抜きゲーみたいな世界に転生した童貞〔オレ〕は嫁を100人作ると決心した!※決心しただけなので出来るとは言っていない。でも出来なきゃ死ぬらしい

日之影ソラ

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第一章 転生したけど死にそう

急募! 森から出る方法④

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 森の中で夜を過ごす。
 焚火を囲い、三人の影が外向きに伸びる。

「美味いなこれ!」
「口に合ったならよかったよ」

 豪快に食べるカナタの隣で、俺とサラスも食事をとる。
 食材はカナタが森を彷徨っている間に採取してくれていたものを使った。
 道具もカナタの私物を借りた。
 大量の料理器具や食材は、彼女が持っていた魔導具のカバンに収納されている。
 見た目は少し小さめのリュックだけど、収納量は桁外れ。
 さすが異世界だ。

「ホントに美味いな! タクロウは料理人だったのか?」
「いや、全然違うけど」
「そうなのか? こんだけ美味いもん久しぶりに食ったな!」

 そこまで褒められるほどいい出来じゃない。
 食材もこの世界の物で、何がなんだかわからなかったし。
 とりあえず切って焼いて、味付けも適当に。
 調味料なんかもないから薄味だ。
 それでも、ここまで美味しそうに頬張ってくれる姿を見ると、凄く心が温かくなる。

「ニートの癖に料理はできるんですね」
「っ、だからニートじゃねーよ」

 せっかく心が温まったのに、サラスの一言で台なしだ。
 こいつは本当に空気を読まないな。

「一人暮らしだったからな。大抵のことは全部自分でやってたんだよ。料理も節約のために覚えただけだ」
「……真っ当な人間みたいなセリフですね」
「真っ当な人間なんだよ」
「引きこもりの癖に?」
「そ、そこは関係ないだろ!」

 他人と関わらなくても生活はできるんだ。
 ネットもあったし、対面じゃないと話せないなんて時代遅れだろ。
 現に俺は一人で生活が成り立っていた。
 資金も株でちょろっと調達して、誰に迷惑をかけるわけでもない。
 一日の大半を安全な部屋の中で過ごす……。

「はぁ……あの日々が恋しい」
「これだから引きニートは。せっかく外に出たんだからまた引きこもろうとしないでくださいよ」
「だからニートを追加するな! 外でもこういう外は望んでないんだよ!」
「私だって望んでませんよ! 誰のせいでこんな場所にいると思ってるんですか!」
「お前のせいだろうが!」
「私じゃないですよ!」

 またしても不毛な争いが勃発する。
 いつもならここでヒートアップするが、今夜はカナタの存在が抑止になった。
 彼女が見ている前でみっともない。
 そう思って踏みとどまったが、隣でクスリと笑みがこぼれる。

「ふふっ、二人とも仲良しなんだな」
「どこがですか!」
「カナタ、お前目が悪いのか?」
「だって仲良しだろ? 喧嘩するほど仲がいいっていうしさ」
「カナタ、これは喧嘩じゃない。説教だ」
「ん? そうなのか?」
「そうだ。そもそも喧嘩は同レベルの相手としか発生しない。俺をこんなクソ馬鹿と一緒にしないでくれ」

 俺は指をさして冷たく言い放つ。
 当然のごとくサラスが反論する。

「誰がクソ馬鹿ですか! 私だってタクロウみたいな性獣と一緒にされたくないですよ!」
「性獣?」
「だ、誰が性獣だ! 変な呼び方をするな!」
「ピッタリじゃないですか! 童貞だった癖に百人と結婚したいなんて考えてる時点で!」

 こいつ……人の夢を欲望の塊みたいに言いやがって。
 確かに欲望の塊であることは事実だが……。
 事実だけど! 
 なんかこいつに言われると無性に腹が立つ。

「タクロウは結婚したいのか?」
「え、あ、まぁ……」

 しまった。
 勢いに任せて話しちゃったけど、引かれたんじゃないか?
 この世界は愛と平和の女神の影響で、結婚相手は一人と定められている。
 愛や恋には非常に厳しい世界で、百人と結婚したいなんて願望掲げたら、変態扱いされても不思議じゃない。
 せっかく出会えた現地人、しかも女の子だ。
 ここは誤解される前に訂正を。

