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13.5 気が多い令嬢の胸の内
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※ 新年からイラッとしたくない方は読み飛ばしくださいませ。「バーカ」といった感じで流せる方はどうぞ!
サーキス殿下がすぐ近くの宿に泊まっていると聞いたので、会いに行こうとしたらお父様に止められた。
「宿にはアビゲイル様も泊まっているんだ。行ってはいけない。どうしたらわかってくれるんだ」
「じゃあ、サーキス殿下だけでもうちに泊まるようにしてください」
「王太子殿下にこんな狭苦しい家で寝泊まりしてもらうわけにはいかないんだ」
お父様は困った顔になって言った。
そりゃあ、ポメラの家は小さいけれど、王子様一人くらい泊められるはず。
「その分、頑張ってポメラがおもてなししますから! お願いです! 連れてきてください!」
「そうよ、あなた。私たちのポメラは人形のように可愛いでしょう? サーキス殿下だってポメラのことを知れば、絶対に好きになると思うわ」
お母様は笑顔でポメラを抱きしめて言った。
ポメラにとってお母様は一番の理解者だ。お父様はポメラのことを可愛がってくれているけれど、慎重すぎるところがあるのよね。
ポメラたちに言われたお父様は渋々といった様子で頷いて出かけていくと、夕方には帰って来た。
「おかえりなさい、お父様! サーキス殿下はどちらに?」
「ただいま。よく聞きなさい、ポメラ。サーキス殿下はお前に接待されたくないそうだ」
「は、はあ? どういうことですか? もしかして嫌だと言われて引き下がっちゃったんですか!? 照れ隠しかもしれないのに!」
「当たり前だろう。照れ隠しをしているようにも見えなかったからな」
「し、信じられない!」
ポメラはお父様を責める。
「お父様! せっかくのチャンスなんですよ! サーキス殿下がポメラを好きになってくれたら、ブライトン子爵家は安泰なんです!」
「ポメラ。私はお前のことをとても可愛いと思っているし、自慢の娘でもある。だが、人には合う合わないというものがあるんだ。サーキス殿下はお前とは合わない御方なんだよ」
「なんですって!?」
怒りが抑えられなくて、お父様に大きな声で聞き返した時、ノッカーの音がして、誰かが訪ねてきたことがわかった。
「何だ? 今日は誰とも約束していないんだが」
お父様が訝しげな顔をして、扉のほうに振り返る。すると、扉の向こうから見張りの男性の声が聞こえてきた。
「ゼッシュ様がいらっしゃっています」
「ゼッシュ様? ポメラは別に約束していないんだけど」
会いに来てほしい時には来ないくせに、どうでも良い時には来るのね。ゼッシュ様が相手なら、お父様は扉を開ける許可を出すしかない。
「中に入ってもらえ」
お父様がそう言うと、ゆっくりと扉が開き、ゼッシュ様の姿が見えた。
「ああ、ポメラ! 出迎えてくれたんだね。しかも、ブライトン子爵まで!」
「ようこそいらっしゃいました、ゼッシュ様」
お父様が頭を下げ、ポメラが口を開こうとした時、家の奥からお母様の声が聞こえた。
「まあまあ、サーキス殿下! ポメラに会いに来てくださったのですね!」
お母様はサーキス殿下が家に来ると思い込んでいた。だから、そんなことを言いながらエントランスホールに現れ、ゼッシュ様を見て口を覆った。
「サーキス殿下がポメラに会いに来ただと?」
怒っているゼッシュ様を見たお父様は「最悪だ」と言って頭を抱え、失言したお母様はゼッシュ様を見て顔を真っ青にした。
あーもう!
本当に何をやってくれているのよ!
サーキス殿下が来てくれなかったことには苛立つけれど、ここにいなくて助かったわ。神様はポメラの味方をしてくれたのね!
