27 / 35
私が神様です(聖女視点)①
しおりを挟む
「本当にありがとうございます。なんとお礼を言っていいか」
「これも主のお導きです」
ゾーイの能力でアンデッド化していた村人たちは、セミレナの聖女の力で元の人間に戻ることができた。
完全に死んだ後にアンデッドとなれば、聖女の力でも治癒できない。
ゾーイの能力が、生者すらアンデッドに変えられることが逆に幸運だったと言えるだろう。
今回も死傷者はなし。
怪我人がいても治療できるのも、聖女である彼女の存在が大きい。
「セミレナがいてくれてよかったわね」
「そうだな」
一応、今回は俺も活躍したんだけどな……。
エリカたちも無事だった。
ゾーイの能力で精神汚染を受け、しばらく意識を失っていたのだが、夕暮れには目を覚まして、普段通り振る舞っている。
「ソウジ君! 怖かったよー!」
「そうだな。怖かったよな? よしよし」
「うへへへ~」
アルカは目を覚ましてからこの調子である。
よほど怖い光景を見せられたのだろう。
ゾーイの精神汚染は、対象の心を折る光景を見せるらしい。
その人が信じているものや、大切にしているものを目の前で破壊することで、精神を崩壊させる。
恐ろしい能力だった。
女神の加護特攻で、俺には通じなくて心からホッとしている。
「アルカはどんなものを見せられたんだ?」
「みんなが僕をイジメるんだよ。獣人だからって……人間も、獣人も僕を悪者だっていうんだ。その中にソウジ君もいて……」
「それは……ごめんな」
「ソウジ君のせいじゃないよ! ソウジ君がそんなこと言うはずないって信じてたから! でも怖かった。辛かったよぉ~」
弱音を吐くアルカの頭を、やさしく撫でてあげた。
彼女にとって獣人の血を引いていることは、旅の原動力であると同時に、コンプレックスでもあるのだろう。
その両方を的確につく悪夢だった。
夢の中で俺が出てきたのは、彼女がそれだけ俺を信じているという証拠でもある。
嬉しいような、申し訳ないような。
複雑な気持ちだ。
「もう大丈夫だから。セミレナを手伝ってあげてくれないか?」
「うん!」
できるだけ慰めて、元気になったアルカが走っていく。
村人たちに囲まれて、セミレナは大変そうだ。
その様子を見つめながら、二人きりになったことを確認してエリカに尋ねる。
「気分はどうだ?」
「……聞かなくてもわかるでしょ?」
「ですよね」
顔を見ればわかる。
アルカの前では頑張って笑顔を作っていたけど、口元が引きつっていた。
明らかに無理をしている。
「最悪の気分だわ。なんて能力をしてるのよ……あのアンデッド」
「ちなみにどんな悪夢だったんだ?」
「男に囲まれていたわ」
「モテモテならいい夢なんじゃ」
「いいわけないでしょ? 全員生理的に受け付けない最悪な男ばっかりだったわよ」
珍しく声を荒げるエリカ。
相当嫌だったのだろう。
嫌悪感を丸出しにして、悪夢に苦言を呈する。
「好きでもない男に身体を触られて、いいようにされて嬉しいと思う?」
「いや、最悪だな」
「そうよ、最悪よ。あんなので喜ぶ奴、マゾヒストの変態だけね」
エリカは呆れたようにため息をこぼす。
夢の中とはいえ、嫌いな相手に無理やり襲われた精神的嫌悪感はすさまじい。
彼女がずっとイライラしているのも納得できる。
「あなたはいいわね? 加護受けてないから効果なかったんでしょ?」
「そのおかげで助けられたんだけど?」
「そうね。今回は感謝してあげるわ」
「どういたしまして」
エリカは不貞腐れた感じで感謝の言葉を口にした。
もっと素直に感謝してもらいたかったな。
あまり期待はしていなかったけど。
「でもやっぱり腹立つわね。私たちだけ嫌な思いをしたのは」
「なんでだよ! 俺が無事じゃなかったらお前らもあのままだったんだぞ?」
「それはそれよ。私たちだけ悪夢を見るなんて不公平じゃない」
「どういう理屈だ」
俺も苦しんでほしかったってか?
悪平等な考え方に呆れる。
「あなたがもしゾーイの術にかかっていたら、どんな悪夢を見せられたのかしら?」
「知らないよ、そんなの」
「想像しなさい。私が幻惑魔法で再現してあげるわ」
「性格悪すぎるだろ!」
こいつはもう少し悪夢の中にいて、しおらしくなってもらったほうがよかったんじゃないか?
