【完結】皆さまにお尋ねしたいことがございます

風見ゆうみ

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23 反省なんてしていないんじゃない?

 アンジェリカが神父に送った手紙の中に、デイル男爵家でお世話になることを書いておいた。2日後には返信は無事に彼女の元に届き、5日後に懺悔の会が行われることになった。
 デイル男爵家は二階建ての木造建築で、一階はダイニングルームや談話室、湯あみの部屋などの共用スペースになっていて、二階が個室になっている。
 個室は全部で二十部屋あり、その中の一つはデイルの執務室兼寝室だ。普段はルズマ公爵家などで仕事をしているため、この家の執務室は使われておらず、保護対象者を連れてきた時間が夜遅くの場合だけ、そこに泊まっている形だ。
 訳ありの人間ばかり受け入れているので、警備は厳重だ。屋敷の周りを囲んでいる煉瓦の塀の前には等間隔に警備兵が常駐し、屋敷に入るにはデイルの許可が必要になっていた。
 ちなみにシルバートレイは、ルマがこっそアンジェリカの荷物に入れておくように、メイドに指示をしていた。そのことがわかったのは、アンジェリカがデイル男爵家に着き、馬車の荷台に乗せていた大きいほうのトランクケースを開けてからだ。
 そちらにルマからの手紙が入っており、離婚の手助けができないことの詫びや、ワミーの盗みについてのこと、そして、シルバートレイを今までのお詫びとして、アンジェリカに譲渡することが書かれていた。

(シルバートレイを本当に自分のものにするには、持ち主の変更届をしないといけないことになっている。でも、今はデイル様に預けたままだから、今は何もできないわね)

 何もできない自分にモヤモヤした気持ちになっていると、朝食ができたことを知らされ、アンジェリカは急いでダイニングルームに向かった。


******

 アンジェリカがデイル男爵家での暮らしに慣れてきた頃、懺悔の会が開かれることになった。
 デイルと共に教会に入ると、結婚式の時のことを思い出し、嫌な気分になった。
 暗い表情になったアンジェリカに、デイルは微笑みかける。

「アンジェリカさん。この場所はあなたにとって辛い場所かもしれません。ですが、この場所に罪はありませんので、良い思い出に変えるようにしましょう」
「……はい!」

 デイルに励まされたアンジェリカは、弱気になっていた自分に喝を入れるため、両頬を軽く叩いて気合を入れなおす。

(そうよ。しっかりしなくちゃ。暗い顔をしていたら、ヒウロと別れたくないと勘違いされてしまうわ)

 それから数分後、人が集まってきたので、デイルとは離れた席に座り、開始時間まで待つことにした。開始五分前に教会内にヒウロが入ってきた。
 ヒウロはアンジェリカが自分に何も言わず出ていったことにショックを受けており、彼女を一目見るなり近寄ってきたが、護衛によって止められた。
 護衛を振り払い、ヒウロは訴える。

「アンジェリカ! 頼む、戻ってきてくれ! 今までのことは本当に反省している。それに、全部ワミーが悪いんだ!」
「人のせいにしようとしているということは、反省なんてしていないんじゃない?」

 教会の祭壇に一番近い位置にあるチャーチチェアに座っていたアンジェリカは、ヒウロを見上げて冷たく尋ねた。

「ちゃんと反省しているよ! だけど、ワミーがいなければ、君と僕は幸せになれていたはずだ!」
「ヒウロ、もし、こうだったら……なんて言出だしらきりがないわ。あなたは私を裏切ったの。その事実だけ受け止めて」
「……君は一度の過ちを許すこともできない心の狭い人間なのか?」

(どうしてそうなるのよ)

 忌々しそうにアンジェリカを見つめるヒウロに、彼女が言い返そうとした時、後方に座っていたデイルが口を開く。

「ライキ伯爵、悪いことをした人間が、その相手に自分を許してくれないと責める発言をするのはどうかと思います」
「うるさい! 男爵のくせに余計な口出しをするな! アンジェリカに余計なことを吹き込んだのは君だろう? 僕に喧嘩を売ったことを必ず後悔させてやるからな!」
「できるものならどうぞ。後悔するのはあなたでしょうけどね」

 余裕の笑みを浮かべるデイルを睨みつけ、ヒウロはアンジェリカの隣に座ろうとしたが、後からやってきたワミーに阻まれる。

「お兄様はこっちよ」

 胸元が大きく開いた白いドレスを着たワミーは、胸をヒウロの腕に押し当て上目遣いで見つめる。

「……わかった」

 ヒウロは生唾を飲み込んだあと、集まり始めたギャラリーの視線に気づき、慌ててワミーの胸から目を離したのだった。

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