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8.5 脳内お花畑の令嬢の胸の内
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アビーが花を癒すことを嫌がったせいで、ポメラは庭園に行けなくなった。ポメラのことを妬んでいる人たちから「残念でしたわね」なんて言われたけれど、そんなことは気にしない。だってゼッシュ様が花を癒やしに行くと言うから、ポメラも付いていけることになったんだもの。
それって、庭園に行くこと同じよね! しかも普通なら入れない所に行くんだもの。ポメラはやっぱり特別なんだわ。
庭園に向かう馬車の中でのゼッシュ様は落ち込んでいるみたいに元気がない。どうして、ポメラと一緒にいるのに暗い顔をしているの? ポメラと一緒にいるだけで幸せでしょう?
「ゼッシュ様、何か嫌なことでもあったのですか?」
「……いや。そういうわけではないんだけど」
「じゃあ、どうしてそんなに暗い顔をしているんですかぁ? ちゃっちゃっとお花を元気にさせて、貸し切り状態の庭園をゆっくり散歩しましょうよ」
「そ、そうだと良いんだけど上手くいきそうになくてさ。不安で仕方がないんだ」
「どういうことですか? ゼッシュ様はアビーにできることができないってことですか?」
こてんと首を傾げて尋ねると、ゼッシュ様は泣きそうな顔になった。
アビーに断られた時には、やっぱりアビーが嘘をついていたのだと思った。そんな時、ゼッシュ様からのお願いは無視して、アビーは違う国の植物を癒やし行ったと聞いた。アビーは無事に癒やしただけでなく、その植物は病気にかかる前よりも元気になったんだって。
アビーってまあまあすごかったのね。そのことに気づけなかったポメラも駄目ね。反省しなくちゃいけないけれど、今は弱弱しくなっているゼッシュ様をどうにかしなくっちゃ!
「アビーにできることがゼッシュ様にできないなんてことはありませんよ。自信を持ってください!」
「だ、だけど、家でやってみたけど上手くいかなかったんだ。もし、できないと分かれば皆に笑いものにされてしまう」
「それは必死さが足りないからじゃないですか? 人の傷を癒やす時は早く治さなきゃって思いながらやっていると思うんです!」
「それはそうかもしれないけど、植物相手に早く治さないとなんて思えないよ」
「そう思うようにしないと、ゼッシュ様は昔のアビーみたいに使えない子だと言われるようになっちゃいますよ!」
ゼッシュ様にとって、ポメラが言ったことは一番恐れていることだったみたい。表情が引きつったあとはがっくりと項垂れてしまった。どうして、そんなに自信がないのよ。それじゃあ困るわ。ポメラの恋人はいつも自信満々の素敵な人でいてもらわなくちゃ。
「ゼッシュ様、大丈夫ですよ! ポメラを信じてください!」
「そ、そうだな。それにポメラが傍にいてくれるならできるかもしれない」
ゼッシュ様は顔を上げて、ポメラの手を強く握るとそう言った。
元気になったゼッシュ様と一緒に、問題の花の所に案内してもらうと、たくさんのピンク色の花が茶色くなってぐったりとしていた。こんな状態じゃ人を呼べないわね。この状態の花とポメラが並んだら、皆、ポメラに釘付けになってしまうわ。
「ゼッシュ様、よろしくお願いいたします!」
「任せてくれ」
庭園の人に頼まれたゼッシュ様は自信満々の笑みを浮かべて頷いた。アビーができるんだもの。ゼッシュ様にできないわけがないわ。だって、ゼッシュ様のほうがアビーよりも優れているんだもの。
そう思っていたのに、どれだけ長い時間頑張っても、ゼッシュ様は花を癒やすことはできなかった。
それって、庭園に行くこと同じよね! しかも普通なら入れない所に行くんだもの。ポメラはやっぱり特別なんだわ。
庭園に向かう馬車の中でのゼッシュ様は落ち込んでいるみたいに元気がない。どうして、ポメラと一緒にいるのに暗い顔をしているの? ポメラと一緒にいるだけで幸せでしょう?
「ゼッシュ様、何か嫌なことでもあったのですか?」
「……いや。そういうわけではないんだけど」
「じゃあ、どうしてそんなに暗い顔をしているんですかぁ? ちゃっちゃっとお花を元気にさせて、貸し切り状態の庭園をゆっくり散歩しましょうよ」
「そ、そうだと良いんだけど上手くいきそうになくてさ。不安で仕方がないんだ」
「どういうことですか? ゼッシュ様はアビーにできることができないってことですか?」
こてんと首を傾げて尋ねると、ゼッシュ様は泣きそうな顔になった。
アビーに断られた時には、やっぱりアビーが嘘をついていたのだと思った。そんな時、ゼッシュ様からのお願いは無視して、アビーは違う国の植物を癒やし行ったと聞いた。アビーは無事に癒やしただけでなく、その植物は病気にかかる前よりも元気になったんだって。
アビーってまあまあすごかったのね。そのことに気づけなかったポメラも駄目ね。反省しなくちゃいけないけれど、今は弱弱しくなっているゼッシュ様をどうにかしなくっちゃ!
「アビーにできることがゼッシュ様にできないなんてことはありませんよ。自信を持ってください!」
「だ、だけど、家でやってみたけど上手くいかなかったんだ。もし、できないと分かれば皆に笑いものにされてしまう」
「それは必死さが足りないからじゃないですか? 人の傷を癒やす時は早く治さなきゃって思いながらやっていると思うんです!」
「それはそうかもしれないけど、植物相手に早く治さないとなんて思えないよ」
「そう思うようにしないと、ゼッシュ様は昔のアビーみたいに使えない子だと言われるようになっちゃいますよ!」
ゼッシュ様にとって、ポメラが言ったことは一番恐れていることだったみたい。表情が引きつったあとはがっくりと項垂れてしまった。どうして、そんなに自信がないのよ。それじゃあ困るわ。ポメラの恋人はいつも自信満々の素敵な人でいてもらわなくちゃ。
「ゼッシュ様、大丈夫ですよ! ポメラを信じてください!」
「そ、そうだな。それにポメラが傍にいてくれるならできるかもしれない」
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「ゼッシュ様、よろしくお願いいたします!」
「任せてくれ」
庭園の人に頼まれたゼッシュ様は自信満々の笑みを浮かべて頷いた。アビーができるんだもの。ゼッシュ様にできないわけがないわ。だって、ゼッシュ様のほうがアビーよりも優れているんだもの。
そう思っていたのに、どれだけ長い時間頑張っても、ゼッシュ様は花を癒やすことはできなかった。
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