から言うことではないが、この力は――」
「小次郎?」
「誰かが近づいてきているようでござる」

 小次郎が視線を向けた先には、エリカの姿があった。
 彼女は呆れた顔で言う。

「魔物の気配がしたから来てみたけど、もう終わったみたいね」
「ん? ああ、まぁな」
「そう。ところで、さっきから一人で何をブツブツ話しているのかしら?」
「うっ……別に? ちょっと考え事をしてただけだ」

 こいつには小次郎の姿も声も届いていない。
 端から見れば、俺が独り言をつぶやいているようにしか見えない。
 これもリスクの一つだな。

「何か隠しているわね」

 エリカが詰め寄ってくる。

「か、隠してないけど?」
「嘘ね。あなた、動揺すると口が開くのよ?」
「え!」

 ま、まじで?
 そんな癖があったのか?

「嘘よ」
「嘘かよ!」
「ええ、でも図星みたいね」
「くっ……」
「策士でござるなぁ」

 小次郎は感心していた。
 関している場合じゃないだろうが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...