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14 常識のあるご令嬢で良かったです
ここ数日会っていないだけだというのに、遠目からでも兄が不健康そうに見えるのは、顔色が悪いからだろうか。
そんなことを考えながら、アンジェリカはダラネクに話しかける。
「約束もなしに押しかけてきただけでなく、邸内で好き勝手しようとするなんて、どうかしているのではないですか?」
「それはこっちのセリフだ! アンジェリカ! 一体、何を考えてるんだ!」
ダラネクは叫びながら、アンジェリカに近づいてきた。あまり眠れていないのか、目の下にはくまができており、こんな兄を見たことがなかった彼女は驚いて目を丸くする。
「お兄様が眠れないなんてよっぽどですわね」
「ああ、そうだ! 全部お前のせいなんだよ!」
ダラネクはアンジェリカに掴みかかろうとしたが、護衛に間に入られてしまい、大人しく手を下ろした。
(こういう時のためのティアトレイなのに、部屋に置いてきてしまったわ。といっても、あれは私のものじゃないから使いづらいけど)
「私が何をしたというのですか?」
「……まずは、婚約を解消された」
「何をおっしゃっているのです? 私は結婚してますけど」
「お前のことじゃない! 僕が婚約を解消されたんだ!」
「それは知りませんでした。ですが、どうして私のせいなのですか?」
「お前の結婚式のせいだよ!」
ダラネクは大きな唾を飛ばして叫んだ。
「私の結婚式というよりか、結婚式もどきですわね」
アンジェリカは兄の婚約者が結婚式に参列してくれていたことを思い出しながら言った。
「そうだよ! 妹があんな結婚式を挙げたのに、兄として怒らないなんて不誠実だと言って婚約を解消された! 僕は彼女を大事にするつもりだったのに!」
「それなら、婚約者の前で怒るふりをすれば良かったじゃないですか。どうせ鼻で笑ったりして馬鹿にしたんでしょう? きっと、こんなお兄様を見て幻滅したのでしょう。常識のあるご令嬢で良かったです」
「うるさいな! それだけじゃないぞ! ルズマ公爵に何を頼んだんだ!」
「お兄様、落ち着いてください。それだけでは何を言おうとしているのかわかりません」
ダラネクは怒りで顔を真っ赤にして、アンジェリカを睨む。
「父上がルズマ公爵内の療養地に連れて行かれたんだ」
「ずっと家の中にいても治らないのです。違うやり方を試してみても良いでしょう」
「お前の仕業だろう! ルズマ公爵とどういう関係だ!? 色仕掛けでもして言うことを聞かせたのか!?」
興奮したダラネクが護衛を押しのけようとした時、彼の背後の扉が勢いよく開かれた。アンジェリカの目には一瞬、ルズマ公爵であるリーアムに見えたが、そうではなかった。
「アイヒ伯爵令息、今の発言はルズマ公爵に対しての侮辱発言と受け止めてもいいんですか?」
現れたのはデイルだった。
(おかしいわ。どうしてもルズマ公爵とデイル様が同一人物のように思えてしまう)
デイルの瞳の色は前髪で隠れていて、アンジェリカには確認できない。雰囲気はまったく違うのに、なぜかアンジェリカはデイルとリーアムが同一人物だという気がした。
「デイル男爵!? あなたがどうしてここにいるんだ!?」
「あなたがここに押しかけてくるのではないかと思って先回りしたつもりが、ひと足遅かったんですよ。あ、僕はちゃんとライキ伯爵に伺うことを連絡していますから、あなたのような礼儀知らずではありません」
「男爵のくせに偉そうにするな!」
「偉そうにしていません。普通に話をしているだけですよ。僕たち、婚約者にふられた仲間なんですから仲良くしましょうよ」
デイルは呆れた顔でデイルに答えたあと、アンジェリカには満面の笑みで話しかける。
「あなたのお父様のことはお任せください」
「ありがとうございます」
アンジェリカが感謝の気持ちを伝えると、ダラネクは目を吊り上げる。
「アンジェリカ! やっぱり父上の件もお前のせいなのか!」
「私のせいという言い方はおかしいでしょう?」
「うるさい!」
目を血走らせ、アンジェリカに飛びかかろうとしたダラネクの後襟を、デイルが掴んで引き倒した。
そんなことを考えながら、アンジェリカはダラネクに話しかける。
「約束もなしに押しかけてきただけでなく、邸内で好き勝手しようとするなんて、どうかしているのではないですか?」
「それはこっちのセリフだ! アンジェリカ! 一体、何を考えてるんだ!」
ダラネクは叫びながら、アンジェリカに近づいてきた。あまり眠れていないのか、目の下にはくまができており、こんな兄を見たことがなかった彼女は驚いて目を丸くする。
「お兄様が眠れないなんてよっぽどですわね」
「ああ、そうだ! 全部お前のせいなんだよ!」
ダラネクはアンジェリカに掴みかかろうとしたが、護衛に間に入られてしまい、大人しく手を下ろした。
(こういう時のためのティアトレイなのに、部屋に置いてきてしまったわ。といっても、あれは私のものじゃないから使いづらいけど)
「私が何をしたというのですか?」
「……まずは、婚約を解消された」
「何をおっしゃっているのです? 私は結婚してますけど」
「お前のことじゃない! 僕が婚約を解消されたんだ!」
「それは知りませんでした。ですが、どうして私のせいなのですか?」
「お前の結婚式のせいだよ!」
ダラネクは大きな唾を飛ばして叫んだ。
「私の結婚式というよりか、結婚式もどきですわね」
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「そうだよ! 妹があんな結婚式を挙げたのに、兄として怒らないなんて不誠実だと言って婚約を解消された! 僕は彼女を大事にするつもりだったのに!」
「それなら、婚約者の前で怒るふりをすれば良かったじゃないですか。どうせ鼻で笑ったりして馬鹿にしたんでしょう? きっと、こんなお兄様を見て幻滅したのでしょう。常識のあるご令嬢で良かったです」
「うるさいな! それだけじゃないぞ! ルズマ公爵に何を頼んだんだ!」
「お兄様、落ち着いてください。それだけでは何を言おうとしているのかわかりません」
ダラネクは怒りで顔を真っ赤にして、アンジェリカを睨む。
「父上がルズマ公爵内の療養地に連れて行かれたんだ」
「ずっと家の中にいても治らないのです。違うやり方を試してみても良いでしょう」
「お前の仕業だろう! ルズマ公爵とどういう関係だ!? 色仕掛けでもして言うことを聞かせたのか!?」
興奮したダラネクが護衛を押しのけようとした時、彼の背後の扉が勢いよく開かれた。アンジェリカの目には一瞬、ルズマ公爵であるリーアムに見えたが、そうではなかった。
「アイヒ伯爵令息、今の発言はルズマ公爵に対しての侮辱発言と受け止めてもいいんですか?」
現れたのはデイルだった。
(おかしいわ。どうしてもルズマ公爵とデイル様が同一人物のように思えてしまう)
デイルの瞳の色は前髪で隠れていて、アンジェリカには確認できない。雰囲気はまったく違うのに、なぜかアンジェリカはデイルとリーアムが同一人物だという気がした。
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デイルは呆れた顔でデイルに答えたあと、アンジェリカには満面の笑みで話しかける。
「あなたのお父様のことはお任せください」
「ありがとうございます」
アンジェリカが感謝の気持ちを伝えると、ダラネクは目を吊り上げる。
「アンジェリカ! やっぱり父上の件もお前のせいなのか!」
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