【完結】皆さまにお尋ねしたいことがございます

風見ゆうみ

文字の大きさ
24 / 48

24 ワガママなのでしょうか

 明らかな色仕掛けにひっかかるヒウロにアンジェリカが呆れていると、祭壇に神父が現れた。立ち襟で踝丈の黒いローブを着た老年の神父は、眉尻を下げてヒウロを見つめる。

「ライキ伯爵、あなたはまだ反省していないようですね」
「聞いてください! 僕はアンジェリカに酷いことをしたかもしれません。ですが、そんな行動をとった理由があります! ここにいるワミーに騙されたからです!」

 ヒウロが訴えると、ワミーは自分の胸に手を当てて話し始める。

「神父様、聞いてください。私の行動によってアンジェリカ様を傷つけたことは確かです。ですが、私は兄に体調が悪い、こうしたいと希望を伝えただけで、アンジェリカ様よりも自分を優先してほしいなんて一言も口に出したことはありません」

 神父は神妙な面持ちでうなずくと、無言でアンジェリカに目を向けた。自分に間違いはないか確認しているのだとわかり、アンジェリカは立ち上がって発言する。

「本心で言っているかはわかりませんが、ワミーさんは私に申し訳ないというような言葉を口にしていました」
「アンジェ、どうしてワミーを庇うんだよ!? 僕たちが揉めるきっかけを作ったのは彼女なんだぞ?」
「たとえワミーがきっかけを作ったのだとしても、あなたが相手にしなければ良かっただけでしょう」
「僕は兄だ。妹を守らなければならないって
、父上から言われているんだ!」
「なら、守ってあげなさいよ」

 アンジェリカは冷ややかな口調で続ける。

「妹を守る兄って素敵だと思うわ。だけど、あなたのやっていることは兄妹の域を越えている。ワミー、あなたもそう思うわよね?」
「ええ。お兄様が私のことばかり優先するから、私のことを好きなのだと誤解してしまいました。でもっ、お兄様はいつも優しくてっ! 結婚式の晩だって、ずっと私に付いていてくれたんです! 二日目の晩も、一人では眠れない私に添い寝をしてくれて……」

 泣き真似をしながら話すワミーを見て、ギャラリーはひそひそと話を始める。
 今日集まっているのは、ルマやルマの友人たち。そして、結婚式に出席していた一部の貴族である。
 初夜を迎えなかっただけでなく、二日目も妹に付いていて、新妻を一人にしていたという事実を聞き、一気にヒウロの印象は悪くなった。

「結婚式も散々だったのに、初夜もすっぽかされ、いつだって妹優先。私が離婚を望んでもおかしくないわよね?」
「人間、誰だって過ちを犯すことがある! 反省すると言っているのに聞き入れずに、すぐに別れようとするのは違うだろう!? 君のワガママだ」
「ワガママですって?」

 カチンときたアンジェリカは聞き返した後、ヒウロを睨みつける。

「ヒウロ、私がワガママを言っているかどうか、皆さんに確認しましょう。もし、私がワガママではないという意見が多かった場合、大人しく離婚して」
「……どうしてそんなことを」
「あなたは自分が間違っていないという自信があるのでしょう?」

 厳しい口調で問われたヒウロは、苦虫を噛み潰したような顔でうなずく。

「わかったよ。だけど、僕を支持してくれる人が多かった場合、君は大人しく家に戻るんだ」
「わかったわ」

 アンジェリカはくるりと向きを変え、後方に座っている人たちに問いかける。

「皆さまにお尋ねしたいことがございます。
私は普通の結婚生活を送れているのでしょうか。そして、離婚したいと思う私はワガママなのでしょうか」

 アンジェリカの質問に教会内はざわついたのだった。

あなたにおすすめの小説

王家の面子のために私を振り回さないで下さい。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。 愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。 自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。 国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。 実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。 ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。

あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

しゃーりん
恋愛
アヴリルは2年前、王太子殿下から婚約破棄を命じられた。 そして今日、第一王子殿下から離婚を命じられた。 第一王子殿下は、2年前に婚約破棄を命じた男でもある。そしてアヴリルの夫ではない。 周りは呆れて失笑。理由を聞いて爆笑。巻き込まれたアヴリルはため息といったお話です。

いくつもの、最期の願い

しゃーりん
恋愛
エステルは出産後からずっと体調を崩したままベッドで過ごしていた。 夫アイザックとは政略結婚で、仲は良くも悪くもない。 そんなアイザックが屋敷で働き始めた侍女メイディアの名を口にして微笑んだ時、エステルは閃いた。 メイディアをアイザックの後妻にしよう、と。 死期の迫ったエステルの願いにアイザックたちは応えるのか、なぜエステルが生前からそれを願ったかという理由はエステルの実妹デボラに関係があるというお話です。

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです

よどら文鳥
恋愛
 貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。  どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。  ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。  旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。  現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。  貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。  それすら理解せずに堂々と……。  仕方がありません。  旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。  ただし、平和的に叶えられるかは別です。  政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?  ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。  折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。

しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。 相手は10歳年上の公爵ユーグンド。 昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。 しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。 それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。 実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。 国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。 無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。  

【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)