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エイナざまぁ編
第47話 行方不明(エリナside)
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※ お久しぶりのエリナの一人称になります。
城内にある私専用の執務室で仕事をしていると、アレク殿下がやって来て衝撃的な話を教えてくれた。
「エイナ嬢がいなくなった」
「えっ!? エイナが!? ど、どういう事ですか!? シシリー様のお家から逃げたという事ですか!?」
「そうらしい。セルディス殿下の遣いの方から、さっき連絡が来た。シシリー様も予想はしていたらしいが、思ったよりも早く出て行った事には驚いていらしたそうだ。何かきっかけがあったようだな。もちろん、彼女を野放しにしているのではなく監視はつけているようだが」
「何だか、エイナの事でシシリー様には迷惑をかけっぱなしですわね。お詫びの品でもお送りしなければ…。ですが、逃げてもエイナに行くところなんてありませんわよね? もしかしてこちらに戻って来ようとしているんでしょうか?」
「そうかもしれない」
あの子の考えている事がさっぱりわからないわ。
本当にこの国に戻ってこれると思っているのかしら。
無駄に運の強いところもあるから、絶対に無理だと言えないところもあるのが、あの子のすごいところなのだけれど。
「どうして、あの子は反省してくれないのかしら。どうしたら理解してくれるの?」
独り言を呟いて両手で顔を覆うと、アレク殿下に頭を優しく撫でられた。
「エリナが気にする事じゃないだろう」
「…ですが、あまりにも人に迷惑をかけすぎています」
「だから、罰が当たるだろう」
「どういう事でしょうか?」
手を顔からはなし、アレク殿下を見上げて聞いてみる。
悪い事をしたら罰が当たるのはわかる気がするけれど、アレク殿下の口ぶりだと、罰が当たる事がわかっている気がしたから。
「いや、実際に起きた時に話そう。それよりも、シシリー様がエリナに申し訳ないと謝っていたと伝えてくれと言われていた」
「どうしてシシリー様が?」
「エイナ嬢を叩き潰すつもりだったけれど無理だったと」
「シシリー様は悪くありませんわ。エイナがしぶとすぎるんです。あの子は犯罪まがいの事をしなければ反省しないんじゃないかと思います。アレク殿下だってその事は知っておられるでしょう?」
「エリナ」
ふぅ、と小さくため息を吐いた後、アレク殿下が苦笑して言う。
「殿下をつけるのは止めてくれと言っているだろう。もう夫婦なんだぞ」
「申し訳ございません。でも、くせになってしまっているんです。それに、別に夫婦の間でも殿下をつけてもおかしくありませんわ」
「俺が嫌だと言っているんだ」
「気を付けますわ」
「次に殿下をつけたら、エリナから俺にキスするでどうだろう」
「そ、そんなの無理ですわ!」
絶対に無理だというわけでもないけれど、アレク殿下は意地悪なので絶対にそれだけじゃすまないはず。
立ち上がって抗議したけれど、アレク殿下は笑いながら部屋を出ていこうとする。
「じゃあ、また夕食の時に」
「待って下さい! 約束なんかしていませんから!」
「俺が勝手に約束したんだ」
「アレク殿下!! ……あぁ」
言ってしまったわ。
エイナの事で冷静になれていなかった事もあり、アレク殿下の策略にハマってしまった。
「エリナ」
「……何でしょうか」
「楽しみにしてるよ」
恨めしそうな表情の私に対して、アレク殿下は満面の笑みを浮かべて執務室から出て行った。
そして、数日後。
エイナについての新たな話を聞く事になった。
寝室のベッドに横になった私に、アレク殿下がエイナが行方不明になっていると教えてくれた。
「エイナが行方不明? 監視をつけてくれていたんじゃないんですか?」
「そうだったんだが誰かに連れ去られたようで、行方がわからなくなってしまったらしい」
「……連れ去られた?」
エイナの事だから恨みを買っている事もあるでしょうし、そんな事があってもおかしくはない。
けれど、一体誰が?
「俺も一応、調べさせてみたら、クララの両親がおかしな動きをしていた事がわかった」
「クララ…って、私を階段から落としたメイドの事ですね?」
「ああ。彼女の両親が大金を払って誰かにエイナ嬢への復讐を依頼した可能性がある」
「誰かって、その…、あまり良くない人達ですわね?」
「そうなる。セルディス殿下が教えてくれたが、向こうの国境警備隊の所にエイナ嬢が現れて、そこで1人の男と会っているようなんだ。その男とどこかへ行ってから行方がわからないらしい」
エイナを連れて行ったのは貴族でも警察でもなく、裏社会の人間という事なのよね…?
という事は…。
「エイナは今は…」
「わからない。とにかく、伝えた方が良いだろうと思って伝えただけだ。もう忘れればいい」
「そういう訳には…」
「考えられなくしてやろうか?」
渋っていると、アレク殿下が近付いてくるものだから、彼の胸を手で押しやりながら遠慮の言葉を述べる。
「もう忘れましたから大丈夫です」
結婚してからのアレク殿下は昔の彼とは別人なくらいに甘々だ。
彼曰く、自分の気持ちに正直になる事にしたらしいのだけど、このままでは私の心臓が破裂してしまう気がする。
でも、本当にエイナは今はどうしているのかしら…。
そんな風に思った時には、アレク殿下のせいで、次の日の朝までエイナの事は頭から吹っ飛んでしまったのだった。
城内にある私専用の執務室で仕事をしていると、アレク殿下がやって来て衝撃的な話を教えてくれた。
「エイナ嬢がいなくなった」
「えっ!? エイナが!? ど、どういう事ですか!? シシリー様のお家から逃げたという事ですか!?」
「そうらしい。セルディス殿下の遣いの方から、さっき連絡が来た。シシリー様も予想はしていたらしいが、思ったよりも早く出て行った事には驚いていらしたそうだ。何かきっかけがあったようだな。もちろん、彼女を野放しにしているのではなく監視はつけているようだが」
「何だか、エイナの事でシシリー様には迷惑をかけっぱなしですわね。お詫びの品でもお送りしなければ…。ですが、逃げてもエイナに行くところなんてありませんわよね? もしかしてこちらに戻って来ようとしているんでしょうか?」
「そうかもしれない」
あの子の考えている事がさっぱりわからないわ。
本当にこの国に戻ってこれると思っているのかしら。
無駄に運の強いところもあるから、絶対に無理だと言えないところもあるのが、あの子のすごいところなのだけれど。
「どうして、あの子は反省してくれないのかしら。どうしたら理解してくれるの?」
独り言を呟いて両手で顔を覆うと、アレク殿下に頭を優しく撫でられた。
「エリナが気にする事じゃないだろう」
「…ですが、あまりにも人に迷惑をかけすぎています」
「だから、罰が当たるだろう」
「どういう事でしょうか?」
手を顔からはなし、アレク殿下を見上げて聞いてみる。
悪い事をしたら罰が当たるのはわかる気がするけれど、アレク殿下の口ぶりだと、罰が当たる事がわかっている気がしたから。
「いや、実際に起きた時に話そう。それよりも、シシリー様がエリナに申し訳ないと謝っていたと伝えてくれと言われていた」
「どうしてシシリー様が?」
「エイナ嬢を叩き潰すつもりだったけれど無理だったと」
「シシリー様は悪くありませんわ。エイナがしぶとすぎるんです。あの子は犯罪まがいの事をしなければ反省しないんじゃないかと思います。アレク殿下だってその事は知っておられるでしょう?」
「エリナ」
ふぅ、と小さくため息を吐いた後、アレク殿下が苦笑して言う。
「殿下をつけるのは止めてくれと言っているだろう。もう夫婦なんだぞ」
「申し訳ございません。でも、くせになってしまっているんです。それに、別に夫婦の間でも殿下をつけてもおかしくありませんわ」
「俺が嫌だと言っているんだ」
「気を付けますわ」
「次に殿下をつけたら、エリナから俺にキスするでどうだろう」
「そ、そんなの無理ですわ!」
絶対に無理だというわけでもないけれど、アレク殿下は意地悪なので絶対にそれだけじゃすまないはず。
立ち上がって抗議したけれど、アレク殿下は笑いながら部屋を出ていこうとする。
「じゃあ、また夕食の時に」
「待って下さい! 約束なんかしていませんから!」
「俺が勝手に約束したんだ」
「アレク殿下!! ……あぁ」
言ってしまったわ。
エイナの事で冷静になれていなかった事もあり、アレク殿下の策略にハマってしまった。
「エリナ」
「……何でしょうか」
「楽しみにしてるよ」
恨めしそうな表情の私に対して、アレク殿下は満面の笑みを浮かべて執務室から出て行った。
そして、数日後。
エイナについての新たな話を聞く事になった。
寝室のベッドに横になった私に、アレク殿下がエイナが行方不明になっていると教えてくれた。
「エイナが行方不明? 監視をつけてくれていたんじゃないんですか?」
「そうだったんだが誰かに連れ去られたようで、行方がわからなくなってしまったらしい」
「……連れ去られた?」
エイナの事だから恨みを買っている事もあるでしょうし、そんな事があってもおかしくはない。
けれど、一体誰が?
「俺も一応、調べさせてみたら、クララの両親がおかしな動きをしていた事がわかった」
「クララ…って、私を階段から落としたメイドの事ですね?」
「ああ。彼女の両親が大金を払って誰かにエイナ嬢への復讐を依頼した可能性がある」
「誰かって、その…、あまり良くない人達ですわね?」
「そうなる。セルディス殿下が教えてくれたが、向こうの国境警備隊の所にエイナ嬢が現れて、そこで1人の男と会っているようなんだ。その男とどこかへ行ってから行方がわからないらしい」
エイナを連れて行ったのは貴族でも警察でもなく、裏社会の人間という事なのよね…?
という事は…。
「エイナは今は…」
「わからない。とにかく、伝えた方が良いだろうと思って伝えただけだ。もう忘れればいい」
「そういう訳には…」
「考えられなくしてやろうか?」
渋っていると、アレク殿下が近付いてくるものだから、彼の胸を手で押しやりながら遠慮の言葉を述べる。
「もう忘れましたから大丈夫です」
結婚してからのアレク殿下は昔の彼とは別人なくらいに甘々だ。
彼曰く、自分の気持ちに正直になる事にしたらしいのだけど、このままでは私の心臓が破裂してしまう気がする。
でも、本当にエイナは今はどうしているのかしら…。
そんな風に思った時には、アレク殿下のせいで、次の日の朝までエイナの事は頭から吹っ飛んでしまったのだった。
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