抜きゲーみたいな世界に転生した童貞〔オレ〕は嫁を100人作ると決心した!※決心しただけなので出来るとは言っていない。でも出来なきゃ死ぬらしい

日之影ソラ

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第一章 転生したけど死にそう

転生したら人生オワタ③

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 目標は三つ必要だった。
 短期目標は一か月程度で達成可能な内容。
 中期は一年、長期目標は十年という長めの期間が設定されている。
 まさしく会社に入ってすぐ、新入社員に書かせるあれだ。
 俺も書いたことがある。
 まぁ、会社の空気に馴染めずすぐ辞めたけどね。
 結局、掲げた目標は一つも達成できなかった。
 嫌なことを思い出した。
 俺は首を横に勢いよくブンブン振る。

「今回は違うぞ!」

 せっかく新しい世界、新しい人生を手に入れられるんだ。
 今までの自分をリセットしよう。
 設定する目標も、相応しい前向きで大きなものにしたいところだ。

「……」

 天使に見つめられながら、悩むこと十五分。
 
「うーん……」

 俺は未だに決められずにいた。
 悩みに悩み、やりたいことはたくさんあるはずなのに、いざ考えると思いつかない。
 いや、思いつくものはあるけど、これでいいのかと踏みとどまってしまう。
 結果的に長考。

「あのー、まだですか?」
「す、すみません……」

 時間が経つにつれて、天使の態度にも変化が現れた。
 トントントンと苛立ちを表すように床を叩く音が早くなっている。

「こっちだって忙しいんですからね? いつまでもここで悩まれると困るんですよ」
「っ……」

 なんだこの天使?
 あからさまに態度が悪くなって……第一印象の美しさが消し飛ぶ態度の悪さだぞ。
 まさかこっちが素じゃないよな。

「早くしてくださいよ。もう童貞卒業とかでいいでしょ」
「どっ! いいわけないだろ! そんなテキトーで!」
「いいじゃないですか。あっちの世界じゃ童貞だったんでしょ? だったらピッタリな目標です」
「くっ……こいつ……」

 確かにその通りだが、実際に言われると腹が立つ。
 というか、なんで俺が童貞だったことを知っているんだ?
 女神が教えたのか?
 なんてことを教えてくれるんだ!

「はーやーくー」
「この……」

 無性に殴りたい。
 こんな性格の悪い女が天使だって?
 悪魔の間違いだろ。
 いやしかし、童貞卒業か……。
 一理あるんだよなぁ。
 実際、元の世界で二十年以上生きて、一度も恋人がいたことがない。
 エッチなことはもちろん、手を繋いだのも小学校のイベントが最後だった。
 なんて悲しい人生なんだ。
 とりあえず……。

「短期はこれでいいか」

 短期目標に童貞卒業と記載する。
 なんだか恥ずかしいので、天使には見えないように腕で隠しながら。
 
 残るは中期目標と長期目標。
 中期は一年か。
 短いようで長い。
 短期を童貞卒業にしたわけだし、それに関係する内容のほうがいいか?

「じゃあ結婚か?」

 普通過ぎないか?
 そんなんでいいのか?
 俺の新しい人生、しかもここは異世界だぞ!
 
「よし」

 中期目標が決定した。
 最後の長期目標だが、ほぼノリと勢いで流れるように書いた。
 中期で思い切ったし、せっかく異世界に来たんだ。
 どうせならでっかい目標を立てようじゃないか。
 目標なんて達成できないくらいがちょうどいいだろ。

「書けました」
「はい。じゃあそれ貸して」
「え、ちょっ!」

 書きたてホヤホヤの紙を天使が奪い取る。
 中身も見ずに、背後にあった大きな印刷機のような装置の台座に置いた。
 
「はい、あなたは真ん中に立って」
「え、真ん中? 何するんですか?」
「見ればわかるでしょ? 今からあなたの身体を、この世界の仕様に作り替えるのよ」
「つ、作り替える!?」
「いいから早くしてくれる? ちゃっちゃと終わらせて、次が来たら邪魔になるのよ」
「くっ……」

 一々癪に障る言い方をするな。
 まぁいい。
 どうせこの天使とも数分の関係だ。
 加護を手に入れたら二度と会うことはないだろうし、今は我慢しよう。
 俺は言われた通り、装置の真ん中に立った。

「じゃあ始めるわよ。目を瞑らないで。あと呼吸も止めて」
「レントゲンかよ……」

 事実レントゲンのようにパシャっと装置が光った。
 途端、俺の身体を覆うように光のヴェールが発生する。
 女神様に転生してもらった時と似ているが、今回は浮かび上がらない。
 代わりに、俺が紙に書いた目標が透明なスクリーンに投射される。

「プッ、本当に童貞卒業って書いたんですか? どれだけ飢えてるんですか」
「くっ……」

 結局見られるのかよ!
 まぁいい。
 今は我慢だ。

 スクリーンには俺が記した目標が表示されていた。

 短期目標:童貞卒業。
 中期目標:嫁を100人作る。
 長期目標:自分の国を作る。

 うんうん。
 我ながら大それた目標を立てたものだ。
 異世界だし、女神様からチートも授かるし、これくらい贅沢を言っても罰は当たらないだろう。
 所詮はただの目標だしな。

「ちょっと……なんですかこの目標!」
「ん?」

 なぜか天使が慌てだす。
 顔が真っ青になり、明らかに動揺しているのが伝わった。

「ムリムリ! 絶対無理ですから! ストップですよ!」
「は? へ?」

 天使は慌てて装置をいじり始めた。
 何かミスがあったのだろうか。
 俺まで不安になる。
 しかし俺の不安を置き去りにして、装置はピカピカと明滅し、スクリーンに浮かび上がった文字が動き出し、俺の身体に入り込んでくる。

「お、おお!?」

 身体の奥から力が溢れてくるような感覚。
 この世界の仕様に身体を作り替えると言っていたけど、確かに作り変わっている。
 これまで感じたことのない力が俺の中にある。
 魔力に、女神の加護を感じる。
 ついに俺も異世界の住人になった。

 明滅していた光が消えて、代わりに俺の首には黄金の首輪が装着される。

「なんだこれ? あの、この首輪って何ですか?」
「……」

 天使は無言のまま、漠然と装置の操作盤の前で立ち尽くしていた。
 装置に問題があったのだろうか。
 俺の身体に違和感はないし、魔力や加護が宿ったことは実感としてある。
 装置は無事に発動したんじゃないのか?

「天使さん?」
「な……」
「な?」
「なんてことしてくれるんですかぁあああああああああああああああ!」
「ぐえぇ!」
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