【完結】皆さまにお尋ねしたいことがございます

風見ゆうみ

文字の大きさ
15 / 48

15 同一人物なのでしょう?

「男爵の分際で、この僕に手を出すとはいい度胸だな!?」

 ダラネクは赤いカーペットに尻もちをついたまま、デイルを見上げて叫んだ。

「少々手荒な真似になってしまったことはお詫びしますが、女性に暴力をふるおうとしている男性を止めないほうがおかしいでしょう」
「彼女は僕の妹だ! どう扱おうが僕の勝手だろ!」
「妹だからどう扱おうがあなたの勝手? 本気でそう思っているのですか?」

 デイルから発された威圧感に耐えられなくなったダラネクは、なんとか一人で立ち上がると、アンジェリカを指さす。

「今日はこのくらいにしておいてやるが、僕と婚約者が復縁できるようにしなかったら、絶対に許さないからな! それから、父上も早めに家に戻らせるように言うんだ!」
「私としては、お兄様と絶縁することになってもかまいませんので、許してもらわなくて結構です。お父様は元気になるまで戻っていただくつもりはありません。では、お兄様、気をつけてお帰りくださいませ」

 アンジェリカが手を振ると、ダラネクは悔しそうに唇を噛んだあと、邸内から出ていった。

(今までの私なら、お父様を人質にとられていたようなものだから、お兄様に折れていたでしょう。だけど、今はそんな必要がない。言いたいことが言えるようになって、本当にスッキリしたわ!)
 
 デイルは小さく息を吐いた後、アンジェリカに近寄ってくる。

「余計なことをしてしまいましたか?」
「いいえ。追い払っていただき感謝しています。でも、どうして兄が私の所へ来ると思ったのですか?」
「アイヒ伯爵を連れ出す際に、すごい剣幕で怒っていたんですよ。怪しすぎるでしょう?」
「もしかして兄は、父の病気が治りにくいように何かしていたんでしょうか」
「その可能性がありますね。ルズマ公爵領内で療養してもらい、病気が治っていくようなら彼が裏で動いていた可能性があります。食事などの世話をしていたのはメイドですか?」
「……いえ。食事はお母様が部屋に運んで食べさせていました」

(お父様への愛でそうしているのだと思っていたけれど、実際は違っていたかもしれないわね)

 これだけ騒がしくしていたのなら、ヒウロが出てきてもおかしくはないものだが、彼はワミーに捕まっており、様子を見に来る気配はない。アンジェリカは、デイルを応接室に案内し、ヒウロが来るまで自分がデイルの相手をするとメイドに告げた。メイドがお茶を淹れ終え、二人きりになると、アンジェリカはデイルに頭を下げる。

「今回は本当にありがとうございました。これで離婚をすることができます」
「相変わらず、ライキ伯爵は冷たいままなのですか」
「はい。結婚式の時と変わらず、義妹ばかり優先しています」
「結婚式の件はルズマ公爵から聞きましたが、大変だったようですね」

(デイル様は私が彼の正体に気づいていないと思っているみたいね。私が離婚した後に、結婚を申し込もうと考えてくれていたら大変だわ。先に伝えておかなくちゃ)

「デイル様、あなたとルズマ公爵は同一人物なのでしょう?」
「えっ? 何を言っているんですか? 僕とルズマ公爵が同一人物なんてありえないですよ。似ても似つかないです!」
「低位貴族の前ではデイル様の姿、高位貴族の前ではリーアム様の姿。二人を同時に見たことのある人はいないのではないでしょうか。そして、デイル様の時のあなたと、リーアム様の時のあなた。両方と話したことのある部外者は、私だけなのではないでしょうか」
「そ、そんなことあるわけないじゃないですか」

 苦笑するデイルに、アンジェリカは眉尻を下げる。

「もし、デイル様が私を妻にしたいと思ってくださっているのならば、いつかは教えていただかなければならないことです」
「そ、それって、ライキ伯爵と別れることができたら、僕の妻になってくれるということですか?」
「そうです。それくらいのことしか、私は恩を返すことができませんから」
「恩だなんて、そんなことは気にしなくていいです。それに、僕はあなたが思っているようにルズマ公爵と同一人物ではないかもしれません。同一人物ではなかったらただの男爵ですよ?」
「男爵の妻のほうが私はありがたいです。デイル様のように私も領民たちと話をして、住みやすい領地にしていきたいのです」

 微笑んだアンジェリカを見て、デイルは表情を緩めると、前髪をかき上げる。

「お察しの通り」
「アンジェリカ! 僕という夫がいるのに男を連れ込むなんてどういうことだ!」

 ノックもなしに扉が開き、怒鳴りながら中に入ってきたヒウロに「「は?」」とアンジェリカとデイルは呆れた顔で聞き返したのだった。

あなたにおすすめの小説

あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

しゃーりん
恋愛
アヴリルは2年前、王太子殿下から婚約破棄を命じられた。 そして今日、第一王子殿下から離婚を命じられた。 第一王子殿下は、2年前に婚約破棄を命じた男でもある。そしてアヴリルの夫ではない。 周りは呆れて失笑。理由を聞いて爆笑。巻き込まれたアヴリルはため息といったお話です。

心の傷は癒えるもの?ええ。簡単に。

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢セラヴィは婚約者のトレッドから婚約を解消してほしいと言われた。 理由は他の女性を好きになってしまったから。 10年も婚約してきたのに、セラヴィよりもその女性を選ぶという。 意志の固いトレッドを見て、婚約解消を認めた。 ちょうど長期休暇に入ったことで学園でトレッドと顔を合わせずに済み、休暇明けまでに失恋の傷を癒しておくべきだと考えた友人ミンディーナが領地に誘ってくれた。 セラヴィと同じく婚約を解消した経験があるミンディーナの兄ライガーに話を聞いてもらっているうちに段々と心の傷は癒えていったというお話です。

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。

こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。 彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。 皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。 だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。 何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。 どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。 絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。 聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──…… ※在り来りなご都合主義設定です ※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です ※つまりは行き当たりばったり ※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください 4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。

ふまさ
恋愛
 伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。 「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」  正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。 「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」 「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」  オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。  けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。  ──そう。  何もわかっていないのは、パットだけだった。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

王家の面子のために私を振り回さないで下さい。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。 愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。 自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。 国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。 実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。 ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。

【完結】他の人が好きな人を好きになる姉に愛する夫を奪われてしまいました。

山葵
恋愛
私の愛する旦那様。私は貴方と結婚して幸せでした。 姉は「協力するよ!」と言いながら友達や私の好きな人に近づき「彼、私の事を好きだって!私も話しているうちに好きになっちゃったかも♡」と言うのです。 そんな姉が離縁され実家に戻ってきました。

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?