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11 夫の言い訳 ①
その日の夜、フェルリアはジェラスに呼び出され、彼の自室に向かった。
初めて入ったジェラスの部屋は、フェルリアの部屋とは比べ物にならないほどに広かった。窓際に仕事机と一人用のソファ。キングサイズのベッドの近くには本棚が並んでいる。
部屋の隅には大きなおもちゃ箱が置かれており『ゼッシュ専用』などと書かれた貼り紙がされている。
(ミレイラ様のものがないのなら、わざわざ書かなくてもいいのに)
どうでもいいことに苛立ちながら、フェルリアが扉の前に立ってジェラスに話しかけた。
「日中の出来事についてのお話でしょうか」
「そうだ。君も話したいことがあると思ってな。とにかく座ってくれ」
奥にある暖炉の近くに二人掛けのソファが置かれており、そこに座るように促された。
ちょうどいい機会なので、言いたいことを言わせてもらおうと、フェルリアは一礼してソファに腰を下ろした。
改めて部屋を見回し、黒を基調としたジェラスの部屋はまるで、喪に服しているようにも思えた。
「ミレイラの件は申し訳なかった。話を聞いたら、ゼッシュが自分の非を認めたんで叱っておいた」
「ミレイラ様には謝罪されましたか?」
「謝りに行かせたが、会ってくれなかったそうだ」
フェルリアはジェラスが謝罪したか聞いたつもりだった。主語をつけなかった自分が悪いのだと反省し、改めて尋ねる。
「あなたはミレイラ様に謝罪されたのですか?」
「なぜ私が?」
眉をひそめるジェラスに、フェルリは聞き返す。
「本気でそう思っているのですか?」
「こんな時に冗談は言わない」
「あなたはミレイラ様の言葉を信じず、手をあげて叱ったのですよね?」
「仕方がないだろう! あれは妻の形見で大事なものだ。妻があの子にプレゼントしたから持たせているだけで、本当は自分の手で持っておきたいくらいなんだぞ! そんな大事なものを傷つけたんだ! 冷静でいられるはずがない!」
「ミレイラ様だって奥様の形見のようなものでしょう。それに形見は他にはないのですか?」
「……いや」
バツが悪そうな顔になったジェラスに、フェルリアは問いかける。
「どうしてそこまでミレイラ様を嫌うのですか」
「私から妻を奪ったからだと前に伝えただろう」
「奪ったという考えが理解できません。奥様が望んでミレイラ様を産んだわけではないのですか?」
「……そういうわけじゃない」
ジェラスは目を逸らし、右足を激しく揺すり始めた。
(イライラしているみたいね。今まで、自分よりも格下ばかりと話をしてきたから、自分の望み通りに進まないと納得いかないというところかしら)
ミレイラがため息を吐くと、ジェラスが言い訳をするように話し始める。
「ゼッシュが生まれたことを報告したら、自分も子供がほしいと言い出したんだ。私だって最初は止めた」
「……ミサファー様たちのことは先に相談していなかったのですか?」
「ああ。結婚前から子供のことを気にしていた。無理をしなくていいようにとミサファーと子供を作り、ゼッシュが生まれてから、君は後継ぎを産む必要はないと報告したんだ」
(一人で暴走しているだけじゃないの。それに、言い方も酷いわ)
悪気ない様子のジェラスを見るだけでフェルリアは頭痛がして、こめかみを押さえながら問いかけた。
「どうしてそんなことをしたんですか」
「私は、ただ妻を守ろうとしただけだ。これで焦って子供を作らなくてもいいだろうと。それなのに、自分も子供がほしいと言い出した。愛する妻の望みだ。叶えないわけにはいかないだろう?」
「守ろうとした? あなたが子どもを産むわけではないのです。奥様の体調を考えてからの決断でもよかったのではないですか?」
「そ、それは、そうかもしれないが」
「そう説得できず、奥様の望むままにミレイラ様を授かったのなら、あなたにミレイラ様を責める権利などありません」
フェルリアの冷たい眼差しに耐えられず、ジェラスは言い返すこともできずに視線を床に落とした。
