【完結】愛しているなら忘れてください

風見ゆうみ

文字の大きさ
48 / 49

47 置き去りにしたのはあなた

 馬車と早馬なら、到着時刻にかなりの差がつく。
 監視人は早馬でリヴェンもとに向かい、シーノたちのことを伝えた。
 ムーディが来る可能性が高い日だということで、休暇をとっていたリヴェンは、すぐに侯爵邸からレナリナがいる公園に向かった。
 ムーディたちがやって来るまで、およそ二時間ほどかかる。

 休憩時間にその話を聞いたレナリナは、勝手にやって来るのだから、営業終了まで待たせることにした。

「話はすぐに終わらせるつもりですけど、他のお客様を順番待ち以外の理由でお待たせするわけにはいきません。もし、ムーディさんが列に並ぶようでしたら、営業終了まで待つように伝えてもらえますか」
「それは構わないが、本当に話を聞くのか?」
 
 心配そうに自分を見つめるリヴェンに微笑みかける。

「話を聞いて、それがどんな話であっても彼と復縁することはありえません。ダンやツルちゃんたちの手を借りて、彼にははっきりと気持ちを伝えるつもりです」
「そうか」

 どこか不安そうなリヴェンを見つめ、レナリナは考える。

(もしかして、心配してくれているの?)

 レナリナにとって、ムーディと話をすることは、面倒なものでしかない。ただ、リヴェンはまだレナリナにムーディへの気持ちが残っているのではと不安になっていた。

 もしかしたら……と思いつつ、まさかリヴェンが私を好きになるわけがない。

 自惚れてはいけないと考えを否定し、レナリナは休憩を終えて仕事に戻った。

 それから約5時間後に、レナリナはムーディと対峙していた。

 太陽が傾き始め、公園内はオレンジ色の光に包まれている。レナリナとムーディの会話が聞き取れるくらいの位置にベンチがあり、シーノはそこに座っている。
 彼女が連れてきた騎士たちは、彼女の近くに立ち警戒態勢をとっていた。

 ニヤニヤ笑うシーノよりも、レナリナたちに近い位置に、リヴェンは護衛騎士と共に立ち、様子を見守っていた。

 レナリナの水色のワンピースの裾と、下ろした髪が風に揺れる。太陽が落ち始め、空気は少しずつ冷えていく。
 寒気がして、ムーディは体を震わせた。

 ただ、彼の場合は風が冷たくて震えたのではない。

 リヴェンからの冷たい視線、ダンとツルちゃんたちの圧力に圧されていた。
 萎縮しているムーディに、レナリナが話しかける。

「話って一体何なの?」

 身分に差がなくなったため、レナリナは敬語は使わずに尋ねた。

「なあ、レナリナ。僕は君のことを一番理解している。どうしたら素直になってくれる? 本当は僕と一緒になりたいんだろう?」

 レナリナはムーディに苛立ちと、少しの恐怖を覚えた。
 どうすれば、ここまで都合の悪い話はスルーし、理想を現実と思い込むことができるのか、全く理解できなかった。

「そんな気持ちは全くありません」
「ヨテルカ侯爵に言わされているのか?」
「そんなわけがないでしょう。話はそれだけですか?」
「レナリナ! 話を聞いてくれ! 僕は本気で君を愛していて、結婚するつもりでいたんだ! シーノ……様が邪魔をしなければ今頃は!」
「あのね、ムーディさん。たとえシーノ様に邪魔をされていたとしても、あなたが相手にしなければ良かっただけ」
「……え?」

 ぽかんと口を開けて自分を見つめるムーディに質問を投げかける。

「シーノ様だけのせいにしようとしているけれど、私を置き去りにしたのはあなた。一人ぼっちで異国に置き去りにするような人物を、私が好きでい続けると思うの?」

 鋭い眼差しを向けられたムーディは、口をモゴモゴと動かしながら、視線を逸らした。


感想 42

あなたにおすすめの小説

「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と私を嫌う夫に言われましたので、素直に従った結果……

ぽんた
恋愛
「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」 この日、リン・オリヴィエは夫であるバロワン王国の第一王子マリユス・ノディエに告げられた。 選択肢のないリンは、「ひきこもり王子」と名高いクロード・ノディエのいる辺境の地へ向かう。 そこで彼女が会ったのは、噂の「ひきこもり王子」とはまったく違う気性が荒く傲慢な将軍だった。 クロードは、幼少の頃から自分や弟を守る為に「ひきこもり王子」を演じていたのである。その彼は、以前リンの姉ディアーヌに手痛い目にあったことがあった。その為、人間不信、とくに女性を敵視している。彼は、ディアーヌの妹であるリンを憎み、侍女扱いする。 しかし、あることがきっかけで二人の距離が急激に狭まる。が、それも束の間、王都が隣国のスパイの工作により、壊滅状態になっているいう報が入る。しかも、そのスパイの正体は、リンの知る人だった。 ※全三十九話。ハッピーエンドっぽく完結します。ゆるゆる設定です。ご容赦ください。

〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。

藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。 学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。 そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。 それなら、婚約を解消いたしましょう。 そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!

夏目みや
恋愛
「どうせ、形式だけの結婚だ。だから俺に期待するな。あんたは好きに生きればいい」 北部に嫁いできたシャルロットは夫となるイザークに、初夜で冷たく拒絶されてしまう。 南部の富豪、セバスティア侯爵家シャルロットと北部のイザーク・カロン侯爵。 北部と南部を結ぶ要となるこの結婚は、すなわち王命。 王命の重さ、理解してらっしゃいますか? ――まあ、いいか。そっちがその気なら、好きにやらせていただきます! 領地改革始めましょう。南部から持ってきた食料を市井にふるまい、お金だってジャンジャン使って景気よく! 好き勝手に過ごしていると、なぜか近づいてくる旦那様。 好きにしろと言ったのはそっちでしょう? なのに今さら距離を詰めてくるのはどうして? この結婚の本当の目的を、彼はまだ知らない――。

それは私の仕事ではありません

mios
恋愛
手伝ってほしい?嫌ですけど。自分の仕事ぐらい自分でしてください。

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから

越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。 新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。 一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?

二人の妻に愛されていたはずだった

ぽんちゃん
恋愛
 傾いていた伯爵家を復興すべく尽力するジェフリーには、第一夫人のアナスタシアと第二夫人のクララ。そして、クララとの愛の結晶であるジェイクと共に幸せな日々を過ごしていた。  二人の妻に愛され、クララに似た可愛い跡継ぎに囲まれて、幸せの絶頂にいたジェフリー。  アナスタシアとの結婚記念日に会いにいくのだが、離縁が成立した書類が残されていた。    アナスタシアのことは愛しているし、もちろん彼女も自分を愛していたはずだ。  何かの間違いだと調べるうちに、真実に辿り着く。  全二十八話。  十六話あたりまで苦しい内容ですが、堪えて頂けたら幸いです(><)