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16 自分勝手な夫
「ジェラス様、あなた、自分が今、何を言ったか理解されていますか!?」
「大声を出さなくてもわかっているよ。言っただろう。君とゼッシュはミレイヤが子供を産めなかったからこその関係なんだ。今更、ゼッシュを僕の子だと社交界に発表するのは難しい」
「王女殿下が力を貸してくださるのでしょう?」
「そう言ってくれていたが、力を借りずとも跡継ぎ問題は解決できることに気がついた」
ジェラスは眉尻を下げ、ミサファーの両手を取った。ミサファーは怒りで顔を真っ赤にして、ジェラスを睨みつけている。
「ミサファー、私を愛しているなら言うことを聞いてくれ」
「聞くわけないでしょう! あなたに追い出されたら、私たちはこれからどうやって生きていったらいいのよ!」
「落ち着いてくれ。養育費と慰謝料を払う」
「あなたはフェルリア様との間に子供を作ればいいと思っているようですが、子供が生まれなかったり、生まれてきたとしても男の子じゃなかったらどうするんですか!」
「男の子が生まれるまで頑張ってもらう。それが妻の務めだ」
ミサファーはジェラスの手を振り払って忠告する。
「フェルリア様のようなタイプが、あなたのような人の子供を生むとは思えません。ゼッシュを捨てたら後悔することになりますからね」
「捨てるんじゃない。ただ、フェルリアの視界に入らない場所に行ってほしいんだ」
「……あなたの言う通りにしてもいいですが、いくつかお願いしたいことがあります」
「どんなことだ?」
「今すぐにはまとめきれませんので、10日後、改めて連絡いたします」
ミサファーは冷たく答えると、ジェラスを置いて部屋から出ていった。
「ミサファーとジェラスがここからいなくなれば、フェルリアも私に優しくしてくれるだろう」
部屋に残されたジェラスは、明るい表情で呟いたのだった。
******
フェルリアがミレイラを自分の部屋に連れ帰ってからは、ミレイラの笑顔はどんどん増えていった。
ミサファーとジェラスが庭の別邸から出てこなくなったということもあったが、ひとりぼっちで過ごす時間のないことが、一番の幸せだったようだ。
フェルリアが仕事をしている時は、メイドが一緒に遊んでくれる。ただ、一つだけ彼女の顔を曇らせることがあった。
それはジェラスの存在だった。
ジェラスは何とかフェルリアと二人きりになろうとして、ミレイラの存在を鬱陶しく思っていた。
そして、そのことはフェルリアだけでなく、
ミレイラも気がついていたのだ。
ある夜のこと、フェルリアがジェラスに呼び出された。すぐに帰ってくると言ったのに帰ってこないことが気になって、ミレイラはメイドに訴えた。
「フェルリアさんにあいたい!」
「わかりました。お連れします」
ミレイラを見守るよう頼まれていたメイドは頷くと、彼女と一緒にジェラスの部屋に向かった。
その頃、フェルリアはジェラスから関係を迫られていた。
「君に跡継ぎを生んでもらいたい」
「お断りいたします。あなたにゼッシュ様がいるではないですか」
「今までのことは悪かった。謝るから、本当の夫婦になろうじゃないか」
鼻息を荒くしているジェラスに嫌悪感を覚え、フェルリアは助けを呼ぼうと扉に向かう。しかし、ジェラスは回り込んで行く手を阻んだ。
(こんなこともあろうかと、呼び鈴を持っておいて良かったわ)
腰に巻いたリボンの中に忍ばせた呼び鈴に手をかけた時、ジェラスが叫んだ。
「大人しく言うことを聞け! お前は私の妻なんだぞ!」
「そのような行為はミサファー様とされてはいかがです? 今から生まれる子供であれば、私との子供と言っても不自然ではありません」
「何を言っているんだ。君が俺の子を産めばいい!」
ジェラスの目はギラギラと光っていて、フェルリアには恐ろしいよりも気持ち悪いという感覚のほうが強かった。
「私たちは白い結婚のはずです」
「うるさい! それは過去の話だ! 言うことを聞かないなら!」
そう言いながら、ジェラスはフェルリアの頬を往復で打った。
口の中が切れて血の味が広がる。何とか倒れ込まずに踏ん張ったフェルリアは無言でジェラスを睨みつけた。
「これ以上、酷いことをされたくなければ妻としての役目を果たせ。どうせ、想い人の男はもう死んでいる」
妻としての役目を果たせだけなら、まだ納得せざるを得なかった。ただ、キックスが死んでいると決めつけられたことは、どうしても許せなかった。
「家族や友人は今も彼の帰りを待っています。心ない言葉を吐くのはおやめください」
「わかった、わかった。私が忘れさせてやる」
フェルリアが何か言い返す前に、遠慮がちなノックの音が部屋の中に響いた。