悪夢から覚めても元気いっぱいに煽ってくるエリカに呆れため息をこぼす。
すると、俺の服の裾が引っ張られた。
視線を下げると、村の子供たちが集まっている。
「ねぇ勇者様! 勇者様って神様なの?」
「え?」
神様?
一体何を言っているんだ?
別の子供が俺に言う。
「神様だって言ってたよ!」
「誰が?」
「聖女様が!」
「……」
俺はゆっくりと離れた場所にいるセミレナに視線を向ける。
こっちを見ていた。
温かく、優しくニッコリと微笑んだ。
なぜだか背筋がぞくっとした。
子供に変なことを教えるんじゃない!
「えっとね? 俺は勇者で、神様じゃないんだよ」
「えー! でも聖女様が言ってたよ!」
「そうだよ? 勇者様にお祈りしたら助けてくれるって!」
「お祈りなんてしなくていいから。勇者だから、困っている人がいたら助けるのが当たり前なんだ」
子供たちをあやしていると、隣でエリカが笑った。
こいつ絶対に馬鹿だと思ってるだろ。
勇者でもない癖に、とか思ってるだろ。
見なくてもそういう顔をしているのがわかってしまう。
俺は子供たちにわからないようにため息をこぼす。
無事に幹部を倒せたのはよかったが……。
また面倒なことになったな。
この日はもう遅いので、村に一泊することになった。
空き家を丸っと一軒借りて夜を過ごす。
疲れていたのだろう。
精神的にも疲弊していて、エリカはすぐ眠りについた。
「ソウジ君、寝るまで一緒にいてほしい」
「仕方ないな」
アルカはまだ不安そうで、一人では眠れなかったようだ。
彼女が眠るまで傍にいる。
もちろん変な気は起こさない。
俺は紳士だからな。
三十分ほど経過して、アルカもぐっすり眠った。
「……終わった」
「耐えたでござるな」
無防備に眠るアルカは、俺の手を握ったまま離してくれなかった。
ベッドに引き込まれそうになったが必死に堪え、なんとか手を離して離脱に成功した。
なんで眠るだけでこんなに疲れなきゃいけないんだ。
「これも主のお導きです」
ゾーイの能力でアンデッド化していた村人たちは、セミレナの聖女の力で元の人間に戻ることができた。
完全に死んだ後にアンデッドとなれば、聖女の力でも治癒できない。
ゾーイの能力が、生者すらアンデッドに変えられることが逆に幸運だったと言えるだろう。
今回も死傷者はなし。
怪我人がいても治療できるのも、聖女である彼女の存在が大きい。
「セミレナがいてくれてよかったわね」
「そうだな」
一応、今回は俺も活躍したんだけどな……。
エリカたちも無事だった。
ゾーイの能力で精神汚染を受け、しばらく意識を失っていたのだが、夕暮れには目を覚まして、普段通り振る舞っている。
「ソウジ君! 怖かったよー!」
「そうだな。怖かったよな? よしよし」
「うへへへ~」
アルカは目を覚ましてからこの調子である。
よほど怖い光景を見せられたのだろう。
ゾーイの精神汚染は、対象の心を折る光景を見せるらしい。
その人が信じているものや、大切にしているものを目の前で破壊することで、精神を崩壊させる。
恐ろしい能力だった。
女神の加護特攻で、俺には通じなくて心からホッとしている。
「アルカはどんなものを見せられたんだ?」
「みんなが僕をイジメるんだよ。獣人だからって……人間も、獣人も僕を悪者だっていうんだ。その中にソウジ君もいて……」
「それは……ごめんな」
「ソウジ君のせいじゃないよ! ソウジ君がそんなこと言うはずないって信じてたから! でも怖かった。辛かったよぉ~」
弱音を吐くアルカの頭を、やさしく撫でてあげた。
彼女にとって獣人の血を引いていることは、旅の原動力であると同時に、コンプレックスでもあるのだろう。
その両方を的確につく悪夢だった。
夢の中で俺が出てきたのは、彼女がそれだけ俺を信じているという証拠でもある。
嬉しいような、申し訳ないような。
複雑な気持ちだ。
「もう大丈夫だから。セミレナを手伝ってあげてくれないか?」
「うん!」
できるだけ慰めて、元気になったアルカが走っていく。
村人たちに囲まれて、セミレナは大変そうだ。
その様子を見つめながら、二人きりになったことを確認してエリカに尋ねる。
「気分はどうだ?」
「……聞かなくてもわかるでしょ?」
「ですよね」
顔を見ればわかる。
アルカの前では頑張って笑顔を作っていたけど、口元が引きつっていた。
