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41 ほしーの令嬢の絶望
馬車の中で種を使って、予言をしようとした子爵だったが、うまくいくはずがなかった。
「これは詐欺だ!」
そう叫び、連絡用の小窓から御者にヨテルカ侯爵邸に戻るように命令したが「私は当主様から、あなた方を宿屋までお連れするという指示しか受けておりません」と突っぱねられた。
「私の言うことが聞けないのか! 暴力をふるわれたくないのなら……」
子爵は最後まで言葉を紡げなかった。
馬車を囲んでいる騎士たちに、窓の向こうから睨まれたからだ。
脅迫しても無断などころか、自分の命の危険を感じ、子爵は身を縮こまらせて黙り込んだ。
「一体、どういうことなんですか!?」
「私たちのせいではないわ! 悪いのはレナリナじゃないの! 大体、あなただって大したことはしていないくせに、おこぼれだけもらおうなんて厚かましいのよ!」
子爵の情けない姿を見た男爵夫人は、パニックになって子爵を責めた。子爵夫人が応戦し、馬車の中はとても騒がしい。
「そんなの少し考えればわかることじゃないか。子爵にできているなら、もっと前からできていたはずだ。こんな馬鹿なことでレナリナを失うなんて……っ」
ムーディは男爵夫人とシーノの間で嘆き続けている。
シーノは自分のことで精一杯で他の人を気にする余裕などない。
リヴェンを自分のものにすれば何とかなると思い込んでいたシーノだったが、リヴェンが彼女になびくわけがない。
現実を知ったシーノは爪を噛み、自分の父になんと言い訳しようか。そのことだけで、頭が一杯だった。
三十分程で馬車は目的地に着いた。ムーディたちと、彼らが持参していた荷物を宿屋の前に降ろし、馬車や騎士たちはさっさと帰っていった。
服は乾き始めていたものの、雨に打たれたことや精神的なショックもあり、一行の表情は暗い。
重い足取りで、フロントに向かった時だった。
カウンター近くにあるロビーにあるソファに座っていた人物が勢いよく立ち上がる。
ムーディたちの視線が一斉にそちらに注がれる。
「え……あ、そんなっ」
情けない声を出したのはシーノだった。
中肉中背の人物は背を向けていて顔は見えない。
しかし、シーノには後ろ姿を見ただけで、誰だかわかった。
「ど、どうしてお父様が……」
リヴェンから連絡を受けていたシーノの父が、先回りして待っていたのだった。
「これは詐欺だ!」
そう叫び、連絡用の小窓から御者にヨテルカ侯爵邸に戻るように命令したが「私は当主様から、あなた方を宿屋までお連れするという指示しか受けておりません」と突っぱねられた。
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子爵は最後まで言葉を紡げなかった。
馬車を囲んでいる騎士たちに、窓の向こうから睨まれたからだ。
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「そんなの少し考えればわかることじゃないか。子爵にできているなら、もっと前からできていたはずだ。こんな馬鹿なことでレナリナを失うなんて……っ」
ムーディは男爵夫人とシーノの間で嘆き続けている。
シーノは自分のことで精一杯で他の人を気にする余裕などない。
リヴェンを自分のものにすれば何とかなると思い込んでいたシーノだったが、リヴェンが彼女になびくわけがない。
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