初めて入ったジェラスの部屋は、フェルリアの部屋とは比べ物にならないほどに広かった。窓際に仕事机と一人用のソファ。キングサイズのベッドの近くには本棚が並んでいる。
部屋の隅には大きなおもちゃ箱が置かれており『ゼッシュ専用』などと書かれた貼り紙がされている。
(ミレイラ様のものがないのなら、わざわざ書かなくてもいいのに)
どうでもいいことに苛立ちながら、フェルリアが扉の前に立ってジェラスに話しかけた。
「日中の出来事についてのお話でしょうか」
「そうだ。君も話したいことがあると思ってな。とにかく座ってくれ」
奥にある暖炉の近くに二人掛けのソファが置かれており、そこに座るように促された。
ちょうどいい機会なので、言いたいことを言わせてもらおうと、フェルリアは一礼してソファに腰を下ろした。
改めて部屋を見回し、黒を基調としたジェラスの部屋はまるで、喪に服しているようにも思えた。
「ミレイラの件は申し訳なかった。話を聞いたら、ゼッシュが自分の非を認めたんで叱っておいた」
「ミレイラ様には謝罪されましたか?」
「謝りに行かせたが、会ってくれなかったそうだ」
フェルリアはジェラスが謝罪したか聞いたつもりだった。主語をつけなかった自分が悪いのだと反省し、改めて尋ねる。
「あなたはミレイラ様に謝罪されたのですか?」
「なぜ私が?」
眉をひそめるジェラスに、フェルリは聞き返す。
「本気でそう思っているのですか?」
「こんな時に冗談は言わない」
「あなたはミレイラ様の言葉を信じず、手をあげて叱ったのですよね?」
「仕方がないだろう! あれは妻の形見で大事なものだ。妻があの子にプレゼントしたから持たせているだけで、本当は自分の手で持っておきたいくらいなんだぞ! そんな大事なものを傷つけたんだ! 冷静でいられるはずがない!」
「ミレイラ様だって奥様の形見のようなものでしょう。それに形見は他にはないのですか?」
「……いや」
バツが悪そうな顔になったジェラスに、フェルリアは問いかける。
「どうしてそこまでミレイラ様を嫌うのですか」
「私から妻を奪ったからだと前に伝えただろう」
「奪ったという考えが理解できません。奥様が望んでミレイラ様を産んだわけではないのですか?」
「……そういうわけじゃない」
ジェラスは目を逸らし、右足を激しく揺すり始めた。
(イライラしているみたいね。今まで、自分よりも格下ばかりと話をしてきたから、自分の望み通りに進まないと納得いかないというところかしら)
ミレイラがため息を吐くと、ジェラスが言い訳をするように話し始める。
「ゼッシュが生まれたことを報告したら、自分も子供がほしいと言い出したんだ。私だって最初は止めた」
「……ミサファー様たちのことは先に相談していなかったのですか?」
「ああ。結婚前から子供のことを気にしていた。無理をしなくていいようにとミサファーと子供を作り、ゼッシュが生まれてから、君は後継ぎを産む必要はないと報告したんだ」
(一人で暴走しているだけじゃないの。それに、言い方も酷いわ)
悪気ない様子のジェラスを見るだけでフェルリアは頭痛がして、こめかみを押さえながら問いかけた。
「どうしてそんなことをしたんですか」
「私は、ただ妻を守ろうとしただけだ。これで焦って子供を作らなくてもいいだろうと。それなのに、自分も子供がほしいと言い出した。愛する妻の望みだ。叶えないわけにはいかないだろう?」
「守ろうとした? あなたが子どもを産むわけではないのです。奥様の体調を考えてからの決断でもよかったのではないですか?」
「そ、それは、そうかもしれないが」
「そう説得できず、奥様の望むままにミレイラ様を授かったのなら、あなたにミレイラ様を責める権利などありません」
フェルリアの冷たい眼差しに耐えられず、ジェラスは言い返すこともできずに視線を床に落とした。
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