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37 頭が痛くなってきたわ
「ワミー、ティアトレイの件はリーアム様が調べてくれたんだって、最初に話をしたはずよ」
間抜けな顔をしているワミーに、アンジェリカが話しかけると、ワミーは現実を否定するかのように首を横に振る。
「そ、そんな……、嘘でしょう? デイル男爵とリーアム様が同一人物だっていうの!? そんなのありえない!」
「信じる信じないは勝手だけど、私もリーアム様も嘘はついていないわ」
ワミーは今にも泣き出しそうな顔でリーアムを見つめて訴える。
「デイル男爵がリーアム様だったなんて嘘でしょう? 嘘って言いなさいよ!」
「アンジェリカが言ったように、信じる信じないは勝手だが、自分のことが可愛いのなら口のきき方には気をつけたほうがいい」
リーアムに睨まれたワミーは気圧されたのか、びくりと体を震わせた。そんな彼女にアンジェリカはゆっくりとした口調で話しかける。
「どうしてもティアトレイを手に入れたかったのよね? だけど、ヒウロはシルバートレイに大金を払う必要はないと言って買ってくれなかった。我慢できなかったあなたは、少しならと思って、ライキ伯爵家のお金を盗むことにした」
「そんなことしてない!」
「ルマ様が調べてくれた結果、ライキ伯爵領内で消えたお金の合計と、ティアトレイの代金はまったく同じだったそうよ」
「たまたま同じ金額だっただけよ!」
「ワミー、じゃあ聞くわ。あなたはティアトレイを買うお金をどうやって手に入れたの? もらったという嘘はもう通用しないわ。本体が駄目なら、お金を他の男の人からもらったとでも言うつもり?」
アンジェリカが呆れた表情で尋ねると、ワミーは笑みを浮かべてうなずく。
「そうよ。人からもらったお金で買ったの! だから、ライキ伯爵家からお金を盗んだりなんか」
「誰からもらったか教えてちょうだい。あなたが本当のことを言っているか調べるから」
「そんなことしなくてもいいわよ! お金をくれた人だって、いちいち調べられたくないはずだもの! 迷惑をかけたくないわ!」
「犯罪に関わっているかもしれないんだから、協力してくれるはずでしょう。それに、私たちの住んでいる国では贈与についての税金は定められていない。きれいなお金であるのならば、あなたにお金を渡していても悪いことではないから、相手に迷惑をかけたりしないわ」
「話を聞きに行くことが迷惑だって言っているのよ!」
ワミーはどうしても罪を認めるつもりはないようだった。
(救いようがないというのはこういう人のことを言うのかしら)
真面目に話していることが馬鹿らしくなってきたアンジェリカは、話を強制的に終わらせることに決めた。
「もういいわ。反省するつもりは一切ないようだし、あなたの取り調べは騎士に任せましょう」
「私が捕まらないといけない理由なんてないわ!」
「公爵を嘘つき呼ばわりしたんだ。自分が無礼な態度を取ったことくらいわかるだろう?」
アンジェリカではなくリーアムはそう答えると、テーブルに置かれていた呼び鈴を鳴らす。すると、アンジェリカが手配していた騎士たちが部屋の中に入ってきた。
「公爵に対する無礼な発言があった。連れて行って取り調べをしてくれ。その後はライキ伯爵領の騎士に身柄を渡してくれ。彼女が何をしたかは事前に伝えておく」
「承知いたしました」
リーダーらしき騎士がうなずくと、周りにいた若い騎士たちがワミーの腕をつかんで引っ張る。
「さあ、こっちへ来るんだ」
「い、嫌よ! だって信じられない! 公爵が身分を偽るなんてありえないじゃない!」
「領民の真意を知るためには、そのほうが良かったんだ。公爵本人に悪口なんて言えないだろう?」
「……っ! わかりました。認めます! だから私の話を聞いてください!」
「もう十分に聞いたよ」
「まだ話していないことがあるんです!」
往生際の悪いワミーをアンジェリカが止める前に、ワミーが叫ぶ。
「私はあなたが好きなんです! 本当はルズマ公爵なのにデイル男爵と嘘をついていたお詫びとして、私と結婚してください。言っておきますけど、この機会を逃したら、私があなたと結婚することなんてありませんから!」
「ワミー、あなた本気でそんなことを言ってるの?」
「当たり前でしょう!」
「ここまで話が通じないとは思ってなかった。あなたと話すだけで頭が痛くなってきたわ」
自信満々の笑みを浮かべるワミーにアンジェリカがあきれ果てていると、リーアムが口を開く。
「嘘をついていたことについて詫びはするが、結婚なんてありえない。俺は別に君と結婚したくないので、この機会を逃すことにする」
「なんですって?」
自分の容姿に自信があり、多くの男性から愛されていると自信を持っていたワミーは、目を大きく見開いてリーアムを見つめた。
「もう君と話すことはない。早く連れて行ってくれ」
