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10 お飾り妻と愛人
黙り込んだジェラスが口を開くのを待った。
しばらくして、絞り出すように出したジェラスの言葉は、ミレイラにとって残酷なものだった。
「じゃあ、誰があんなことをしたって言うんだ? ゼッシュだって子供だ。あんな力はない。だから、ミレイラではないと言い切れない」
「……うっうっ」
ミレイラの目から大粒の涙がこぼれた。
「ミレイラ様、泣かないでくださいませ。私の説明が悪かったのです。申し訳ございません」
フェルリアは慌ててミレイラを慰め、ジェラスを睨みつける。
「ゼッシュ様はミサファー様が喜ぶから、ぬいぐるみをぐちゃぐちゃにしたのだと、自分でおっしゃいました。それなのに、違うと訴えるミレイラ様を疑うのですか!」
「……あ」
元々はゼッシュが誰に嘘を教えられたのかという話をしていたことを思い出し、ジェラスはバツが悪そうな顔をして、ミレイラを見つめた。
「……もう、いいです」
ミレイラはぎゅうっとぬいぐるみを握りしめて続ける。
「おとうさまも、ゼッシュさまも、ミサファーさまもきらい。でていってください」
鼻をすすり、大粒の涙を流すミレイラをフェルリアは優しく抱きしめる。
「ミレイラ様、いっぱい泣きましょうね」
泣き疲れるまで泣けば、気持ちがスッキリすることもある。酷なことではあるが、ミレイラが父に対して過度な期待を持つことのないようにしてほしいと思った。
そうすれば、自分のように心が傷つく回数は少なくなる。
ジェラス自身が過ちに気づき、ミレイラを娘として愛することができればいいのかもしれないが、今の状況ではそんなことを望む気にもならなかった。
(ジェラス様にチャンスをあげることができるのは、ミレイラ様だけだわ)
「……ミサファー、ゼッシュ、話したいことがあるから、一緒に来てくれ」
「ジェラス様、子供の言うことを信じないでくださいね」
「ゼッシュが先日嘘をついたことは間違いない。子供の責任を取るのは親だ」
「あなただって親ではないですか!」
「親ではあるが、大して子育てをした覚えはない。ゼッシュが嘘つきに育ったのは、ミサファーに責任がある」
「なんですって?」
自分はまったく悪くないといった様子のジェラスは、ミレイラに話しかける。
「悪かった。ほしいものを買ってやるからメイドに言いなさい」
「……いりません」
ミレイラはぶるぶると首を横に振る。ジェラスは大きなため息を吐くと、ミレイラを睨みつけた。
「かんがえておきます」
ミレイラはそう答えて、フェルリアにしがみついた。
「旦那様、後ほど、私からもお話があります。それまでにミサファー様としっかりお話をしておいてくださいませ」
フェルリアはそう言ったあと「はやく出ていけ」と目で訴えた。気圧されたジェラスは何も言い返すことはなく、大人しく部屋を出ていく。
ミレイラに嫌いと言われてショックを受けているゼッシュの手を取り、ミサファーはフェルリアに話しかけた。
「形だけの奥様、私に勝ったなんて思わないでくださいね」
(ジェラス様の件で勝とうと思ったこともないけどね)
「ご心配なく。私に何をしてもあなたのことなど眼中にございません」
白い結婚であろうとも、フェルリアには公爵夫人という権力が生まれている。公爵の愛人であろうとも格上はフェルリアだ。
ミレイラに何かすることは黙っていられないが、自分に対しての嫌がらせは受けて立つつもりである。だから、わざと挑発的な言葉を使った。
余裕の笑みを浮かべたフェルリアを再度睨むと、ミサファーはゼッシュを引き連れて部屋から出ていった。
しばらくして、絞り出すように出したジェラスの言葉は、ミレイラにとって残酷なものだった。
「じゃあ、誰があんなことをしたって言うんだ? ゼッシュだって子供だ。あんな力はない。だから、ミレイラではないと言い切れない」
「……うっうっ」
ミレイラの目から大粒の涙がこぼれた。
「ミレイラ様、泣かないでくださいませ。私の説明が悪かったのです。申し訳ございません」
フェルリアは慌ててミレイラを慰め、ジェラスを睨みつける。
「ゼッシュ様はミサファー様が喜ぶから、ぬいぐるみをぐちゃぐちゃにしたのだと、自分でおっしゃいました。それなのに、違うと訴えるミレイラ様を疑うのですか!」
「……あ」
元々はゼッシュが誰に嘘を教えられたのかという話をしていたことを思い出し、ジェラスはバツが悪そうな顔をして、ミレイラを見つめた。
「……もう、いいです」
ミレイラはぎゅうっとぬいぐるみを握りしめて続ける。
「おとうさまも、ゼッシュさまも、ミサファーさまもきらい。でていってください」
鼻をすすり、大粒の涙を流すミレイラをフェルリアは優しく抱きしめる。
「ミレイラ様、いっぱい泣きましょうね」
泣き疲れるまで泣けば、気持ちがスッキリすることもある。酷なことではあるが、ミレイラが父に対して過度な期待を持つことのないようにしてほしいと思った。
そうすれば、自分のように心が傷つく回数は少なくなる。
ジェラス自身が過ちに気づき、ミレイラを娘として愛することができればいいのかもしれないが、今の状況ではそんなことを望む気にもならなかった。
(ジェラス様にチャンスをあげることができるのは、ミレイラ様だけだわ)
「……ミサファー、ゼッシュ、話したいことがあるから、一緒に来てくれ」
「ジェラス様、子供の言うことを信じないでくださいね」
「ゼッシュが先日嘘をついたことは間違いない。子供の責任を取るのは親だ」
「あなただって親ではないですか!」
「親ではあるが、大して子育てをした覚えはない。ゼッシュが嘘つきに育ったのは、ミサファーに責任がある」
「なんですって?」
自分はまったく悪くないといった様子のジェラスは、ミレイラに話しかける。
「悪かった。ほしいものを買ってやるからメイドに言いなさい」
「……いりません」
ミレイラはぶるぶると首を横に振る。ジェラスは大きなため息を吐くと、ミレイラを睨みつけた。
「かんがえておきます」
ミレイラはそう答えて、フェルリアにしがみついた。
「旦那様、後ほど、私からもお話があります。それまでにミサファー様としっかりお話をしておいてくださいませ」
フェルリアはそう言ったあと「はやく出ていけ」と目で訴えた。気圧されたジェラスは何も言い返すことはなく、大人しく部屋を出ていく。
ミレイラに嫌いと言われてショックを受けているゼッシュの手を取り、ミサファーはフェルリアに話しかけた。
「形だけの奥様、私に勝ったなんて思わないでくださいね」
(ジェラス様の件で勝とうと思ったこともないけどね)
「ご心配なく。私に何をしてもあなたのことなど眼中にございません」
白い結婚であろうとも、フェルリアには公爵夫人という権力が生まれている。公爵の愛人であろうとも格上はフェルリアだ。
ミレイラに何かすることは黙っていられないが、自分に対しての嫌がらせは受けて立つつもりである。だから、わざと挑発的な言葉を使った。
余裕の笑みを浮かべたフェルリアを再度睨むと、ミサファーはゼッシュを引き連れて部屋から出ていった。
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