ポメラはため息を吐いてから、ゼッシュ様の機嫌を取ることにする。
「ゼッシュ様、誤解ですぅ。今日は家族でサーキス殿下をおもてなしするつもりだったんですぅ」
「か、家族でだと!? 恋人の僕にはそんなことをしてくれたことはないのに!?」
ゼッシュ様はそう叫んで、ポメラを睨みつけた。
サーキス殿下がすぐ近くの宿に泊まっていると聞いたので、会いに行こうとしたらお父様に止められた。
「宿にはアビゲイル様も泊まっているんだ。行ってはいけない。どうしたらわかってくれるんだ」
「じゃあ、サーキス殿下だけでもうちに泊まるようにしてください」
「王太子殿下にこんな狭苦しい家で寝泊まりしてもらうわけにはいかないんだ」
お父様は困った顔になって言った。
そりゃあ、ポメラの家は小さいけれど、王子様一人くらい泊められるはず。
「その分、頑張ってポメラがおもてなししますから! お願いです! 連れてきてください!」
「そうよ、あなた。私たちのポメラは人形のように可愛いでしょう? サーキス殿下だってポメラのことを知れば、絶対に好きになると思うわ」
お母様は笑顔でポメラを抱きしめて言った。
ポメラにとってお母様は一番の理解者だ。お父様はポメラのことを可愛がってくれているけれど、慎重すぎるところがあるのよね。
ポメラたちに言われたお父様は渋々といった様子で頷いて出かけていくと、夕方には帰って来た。
「おかえりなさい、お父様! サーキス殿下はどちらに?」
「ただいま。よく聞きなさい、ポメラ。サーキス殿下はお前に接待されたくないそうだ」
「は、はあ? どういうことですか? もしかして嫌だと言われて引き下がっちゃったんですか!? 照れ隠しかもしれないのに!」
「当たり前だろう。照れ隠しをしているようにも見えなかったからな」
「し、信じられない!」
ポメラはお父様を責める。
「お父様! せっかくのチャンスなんですよ! サーキス殿下がポメラを好きになってくれたら、ブライトン子爵家は安泰なんです!」
「ポメラ。私はお前のことをとても可愛いと思っているし、自慢の娘でもある。だが、人には合う合わないというものがあるんだ。サーキス殿下はお前とは合わない御方なんだよ」
「なんですって!?」
怒りが抑えられなくて、お父様に大きな声で聞き返した時、ノッカーの音がして、誰かが訪ねてきたことがわかった。
「何だ? 今日は誰とも約束していないんだが」
お父様が訝しげな顔をして、扉のほうに振り返る。すると、扉の向こうから見張りの男性の声が聞こえてきた。
「ゼッシュ様がいらっしゃっています」
「ゼッシュ様? ポメラは別に約束していないんだけど」
会いに来てほしい時には来ないくせに、どうでも良い時には来るのね。ゼッシュ様が相手なら、お父様は扉を開ける許可を出すしかない。
「中に入ってもらえ」
お父様がそう言うと、ゆっくりと扉が開き、ゼッシュ様の姿が見えた。
「ああ、ポメラ! 出迎えてくれたんだね。しかも、ブライトン子爵まで!」
「ようこそいらっしゃいました、ゼッシュ様」
お父様が頭を下げ、ポメラが口を開こうとした時、家の奥からお母様の声が聞こえた。
「まあまあ、サーキス殿下! ポメラに会いに来てくださったのですね!」
お母様はサーキス殿下が家に来ると思い込んでいた。だから、そんなことを言いながらエントランスホールに現れ、ゼッシュ様を見て口を覆った。
「サーキス殿下がポメラに会いに来ただと?」
怒っているゼッシュ様を見たお父様は「最悪だ」と言って頭を抱え、失言したお母様はゼッシュ様を見て顔を真っ青にした。
あーもう!
本当に何をやってくれているのよ!
サーキス殿下が来てくれなかったことには苛立つけれど、ここにいなくて助かったわ。神様はポメラの味方をしてくれたのね!
ポメラはため息を吐いてから、ゼッシュ様の機嫌を取ることにする。
「ゼッシュ様、誤解ですぅ。今日は家族でサーキス殿下をおもてなしするつもりだったんですぅ」
「か、家族でだと!? 恋人の僕にはそんなことをしてくれたことはないのに!?」
ゼッシュ様はそう叫んで、ポメラを睨みつけた。
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