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27 侯爵の理由 ①
「どうして、俺はあんなにシドに嫌われているんだ!?」
ルーミーにシドを任せ、私とセオドア様は、ジンシ侯爵とこれからのことについて話をすることにしたのだが、彼はシドに拒まれたことでかなりの精神的なダメージを負っており、話が進みそうになかった。
「おもちゃをあげたら、許してくれたんじゃなかったのか!?」
「それはそれです」
呆れた感情を表に出さないように答えると、セオドア様が捕捉する。
「君はロロミナだけを追い出したつもりだろうが、シドは自分も追い出されたと思ってるんだ。そんな人を簡単に信じられないだろう」
「追い出したわけではありません! シドが彼女といたいと言ったから行かせたんです!」
「シドをいくつだと思ってるんだ。子供にそんなことが理解できるわけない。シドはただ、母と一緒にいたいから素直に答えただけなんだよ」
「ちゃんと確認したんです! 俺を選ぶのか、ロロミナを選ぶのかって!」
ジンシ侯爵は頭を抱えたまま、セオドア様に叫んだ。
「確認したのかもしれないが、シドはそれを忘れている。もしくは、ロロミナから君に捨てられたと何度も言われたんだろう」
「そ、そりゃあ、俺は彼と血は繋がっていませんよ。だけど、俺の子として認知しましたし、可愛がっていたつもりなんです!」
この時、ふと心にひっかかるものを感じた。それが何かわかると、シンジ侯爵に対する猜疑心が生まれた。
「今のシドは特に傷つきやすくなっている。君の所に行ったら暴力をふるわれると思って怯えているんだ。アーバネットが邪魔なら周りの兵士に頼んで退かせれば良かったのに」
「ですが、でん……でで、ですが」
殿下と言おうとして、私がいることに気がついてやめたらしい。
「もう話はお聞きしました」
「彼女には話したよ」
私とセオドア様が同時に言うと、ジンシ侯爵は安堵の表情を見せて話を続ける。
「感情のコントロールができていなかったことは認めます。ですが、あれくらいのことは普通の貴族だってみんなやっていますし、シドが見ているとは思っていなかったんです」
「宿屋の前だよ? 誰に見られているかわからないんだから慎重に行動すべきだ」
「……申し訳ございませんでした」
セオドア様に注意されたジンシ侯爵は、素直に頭を下げた。
「僕に謝らなくていい」
「……あの、セオドア殿下、どうしてアーバネットをさっさと追い払わないんですか?」
「彼がいたらロロミナが来ないと思ったからだよ。他の客の迷惑になるから、裏口に移動させようか考えていたはいたけどね」
アーバネット様を虫除けみたいに、ロロミナ様除けにしようとしたのね。
そういえば、ロロミナ様はアーバネット様を捨てたみたいだけど、今はどうしているのかしら。
「ロロミナ様はアリドを連れて、セオドア様に会いに来るでしょうか」
「その可能性が高いかなって思ったんだ。当時は興味がなくて、調べてもらった資料に目を通してなかったんだけど、ロロミナの学生時代の行動などを調べた報告書を最近になって確認したんだ。その辺の話は、ジンシ侯爵が帰ってからするよ」
セオドア様は私が頷いたのを確認すると、ジンシ侯爵に視線を戻す。
「シドの話なんだけど、君はどうしても彼を引き取りたいんだよね?」
「はい。大事にしますのでお願いします!」
「ルファラはシドの件で彼に言いたいことや、聞きたいことはある?」
「言いたいこともたくさんあるのですが、まずは、ジンシ侯爵にお聞きしたいです」
「どうぞ」
向かい側に座っていたジンシ侯爵が促してきたので、私は居住まいを正して尋ねる。
「シドを引き取りたい理由をお聞きしたいのです」
「どういうことだ?」
「シドを引き取ろうとしておられるのは、私たちと同じようにシドを純粋に守りたいだけなのですか? それとも、ロロミナ様の子供だから、シドが可愛いくて引き取ろうとしておられるのですか?」
失礼な質問だとはわかっているが、この答えによっては、ジンシ侯爵にシドを渡すことはできない。