「カナタ、俺は別にそういうことがしたくて結婚したいわけじゃ――」
「スゥー……」
「……」
「寝てますよ」

 今の一瞬で?
 の〇太くんかよ。
 振り返るとカナタは地面に丸まって眠っていた。
 スヤスヤと気持ちよさそうに。
 俺とサラスは彼女の寝顔を覗き込む。

「一人で迷子になっていたみたいですし、ずっと気を張っていたのかもしれませんね」
「そうだな。俺たちは二人だったからまだマシだったけど」

 一人で広大な森を一週間彷徨う。
 さすがの俺でも憂鬱な気分になってしまいそうだ。
 幸いなことにモンスターの気配はない。
 今はゆっくり寝かしてあげよう。
 
「……可愛い寝顔だな」
「襲ったらだめですよ」
「し、しねーし!」

 ちょっと頬に触れるくらいはセーフか?
 とか、少し考えたけど踏みとどまった。
 俺は性獣じゃない。
 
「怖いので離れて寝てくださいよ」
「お前は絶対にないから安心しろよ」
「それはそれで腹が立ちますね!」

  ◇◇◇

 翌日の朝。
 カナタが目覚め、大きく背伸びをしている。

「う、うーん! ふぁー……あ、おはよ。タクロウ」
「おはよう。よく眠れたか?」
「おかげさまで。タクロウは……眠そうだな」
「ちょっとな」

 夜の森で全員が眠るのは危険だ。
 だから交代で睡眠をとろうという話だったんだが……。

「スピー」
「……」

 隣で寝てるこのクソ天使が一向に起きない。
 揺すっても軽く叩いてもまったく起きる気配がない。
 仕方がないから一晩中俺が見張っていた。
 そのせいで寝不足気味だ。

「おいクソ天使、いい加減起きろ」
「んーん……もうあと五分……」
「子供か!」

 まだ起きようとしないサラスに苛立った俺は、近くに転がっていた石と砂利を掬い上げる。
 顔にかけるなんてかわいそうなことはしない。
 一応、サラスも女の子だからな。
 ターゲットは背中だ。
 横向きで寝ている彼女に背中に、大量の石と砂利を流し込んだ。

「――! 何か冷たいのが入ってきたんですけど!」
「やっと起きたか」
「ちょっと何するんですか! 冷たいし汚いし! 天使の身体を汚すなんて大罪ですよ!」
「うるさいな。もうとっくに泥まみれだろ。ここ数日風呂も入ってないんだし、言いたくなかったがお前ちょっと匂うぞ」
「なっ……じょ、冗談ですよね……?」

 チラッとカナタに視線を向けるサラス。
 臭くないですよね?
 という問いかけに、カナタは少し考えてから答える。

「ちょっと酸っぱい匂いがするかな」
「かっ――!」

 愕然として倒れ込むサラスを見て、ちょっとすっきりした。
 彼女はすぐに起き上がる。

「水辺を探しますよ! 今すぐ飛び込みます!」
「水なんてあったかな?」
「ないならすぐに脱出しましょう! お風呂に入るんです! さぁ二人とも! のんびりしてないでささっさと出発しますよ!」

 急にやる気になりやがって。
 でもまぁ、無気力に散策するよりはずっといい。
 一人で歩き出したサラス。
 俺はカナタに視線を向ける。

「もうしばらく頼むよ。モンスターの相手は任せた」
「おう! 任せてくれよな!」

 頼もしい返事を聞いて一緒に歩き出す。
 
「なぁタクロウ」
「なんだ?」
「……なんで、タクロウは匂わないのに、サラスだけ匂うんだろうな」
「……さぁ? 体質の問題じゃないか? カナタも匂わないぞ」
「そうか? 大変だな、体質って」
「そうだな」
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