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28 侯爵の理由 ②
すぐに答えが返せないということは、やはり、ロロミナ様の子供だからなのか。シドを預かっていれば、ロロミナ様と接触できると思っているのならば、大人の事情にシドを巻き込むのは違う気がした。
「正直に話してくれ」
セオドア様も大事なことだと思ってくれたようで、ジンシ侯爵を睨んだ。暫しの沈黙のあと、ジンシ侯爵は口を開く。
「ロロミナとの関係を切りたくないという気持ちが、一つもないかと言われれば嘘になります。ですが、シドを引き取りたい理由はそれだけではありません」
ジンシ侯爵はセオドア様に答えたあと、私に目を向けて話す。
「あなただって他人だろう。それなのに、どうしてシドをそこまで気にするんだ」
「シドが私に懐いてくれているからかもしれませんが、彼と一緒にいると、可愛くて守ってあげたいと思う気持ちが湧いてくるのです」
今まで子供が嫌いでもないが、好きでもなかった。そんな私がシドのことを可愛いと思うのだから、シドは年齢よりもしっかりとした聞き分けの良い子なのだろう。
実際に暮らしてみれば、喧嘩する日も来るでしょう。でも、シドとならそれを乗り越えて家族になれると思うのは、私の勝手で都合の良い思い込みだろうか。
「ジンシ侯爵、君の気持ちがはっきりしていないなら、僕はルファラとシドが一緒に住んだほうが良いと思う」
「俺もどうしたら良いのかわからないんです。シドを可愛いと思うのも事実ですが、心の何処かでロロミナとの復縁を願っているんじゃないかと思うと、はっきりと答えられないんです」
「ロロミナ様が迎えに来なかったら、シドに当たる可能性があるのですか?」
セオドア様に答えたジンシ侯爵に尋ねると、彼は勢いよく首を横に振る。
「そんなことはしない! するつもりはない! だけど、あなたも実感したはずだ。ロロミナは人を狂わせる」
「私には彼女について不快感しかありません。あなたはしばらくの間、ロロミナ様に会っていないはずです。それなのにそう思うのですか?」
「あなたは同性だからわからないんだ」
「僕は異性だけど、ロロミナの魅力がわからない」
はっきりと否定されたジンシ侯爵は間抜けな顔でセオドア様を見つめた。笑いそうになるのを堪え、微笑んで誤魔化す。
「一部の方を狂わせてしまうようですね」
「そ、そうなんだ。俺だけじゃない」
「では、あなたにシドを幸せにできるとは思えません」
「偉そうに言うなよ」
「それは失礼いたしました。ですが、迷うくらいであれば、私はあなたよりもシドを大切にできると思います」
自分の欲望のためにシドを道具のように使うかもしれない人に、シドを渡したくない。かといって渡さなければ、親権があるジンシ侯爵から訴えられてしまえば終わりだ。
セオドア様が私と同じ意見なので大丈夫かと思うが、誘拐犯にされる可能性だってある。
私が捕まってもシドを悲しませる。これ以上、あの子を悲しませたくない。お願いだから、ジンシ侯爵には人としての心を見せてほしい。
「……わかった。確かめたいことがあるから、一度、ロロミナと会ってみてもいいか?」
「行方がわかるんですか?」
「セオドア殿下、わかりますよね?」
ジンシ侯爵に尋ねられた、セオドア様は頷く。
「監視はつけているからね。ルファラ、その件についても話をしよう」
「わかりました」
結局、この日はシドについての話は決着がつかず、ジンシ侯爵は「近い内にまた来る」と言って去っていった。
アーバネット様はその頃には裏口に移動させられており、騒いで他の人の迷惑にならないように、道の端に座らされていた。
ジンシ侯爵が帰ったあとすぐは、シドがかまってほしそうだったので、一緒に遊び、お昼寝の時間になると、ベッドに横にならせて眠らせた。
そして、シドが眠っている間に、セオドア様からロロミナ様の話を聞くことにしたのだった。
「正直に話してくれ」
セオドア様も大事なことだと思ってくれたようで、ジンシ侯爵を睨んだ。暫しの沈黙のあと、ジンシ侯爵は口を開く。
「ロロミナとの関係を切りたくないという気持ちが、一つもないかと言われれば嘘になります。ですが、シドを引き取りたい理由はそれだけではありません」
ジンシ侯爵はセオドア様に答えたあと、私に目を向けて話す。
「あなただって他人だろう。それなのに、どうしてシドをそこまで気にするんだ」
「シドが私に懐いてくれているからかもしれませんが、彼と一緒にいると、可愛くて守ってあげたいと思う気持ちが湧いてくるのです」
今まで子供が嫌いでもないが、好きでもなかった。そんな私がシドのことを可愛いと思うのだから、シドは年齢よりもしっかりとした聞き分けの良い子なのだろう。
実際に暮らしてみれば、喧嘩する日も来るでしょう。でも、シドとならそれを乗り越えて家族になれると思うのは、私の勝手で都合の良い思い込みだろうか。
「ジンシ侯爵、君の気持ちがはっきりしていないなら、僕はルファラとシドが一緒に住んだほうが良いと思う」
「俺もどうしたら良いのかわからないんです。シドを可愛いと思うのも事実ですが、心の何処かでロロミナとの復縁を願っているんじゃないかと思うと、はっきりと答えられないんです」
「ロロミナ様が迎えに来なかったら、シドに当たる可能性があるのですか?」
セオドア様に答えたジンシ侯爵に尋ねると、彼は勢いよく首を横に振る。
「そんなことはしない! するつもりはない! だけど、あなたも実感したはずだ。ロロミナは人を狂わせる」
「私には彼女について不快感しかありません。あなたはしばらくの間、ロロミナ様に会っていないはずです。それなのにそう思うのですか?」
「あなたは同性だからわからないんだ」
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「一部の方を狂わせてしまうようですね」
「そ、そうなんだ。俺だけじゃない」
「では、あなたにシドを幸せにできるとは思えません」
「偉そうに言うなよ」
「それは失礼いたしました。ですが、迷うくらいであれば、私はあなたよりもシドを大切にできると思います」
自分の欲望のためにシドを道具のように使うかもしれない人に、シドを渡したくない。かといって渡さなければ、親権があるジンシ侯爵から訴えられてしまえば終わりだ。
セオドア様が私と同じ意見なので大丈夫かと思うが、誘拐犯にされる可能性だってある。
私が捕まってもシドを悲しませる。これ以上、あの子を悲しませたくない。お願いだから、ジンシ侯爵には人としての心を見せてほしい。
「……わかった。確かめたいことがあるから、一度、ロロミナと会ってみてもいいか?」
「行方がわかるんですか?」
「セオドア殿下、わかりますよね?」
ジンシ侯爵に尋ねられた、セオドア様は頷く。
「監視はつけているからね。ルファラ、その件についても話をしよう」
「わかりました」
結局、この日はシドについての話は決着がつかず、ジンシ侯爵は「近い内にまた来る」と言って去っていった。
アーバネット様はその頃には裏口に移動させられており、騒いで他の人の迷惑にならないように、道の端に座らされていた。
ジンシ侯爵が帰ったあとすぐは、シドがかまってほしそうだったので、一緒に遊び、お昼寝の時間になると、ベッドに横にならせて眠らせた。
そして、シドが眠っている間に、セオドア様からロロミナ様の話を聞くことにしたのだった。
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