「大声を出さなくてもわかっているよ。言っただろう。君とゼッシュはミレイヤが子供を産めなかったからこその関係なんだ。今更、ゼッシュを僕の子だと社交界に発表するのは難しい」
「王女殿下が力を貸してくださるのでしょう?」
「そう言ってくれていたが、力を借りずとも跡継ぎ問題は解決できることに気がついた」
ジェラスは眉尻を下げ、ミサファーの両手を取った。ミサファーは怒りで顔を真っ赤にして、ジェラスを睨みつけている。
「ミサファー、私を愛しているなら言うことを聞いてくれ」
「聞くわけないでしょう! あなたに追い出されたら、私たちはこれからどうやって生きていったらいいのよ!」
「落ち着いてくれ。養育費と慰謝料を払う」
「あなたはフェルリア様との間に子供を作ればいいと思っているようですが、子供が生まれなかったり、生まれてきたとしても男の子じゃなかったらどうするんですか!」
「男の子が生まれるまで頑張ってもらう。それが妻の務めだ」
ミサファーはジェラスの手を振り払って忠告する。
「フェルリア様のようなタイプが、あなたのような人の子供を生むとは思えません。ゼッシュを捨てたら後悔することになりますからね」
「捨てるんじゃない。ただ、フェルリアの視界に入らない場所に行ってほしいんだ」
「……あなたの言う通りにしてもいいですが、いくつかお願いしたいことがあります」
「どんなことだ?」
「今すぐにはまとめきれませんので、10日後、改めて連絡いたします」
ミサファーは冷たく答えると、ジェラスを置いて部屋から出ていった。
「ミサファーとジェラスがここからいなくなれば、フェルリアも私に優しくしてくれるだろう」
部屋に残されたジェラスは、明るい表情で呟いたのだった。
******
フェルリアがミレイラを自分の部屋に連れ帰ってからは、ミレイラの笑顔はどんどん増えていった。
ミサファーとジェラスが庭の別邸から出てこなくなったということもあったが、ひとりぼっちで過ごす時間のないことが、一番の幸せだったようだ。
フェルリアが仕事をしている時は、メイドが一緒に遊んでくれる。ただ、一つだけ彼女の顔を曇らせることがあった。
それはジェラスの存在だった。
ジェラスは何とかフェルリアと二人きりになろうとして、ミレイラの存在を鬱陶しく思っていた。
そして、そのことはフェルリアだけでなく、
ミレイラも気がついていたのだ。
ある夜のこと、フェルリアがジェラスに呼び出された。すぐに帰ってくると言ったのに帰ってこないことが気になって、ミレイラはメイドに訴えた。
「フェルリアさんにあいたい!」
「わかりました。お連れします」
ミレイラを見守るよう頼まれていたメイドは頷くと、彼女と一緒にジェラスの部屋に向かった。
その頃、フェルリアはジェラスから関係を迫られていた。
「君に跡継ぎを生んでもらいたい」
「お断りいたします。あなたにゼッシュ様がいるではないですか」
「今までのことは悪かった。謝るから、本当の夫婦になろうじゃないか」
鼻息を荒くしているジェラスに嫌悪感を覚え、フェルリアは助けを呼ぼうと扉に向かう。しかし、ジェラスは回り込んで行く手を阻んだ。
(こんなこともあろうかと、呼び鈴を持っておいて良かったわ)
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「大人しく言うことを聞け! お前は私の妻なんだぞ!」
「そのような行為はミサファー様とされてはいかがです? 今から生まれる子供であれば、私との子供と言っても不自然ではありません」
「何を言っているんだ。君が俺の子を産めばいい!」
ジェラスの目はギラギラと光っていて、フェルリアには恐ろしいよりも気持ち悪いという感覚のほうが強かった。
「私たちは白い結婚のはずです」
「うるさい! それは過去の話だ! 言うことを聞かないなら!」
そう言いながら、ジェラスはフェルリアの頬を往復で打った。
口の中が切れて血の味が広がる。何とか倒れ込まずに踏ん張ったフェルリアは無言でジェラスを睨みつけた。
「これ以上、酷いことをされたくなければ妻としての役目を果たせ。どうせ、想い人の男はもう死んでいる」
妻としての役目を果たせだけなら、まだ納得せざるを得なかった。ただ、キックスが死んでいると決めつけられたことは、どうしても許せなかった。
「家族や友人は今も彼の帰りを待っています。心ない言葉を吐くのはおやめください」
「わかった、わかった。私が忘れさせてやる」
フェルリアが何か言い返す前に、遠慮がちなノックの音が部屋の中に響いた。
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