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リアの覚悟

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 次の日も私とリアは別邸に向かい、エアリー様達と恋愛話に花を咲かせていた。

「羨ましいですわぁ。私もユーニ様やリア様のように素敵な殿方と出会いたいです」
「あら、エアリー様にはいらっしゃるじゃないですか」

 エアリー様がうっとりした表情で言うのに対し、隣に座っているリリー様が令嬢らしからぬ笑みを浮かべて言った。

「リリー様!」
「あら、社交界では知られた話ですわよ?」
「エアリー様、よろしければぜひお聞きしたいです」

 リリー様の言葉を聞いて、私が身を乗り出すと、エアリー様は白い頬をピンク色に染める。

「ユーニ様やリア様のような、素敵なお話じゃありませんわよ?」
「それは聞いてからでないとわからないですよ?」

 リアが笑いながら急かすと、エアリー様は恥ずかしそうにしながらも話し始めてくれた。

「私には元々、幼い頃から決められていた婚約者がおりましたの。お互いに義務を果たすためだけで、心通わせぬまま月日がたちました。でも、ある日の社交の場で、私は彼と出会ったのです」

 きゃーっ、と私も含むギャラリーが声を上げる。

 人の恋バナって、なんでこう楽しいんだろう。
 喧嘩した話とかじゃなくて、明るい話をしているから?

 その後、エアリー様は好きな人との出会いから、お互いが恋に落ちるまでの話をしてくれた。

「婚約者がいる身ですし、叶わぬ恋だと諦めようとしました時に、イッシュバルド伯爵から父の方にお話がありましたの」
「イッシュバルド伯爵って・・・・・」

 たしかまだ、ラス様のお父さんは公爵のままだから、ラス様は身分的には伯爵の爵位をもらった、と言ってたような。
 私が聞き返すと、リリー様が教えてくれる。

「ご長男のラス様ですわ。私もお話いただきましたから」
「そうなんです。ラス様から父の方に連絡があり、殿下の婚約者候補を探しているけれど、殿下の妻になりたくない人でないといけないと」

 エアリー様が困惑した表情で続ける。

「そんな話が父から持ち込まれ、その後、私が直接、ラス様とお話させていただきましたの。ラス様は私に別邸にしばらく住んでもらわないといけないけれど、その代わり、今の婚約者との婚約を解消するようにして下さると」
「私の場合も似たような感じでしたわ」

 リリー様が頷くので、私は尋ねてみる。

「リリー様のお相手はどんな方なんですか?」
「あ、いえ、私なんかの話は!」
「何言ってるのよ。あなたのお話もとてもロマンチックよ」

 エアリー様に促され、リリー様が口を開く。

「私の彼は庭師なんです」

 リリー様はその後、それはもう嬉しそうに話を続けてくれた。
 途中、話が色んなところに飛んだりはしたが、最終的な話はエアリー様と似たようなものだった。

「・・・・・で、庭師など認められないという両親を説得して下さったのがラス様なんです。別邸にしばらく滞在すれば、彼に爵位と家、そして、爵位を存続させるためのお金を援助して下さると」

 リリー様は恍惚の表情を浮かべて話し終える。

 それにしても、ラス様はオールマイティすぎませんか。

 これって、ユウヤくんやユウマくんの為にラス様が調べ上げて奔走したって事よね?

 まあ、迷惑をかけることになったのは、私達のせいだけど。

 それにしても、今日はリアの口数が少ない。
 体調でも悪いのかな?

 昨日と同じように話し終え、私達の部屋まで帰る道で、私はリアに話しかけた。

「リア、今日、体調悪かった?」
「え?!」
「ほら、なんだか静かだったし。昨日、ユウマくん来てたんでしょ? なんかあった?」
「逆に、ユーニは何もなかったの?」

 リアが顔を赤くして聞き返してくるので、私は焦る。

「え、リア、もしや?」
「え? 違うの? だって、夜這いって叫んでたじゃない?」
「いや、叫んだかもだけど違ったよ」
「え?!」
「え?」

 リアの驚き方に私も驚く。

「え、ちょ、リア、まさか?!」
「ち、違うの! 最後まではしてない!」
「え?」
「あ」
「ちょっとリア」

 私はリアの肩をつかむと、顔を近付けて言った。

「部屋で詳しく教えて」







 結局、今日はリアの部屋でゆっくり話す事にした。
 なぜなら。

「話を聞いたユウヤくんが来るかもよ」

 と、リアに言われたからだ。

 いや、ユウヤくんはきっと大丈夫。
 ユウマくんと違って、小さい頃から王族としての品格を教えられているはず。

 って、陛下は平民との間にユウマくんが!!
 品格どこいった?

「今日、お風呂に入れてもらうの、どう断ろうか迷ってたし、ユーニが来てくれて助かったわ。一人で入れる」
「え。まあ、聞かない事にする」
「ありがと。はい、ユーニ」
「ありがとうリア」

 リアが飲み物をいれてくれて、私に手渡してくれた。
 中身はホットミルクだ。

「で、早速だけど、どうなの?」
「ユーニは本当に何もしてないの?」
「してません」
「何でよ」
「知らないよ。ユウマくんの手が早すぎなんじゃない?」

 リアは私の隣に座ると、私にもたれかかりながら言った。

「なんか、そういう雰囲気になってしまって、抵抗しようとしたんだけど。やっぱり男には力ではかなわないね」
「無理矢理、とかなの?」
「さすがに違うよ。それに夜這いって、ユーニの声が聞こえたし、ユーニも覚悟を決めたのかと」
「ごめん、違った」

 私の言葉にリアは大きくため息を吐く。

「最後まではしてないから」
「そっか。やっぱり怖くなったりしたの?」
「・・・・・うん」

 リアがあたしの腕に顔を押し付けてきた。

「よしよし。ユウマくんは今度あたし、じゃない、私がこらしめてやるからね!」
「うん、ありがとう!」

 私はリアをぎゅうっと抱きしめる。
 じんわりと温かい水滴が、私の寝間着に染みてくる。

 許さん。
 リアを泣かすとは!
 相手が好きな人でも、いつもと違う顔を見せられたら怖いはず。
 おばあちゃんはよく、男は狼だとよく言ってたし。
 好きな人でも、特に初めては怖いものなのに。
 そりゃあ、リアを襲いたくなる気持ちはわからないでもない。
 だけど、許さん。

「ユーニ、ひどい顔してる」
「だってユウマくん、許せない!」
「ありがと。でもさ、昨日でわかったんだけど」
「ん?」
「私はやっぱりユウマくんが好きみたい。だから、アレンくんにはしっかりお断りして、ちゃんと色々と学んでいこうと思う」
「リア、それって婚約者になる気持ちを固めたって事?」
「うん」

 私の言葉に、リアが涙を拭って、はっきりと首を縦に振った。





「ふう」

 リアとの話を終え、私は自分の部屋に戻る廊下でため息を吐いた。

 リアの事は応援するけど、私自身は未だに何も決められていない。
 どうしたらいいんだろ。

 部屋に戻ると、電気がついていた。

「あれ?」
「「おかえり」」

 なぜか、私の部屋にユウヤくんとユウマくんがいた。

「レディの部屋に勝手に入らないでよ! っていうか、何でユウマくんも?」
「リア、オレの事、嫌いになったとか言ってた?」

 その確認のためにいるのか!

「ユウマくん」
「はい」

 私の怒り顔に気付き、ソファーに座っていたユウマくんが立ち上がる。

「女の子には心の準備というものがあります。そういうのは王族なんだから、結婚してからにしましょう」
「すみませんでした」
「リアに謝ってよ。とりあえず我慢してよね?」
「わかってんだけど、リアがすげぇ可愛くて」
「自制しろよ」

 ユウヤくんに言われ、ユウマくんは苛立ちの表情を見せると言った。

「ユウヤ、ユーニちゃんの首筋に触ってみろ」
「何であた、じゃない、私がでてくんの」
「ユーニちゃんはそっち行って」

 ユウマくんに促され、私はユウヤくんの膝の上に軽く座った。
 すると、首筋に何か生温かいものが這う。

「んっ」

 変な声が出た、と同時、ユウヤくんの動きがとまり、私の肩に額を当てた。

「これはヤバいな」
「だろ?」

 ちょっと待て。
 なんという恥ずかしい事をするんだ!
 しかもユウマくんの前で!

 私はユウヤくんのお腹に肘鉄を入れた。

「って! オマエ、モロに入ったぞ」
「知りません」

 まだ首筋がゾクゾクしている。

 私は立ち上がると、ユウヤくんとユウマくんを部屋から追い出す。

「ユウヤくんは罰で、しばらく会いに来ないでね!」
「は?!」

 ユウヤくんの抗議する声が聞こえたけど、無視して扉を閉めた。
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