「い、嫌よ! ごめんなさい! 許して!」
ワミーは泣きながら暴れ回ったが、騎士の力に敵うはずもなかった。
間抜けな顔をしているワミーに、アンジェリカが話しかけると、ワミーは現実を否定するかのように首を横に振る。
「そ、そんな……、嘘でしょう? デイル男爵とリーアム様が同一人物だっていうの!? そんなのありえない!」
「信じる信じないは勝手だけど、私もリーアム様も嘘はついていないわ」
ワミーは今にも泣き出しそうな顔でリーアムを見つめて訴える。
「デイル男爵がリーアム様だったなんて嘘でしょう? 嘘って言いなさいよ!」
「アンジェリカが言ったように、信じる信じないは勝手だが、自分のことが可愛いのなら口のきき方には気をつけたほうがいい」
リーアムに睨まれたワミーは気圧されたのか、びくりと体を震わせた。そんな彼女にアンジェリカはゆっくりとした口調で話しかける。
「どうしてもティアトレイを手に入れたかったのよね? だけど、ヒウロはシルバートレイに大金を払う必要はないと言って買ってくれなかった。我慢できなかったあなたは、少しならと思って、ライキ伯爵家のお金を盗むことにした」
「そんなことしてない!」
「ルマ様が調べてくれた結果、ライキ伯爵領内で消えたお金の合計と、ティアトレイの代金はまったく同じだったそうよ」
「たまたま同じ金額だっただけよ!」
「ワミー、じゃあ聞くわ。あなたはティアトレイを買うお金をどうやって手に入れたの? もらったという嘘はもう通用しないわ。本体が駄目なら、お金を他の男の人からもらったとでも言うつもり?」
アンジェリカが呆れた表情で尋ねると、ワミーは笑みを浮かべてうなずく。
「そうよ。人からもらったお金で買ったの! だから、ライキ伯爵家からお金を盗んだりなんか」
「誰からもらったか教えてちょうだい。あなたが本当のことを言っているか調べるから」
「そんなことしなくてもいいわよ! お金をくれた人だって、いちいち調べられたくないはずだもの! 迷惑をかけたくないわ!」
「犯罪に関わっているかもしれないんだから、協力してくれるはずでしょう。それに、私たちの住んでいる国では贈与についての税金は定められていない。きれいなお金であるのならば、あなたにお金を渡していても悪いことではないから、相手に迷惑をかけたりしないわ」
「話を聞きに行くことが迷惑だって言っているのよ!」
ワミーはどうしても罪を認めるつもりはないようだった。
(救いようがないというのはこういう人のことを言うのかしら)
真面目に話していることが馬鹿らしくなってきたアンジェリカは、話を強制的に終わらせることに決めた。
「もういいわ。反省するつもりは一切ないようだし、あなたの取り調べは騎士に任せましょう」
「私が捕まらないといけない理由なんてないわ!」
「公爵を嘘つき呼ばわりしたんだ。自分が無礼な態度を取ったことくらいわかるだろう?」
アンジェリカではなくリーアムはそう答えると、テーブルに置かれていた呼び鈴を鳴らす。すると、アンジェリカが手配していた騎士たちが部屋の中に入ってきた。
「公爵に対する無礼な発言があった。連れて行って取り調べをしてくれ。その後はライキ伯爵領の騎士に身柄を渡してくれ。彼女が何をしたかは事前に伝えておく」
「承知いたしました」
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「さあ、こっちへ来るんだ」
「い、嫌よ! だって信じられない! 公爵が身分を偽るなんてありえないじゃない!」
「領民の真意を知るためには、そのほうが良かったんだ。公爵本人に悪口なんて言えないだろう?」
「……っ! わかりました。認めます! だから私の話を聞いてください!」
「もう十分に聞いたよ」
「まだ話していないことがあるんです!」
往生際の悪いワミーをアンジェリカが止める前に、ワミーが叫ぶ。
「私はあなたが好きなんです! 本当はルズマ公爵なのにデイル男爵と嘘をついていたお詫びとして、私と結婚してください。言っておきますけど、この機会を逃したら、私があなたと結婚することなんてありませんから!」
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「当たり前でしょう!」
「ここまで話が通じないとは思ってなかった。あなたと話すだけで頭が痛くなってきたわ」
自信満々の笑みを浮かべるワミーにアンジェリカがあきれ果てていると、リーアムが口を開く。
「嘘をついていたことについて詫びはするが、結婚なんてありえない。俺は別に君と結婚したくないので、この機会を逃すことにする」
「なんですって?」
自分の容姿に自信があり、多くの男性から愛されていると自信を持っていたワミーは、目を大きく見開いてリーアムを見つめた。
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