明らかに無理をしている。
「最悪の気分だわ。なんて能力をしてるのよ……あのアンデッド」
「ちなみにどんな悪夢だったんだ?」
「男に囲まれていたわ」
「モテモテならいい夢なんじゃ」
「いいわけないでしょ? 全員生理的に受け付けない最悪な男ばっかりだったわよ」
珍しく声を荒げるエリカ。
相当嫌だったのだろう。
嫌悪感を丸出しにして、悪夢に苦言を呈する。
「好きでもない男に身体を触られて、いいようにされて嬉しいと思う?」
「いや、最悪だな」
「そうよ、最悪よ。あんなので喜ぶ奴、マゾヒストの変態だけね」
エリカは呆れたようにため息をこぼす。
夢の中とはいえ、嫌いな相手に無理やり襲われた精神的嫌悪感はすさまじい。
彼女がずっとイライラしているのも納得できる。
「あなたはいいわね? 加護受けてないから効果なかったんでしょ?」
「そのおかげで助けられたんだけど?」
「そうね。今回は感謝してあげるわ」
「どういたしまして」
エリカは不貞腐れた感じで感謝の言葉を口にした。
もっと素直に感謝してもらいたかったな。
あまり期待はしていなかったけど。
「でもやっぱり腹立つわね。私たちだけ嫌な思いをしたのは」
「なんでだよ! 俺が無事じゃなかったらお前らもあのままだったんだぞ?」
「それはそれよ。私たちだけ悪夢を見るなんて不公平じゃない」
「どういう理屈だ」
俺も苦しんでほしかったってか?
悪平等な考え方に呆れる。
「あなたがもしゾーイの術にかかっていたら、どんな悪夢を見せられたのかしら?」
「知らないよ、そんなの」
「想像しなさい。私が幻惑魔法で再現してあげるわ」
「性格悪すぎるだろ!」
こいつはもう少し悪夢の中にいて、しおらしくなってもらったほうがよかったんじゃないか?
悪夢から覚めても元気いっぱいに煽ってくるエリカに呆れため息をこぼす。
すると、俺の服の裾が引っ張られた。
視線を下げると、村の子供たちが集まっている。
「ねぇ勇者様! 勇者様って神様なの?」
「え?」
神様?
一体何を言っているんだ?
別の子供が俺に言う。
「神様だって言ってたよ!」
「誰が?」
「聖女様が!」
「……」
俺はゆっくりと離れた場所にいるセミレナに視線を向ける。
こっちを見ていた。
温かく、優しくニッコリと微笑んだ。
なぜだか背筋がぞくっとした。
子供に変なことを教えるんじゃない!
「えっとね? 俺は勇者で、神様じゃないんだよ」
「えー! でも聖女様が言ってたよ!」
「そうだよ? 勇者様にお祈りしたら助けてくれるって!」
「お祈りなんてしなくていいから。勇者だから、困っている人がいたら助けるのが当たり前なんだ」
子供たちをあやしていると、隣でエリカが笑った。
こいつ絶対に馬鹿だと思ってるだろ。
勇者でもない癖に、とか思ってるだろ。
見なくてもそういう顔をしているのがわかってしまう。
俺は子供たちにわからないようにため息をこぼす。
無事に幹部を倒せたのはよかったが……。
また面倒なことになったな。
この日はもう遅いので、村に一泊することになった。
空き家を丸っと一軒借りて夜を過ごす。
疲れていたのだろう。
精神的にも疲弊していて、エリカはすぐ眠りについた。
「ソウジ君、寝るまで一緒にいてほしい」
「仕方ないな」
アルカはまだ不安そうで、一人では眠れなかったようだ。
彼女が眠るまで傍にいる。
もちろん変な気は起こさない。
俺は紳士だからな。
三十分ほど経過して、アルカもぐっすり眠った。
「……終わった」
「耐えたでござるな」
無防備に眠るアルカは、俺の手を握ったまま離してくれなかった。
ベッドに引き込まれそうになったが必死に堪え、なんとか手を離して離脱に成功した。
なんで眠るだけでこんなに疲れなきゃいけないんだ。
1
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。
死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。
命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。
自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる