抜きゲーみたいな世界に転生した童貞〔オレ〕は嫁を100人作ると決心した!※決心しただけなので出来るとは言っていない。でも出来なきゃ死ぬらしい

日之影ソラ

文字の大きさ
10 / 40
第一章 転生したけど死にそう

誰かパーティー組んでくれ②

しおりを挟む
 一体目のサイクロプスは瞳が光っていた。
 けれどこいつは、背中が光っている。
 目や心臓、首ではなく背中の時点で、何かあるんだ!

「カナタ! 背中だ! 背中に何かある!」
「背中?」

 俺の声を聞いたカナタが赤いサイクロプスの股を潜り、背中側へ回る。
 俺には見えないが、彼女の視界には何かを捉えたらしい。

「赤い結晶があるぞ!」
「結晶? ってことはそれが弱点なのか?」
「とりあえず壊してっと!」

 破壊しようと飛び掛かったカナタに、サイクロプスの裏拳が放たれる。
 カナタはギリギリで回避し、再び距離を取って正面で向き合う。
 一瞬だけど今の攻防で、チラッと結晶が見えた。
 俺の加護はあそこが弱点だと言っている。
 たぶんあそこだけダメージが通るとか、結晶を破壊したら再生できないとかじゃないか?
 ゲームだと大体そんな感じだ!

「結晶を破壊できないか!」
「やりたいんだけど、こいつかなり警戒してるんだよ!」

 今の一瞬で後ろに回られたことで、サイクロプスの警戒心が増してしまったらしい。
 加えてカナタはかなり消耗している。
 息も絶え絶えで、先ほどのように股を潜って背後へ、なんてことはできそうにない。
 
「せめて……はぁ、一瞬でも隙ができれば……」
「一瞬……」

 この時俺の脳裏には、カナタの言葉が浮かんでいた。

 大事なのは怖くても立ち向かう勇気があるかどうかだろ?

 俺は拳を握る。
 怖い。
 あんな化け物の攻撃を、一発でも食らったら俺は死ぬ。
 それでも、今行かなきゃいけない。
 そう思ったら、勝手に身体が前に出ていた。
 まるで背中を誰かに押されたように……。

「……」
「頑張ってください、肉壁さん」
「てめぇかよ!」

 まるで、じゃなくて物理的に背中をサラスが押していただけだった。
 俺の勇気あるモノローグを返してくれ。
 
「あーもういい! こっち見やがれデカ目!」
 
 俺は走り出し、適当に石を拾ってサイクロプスに投げつける。

「タクロウ!? 何やって……危ないぞ!」
「俺があいつを引きつける!」
「――!」

 サイクロプスの視線が俺のほうに向く。

「その隙に背中を攻撃してくれ!」
「タクロウ!」

 石をぶつけられたサイクロプスが怒ったように叫び、俺のほうへ突進してくる。
 もちろん俺に戦う手段はない。
 とれる手段はたった一つ。
 全力の逃走だ。

「おおおおおおおおおおおおおお! 早くしてくれええええええええええええ!」

 俺は肺が爆発しそうなくらい全力で駆け回った。
 死にたくない。
 みっともないとは思うけど、今はこれが最善だと思ったから。

「――ははっ」

 一瞬、カナタの笑顔が見えた。
 彼女は最後の力を振り絞るとうに、全力で地面を蹴り、俺に意識が向いているサイクロプスの背後に跳ぶ。
 接近に気づいたサイクロプスが防御しようと腕を伸ばす。
 が、それよりも一瞬だけ速く、カナタの切っ先が結晶を貫いた。

「どうだ!?」

 サイクロプスが苦しみだす。
 考えるに、あれはサイクロプスにとって心臓のような役割を果たしていたのだろう。
 結晶が破壊されたサイクロプスの肉体は、みるみる崩壊していく。
 
「倒した……? や、やった! 倒したぞ!」
「へへっ、やったな!」

 カナタが笑顔で勝利のブイサインをしている。
 俺も嬉しくて、ついついはしゃいだようにガッツポーズをした。
 
「やるじゃないですか! 役に立ちましたね肉壁さん」
「お前は何もしてないけどな」
「私は天使なので癒し専門です」
「だったらここ治してくれ。ちょっと擦りむいたから」
「治癒魔法を覚えていないので今は無理です。私の存在に癒されてください」
「役立たずじゃねーか! 何が癒し担当だ! お前がまき散らしてるのは異臭だけだ!」
「なんですかぁー! 女性に向かって臭いとか死んでも言っちゃダメなんですよ! だから一生童貞なんです!」
 
 このクソ天使!
 やっぱり今からでも森の中に捨てて帰ろうか!

「ぷっ……はっははあははは!」
「カナタ?」
「どうしたんですか?」
「ううん、なんでもない! ほら早く! モンスターが増えないうちに森を出ようよ!」

 なんだか上機嫌になったカナタに手をひかれ、俺とサラスは森を出た。
 木々を抜けるとそこは草原だった。
 穏やかな風が吹き抜ける。
 なんて……。

「なんて気持ちいいんだ」

 八日間のサバイバル生活がついに終わった。
 解放感と達成感で満ち溢れて、安心して今すぐ倒れ込みたい気分だ。
 だけどまだ安心はできない。
 カナタの話だと、森の近くに街があるらしいが……。

「街の方向はわかるのか?」
「さぁ?」
「……だよな」

 街にたどり着くのは、もう少し時間がかかりそうだ。

  ◇◇◇

「やっと着いた」
「長かったですね……」

 俺とサラスで愕然とする。
 森を出てから二日かけ、ようやく俺たちは念願の街へとたどり着いた。
 最初はカナタの記憶を頼りに歩いていたけどまったく到着せず、地図を見ながら予想して、道なりに進んで現在に至る。

「最初から地図を見て進めばよかったな」
「そうですね……いい教訓だったと思います」
「あはははっ、悪い悪い! あたしが覚えてたらもっと早く戻れたんだけどな!」
「……」

 まったくその通りで否定もしようがない。
 彼女の方向音痴なだけじゃなく、記憶力も壊滅的だった。
 もし今後があるなら、彼女に道案内は任せられないな。

「それじゃ、あたしは冒険者ギルドに行くけど、二人はどうするんだ?」
「俺たちは先に宿を探すよ」
「お風呂が最優先です!」
「臭いもんな」
「臭い言わないでください! すぐにいい匂いになって悶絶させますよ!」

 それは匂いがきつすぎて悶絶するの間違いじゃないか?

「じゃあ、一旦ここでお別れだな!」
「ああ、いろいろありがとう」
「助かりました!」
「こっちこそ。タクロウのおかげで最後は勝てたからな」
「俺は別に、大したことは……!」

 カナタが俺の顔に向けて指を立てる。

「やっぱりタクロウは、勇気ある奴だと思うよ! あたしが保証する!」
「――! そうだといいな」
「そうだって! 自信もてよな! そんじゃまた!」
「ああ」
「また会いましょうー」

 元気いっぱいに去っていくカナタを俺たちは見送る。
 彼女と出会えたことは間違いなく幸運だった。
 もし彼女が森で迷子になっていなければ、俺たちは最悪まだ木の根で震えていただろう。
 今後も仲良くできたらいいな。

「さて、俺たちも行くか」
「そうですね」

 異世界の街、初体験。
 とかハイテンションになれる体力は残っていなかった。
 街並みは古風というか、ゲームに出てくる一般的な街って感じだ。
 妙になじみがある。
 適当に宿屋を探し、二人で一部屋ずつ借りる。
 代金は赤いサイクロプスを倒した時に手に入れたゴールドがある。
 俺はほとんど何もしていないし、貰うのは申し訳なかったけど、カナタが半分は俺のものだって言って強引に渡してきた。
 ゴールドだけじゃなく、レアドロップ品まで譲ってくれた。
 自分は使わないからと。

「いい奴だったなぁ」

 ベッドに寝転がり、目を瞑る。
 これまでの疲れと、安眠できなかったこともあり、一瞬で寝入ってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...