眉尻を下げたジンシ侯爵が口を開くのを、私は何も言わずに待った。
ルーミーにシドを任せ、私とセオドア様は、ジンシ侯爵とこれからのことについて話をすることにしたのだが、彼はシドに拒まれたことでかなりの精神的なダメージを負っており、話が進みそうになかった。
「おもちゃをあげたら、許してくれたんじゃなかったのか!?」
「それはそれです」
呆れた感情を表に出さないように答えると、セオドア様が捕捉する。
「君はロロミナだけを追い出したつもりだろうが、シドは自分も追い出されたと思ってるんだ。そんな人を簡単に信じられないだろう」
「追い出したわけではありません! シドが彼女といたいと言ったから行かせたんです!」
「シドをいくつだと思ってるんだ。子供にそんなことが理解できるわけない。シドはただ、母と一緒にいたいから素直に答えただけなんだよ」
「ちゃんと確認したんです! 俺を選ぶのか、ロロミナを選ぶのかって!」
ジンシ侯爵は頭を抱えたまま、セオドア様に叫んだ。
「確認したのかもしれないが、シドはそれを忘れている。もしくは、ロロミナから君に捨てられたと何度も言われたんだろう」
「そ、そりゃあ、俺は彼と血は繋がっていませんよ。だけど、俺の子として認知しましたし、可愛がっていたつもりなんです!」
この時、ふと心にひっかかるものを感じた。それが何かわかると、シンジ侯爵に対する猜疑心が生まれた。
「今のシドは特に傷つきやすくなっている。君の所に行ったら暴力をふるわれると思って怯えているんだ。アーバネットが邪魔なら周りの兵士に頼んで退かせれば良かったのに」
「ですが、でん……でで、ですが」
殿下と言おうとして、私がいることに気がついてやめたらしい。
「もう話はお聞きしました」
「彼女には話したよ」
私とセオドア様が同時に言うと、ジンシ侯爵は安堵の表情を見せて話を続ける。
「感情のコントロールができていなかったことは認めます。ですが、あれくらいのことは普通の貴族だってみんなやっていますし、シドが見ているとは思っていなかったんです」
「宿屋の前だよ? 誰に見られているかわからないんだから慎重に行動すべきだ」
「……申し訳ございませんでした」
セオドア様に注意されたジンシ侯爵は、素直に頭を下げた。
「僕に謝らなくていい」
「……あの、セオドア殿下、どうしてアーバネットをさっさと追い払わないんですか?」
「彼がいたらロロミナが来ないと思ったからだよ。他の客の迷惑になるから、裏口に移動させようか考えていたはいたけどね」
アーバネット様を虫除けみたいに、ロロミナ様除けにしようとしたのね。
そういえば、ロロミナ様はアーバネット様を捨てたみたいだけど、今はどうしているのかしら。
「ロロミナ様はアリドを連れて、セオドア様に会いに来るでしょうか」
「その可能性が高いかなって思ったんだ。当時は興味がなくて、調べてもらった資料に目を通してなかったんだけど、ロロミナの学生時代の行動などを調べた報告書を最近になって確認したんだ。その辺の話は、ジンシ侯爵が帰ってからするよ」
セオドア様は私が頷いたのを確認すると、ジンシ侯爵に視線を戻す。
「シドの話なんだけど、君はどうしても彼を引き取りたいんだよね?」
「はい。大事にしますのでお願いします!」
「ルファラはシドの件で彼に言いたいことや、聞きたいことはある?」
「言いたいこともたくさんあるのですが、まずは、ジンシ侯爵にお聞きしたいです」
「どうぞ」
向かい側に座っていたジンシ侯爵が促してきたので、私は居住まいを正して尋ねる。
「シドを引き取りたい理由をお聞きしたいのです」
「どういうことだ?」
「シドを引き取ろうとしておられるのは、私たちと同じようにシドを純粋に守りたいだけなのですか? それとも、ロロミナ様の子供だから、シドが可愛いくて引き取ろうとしておられるのですか?」
失礼な質問だとはわかっているが、この答えによっては、ジンシ侯爵にシドを渡すことはできない。
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