【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ

文字の大きさ
44 / 57

好きだけじゃ駄目な気がする

しおりを挟む
 次の日の朝、リアと一緒に別邸へ向かう道の途中でリアが顔を覗き込んできた。

「なんかユーニ、機嫌悪くない?」
「え? そんな事ないよ」
「でも、顔がなんか怒ってるし」
「ちょっと昨日、色々とあったの」
「もしかして、私のせい?」
「何で?」

 私はリアを見て小首を傾げた。

 怒っているとしたら、ユウヤくんに、であって、リアにではない。 
 ユウヤくんに関しては、昨日のことを根に持っているし、すぐに許してしまって、またあんな事をされてはたまらない!

 そう、あんな事を!
 
思い出すだけで顔が熱くなる。

 あ、そうか。
 この気持ちが表に出てしまっているのかもしれない。


「ごめんね、リア。実は昨日、色々とあって」
「昨日って、私の部屋を出てから?」
「うん。待ち伏せというか、部屋で待たれてた」
「え? ユウヤくんが?」
「ユウヤくんとあなたの彼氏が」
「ユウマくんも?」

 リアが驚きの声を上げる。

「そういえば、昨日、ユウマくんはリアのとこに来なかったの?」
「一応、謝りには来てくれたけど、特に何も言ってなかったから」
「リアは、伝えたの? ユウマくんに」
「あ、えと。うん。婚約者になりたい、って伝えたよ。もちろん、すぐに結婚とかは無理って伝えたけど」
「そっか。でも、婚約おめでとう」
「ありがと」

 リアは照れているのか、頬をピンク色に染めながら続ける。

「私は、ユーニがどんな選択をしても、ユーニの親友だからね」
「リア?」
「もし、ユーニがユウヤくんを選ばなくても、私とはこれからもずっと親友でいてね」

 リアが私に抱きついてきた。

 そっか。
 私がユウヤくんを選ばなければ、リアとこんな風にはいられなくなる。

「ありがと、リア。こちらこそよろしくね」

 ぎゅうと抱きしめ返したあと、気になった事をリアに尋ねる。

「で、ユウマくんの様子はどうだった?」
「ん?」
「喜んでた?」
「そりゃあもう」

 リアが遠い目をしながら言うので、よっぽどだったんだろう。
 でも、ユウマくんも本当に嬉しかったんだろうな。

「あ、思ったんだけど、もちろんまだ、結婚はしないわよ? だけどね、考えたらさ、私とユウマくんが結婚して、ユウヤくんとユーニが結婚したら、ユーニは私の義理のお姉さんになるの。それは楽しみかなって」
「あ、そっか」

 リアにそう言われて気が付いた。
 そんな事を今まで考えたことなかったな。
 私にはまだわからない。
 この人と結婚したい、と思える気持ちがどんなものなのか。
 好きだから、っていうのは、もちろん正しいと思う。
 でも、私の中では踏み切るには何か足りないような気がする。

 この何かがわかれば、パズルのピースを埋めるように、スッキリした気分になれるんだろうか。

 こんな事を考えていた朝だったけれど、別邸に着くなり、否が応でも思考を切り替えなければいけない出来事が起きた。

 そう、リアが婚約を決めたということは。

「リア様! ご婚約、おめでとうございます!」

 ユウマくんの婚約者候補だったリリー様が駆け寄ってきて、リアの手を取った。

「自分の事のように嬉しいですわ。リア様とユーニ様には短い間でしたが、まるで幼い頃からの友人のような親しみを感じていましたの」
「あら、あなたは自分の婚約者の元に行けるのが嬉しいんじゃなくって?」

 エアリー様が扇で口元を隠しながら優しく笑う。

「エアリー様ったら、本当に意地が悪いですわ!」

 リリー様は怒るふりをしたあと、リアに向かって続けた。

「明日の朝にはこちらを出ようと思いますの。今日はいっぱいお話して下さいね。もちろん、ユーニ様も」

 リリー様の幸せな笑顔を見て、嬉しい気持ちと寂しい気持ち、そして、ユウヤくんの婚約者候補である人への申し訳なさで、私の感情は無茶苦茶になってしまった。





 私はその日、リアには先に帰ってもらって、1人で庭園をぶらぶらしていた。
 すると、頭上から声がかかった。
 声がした方向はお城の方で、顔を上げると、ラス様が窓を開けて、私を見ていた。

「ユーニさん、何してるんです、こんなとこで? 部屋なら向こうですよ」

 どうやら、私が迷子になっていると思ったらしい。
 そっか。
 ここはラス様の執務室から見える場所なのか。

 そんな事を思ったあと、私は顔を上げて答える。

「わかってますよ。散歩してるんです」
「そういえば、私の言っていた人物がわかりましたか?」
「・・・・・」

 そう言われ、私は今日の事を思い出す。

 ユウマくんの婚約者候補の人は明日でみんな別邸から出ていくらしい。
 ユウマくんの婚約者が決まったのだから、それは当たり前だ。
 だけど、ラス様の言っている人が誰だかわからない。

「ユーニさん、何かあったんですか」

 ラス様は私が答える前に窓枠を乗り越えると、2階から飛び降り、私の元まで来ると窓の方を見上げて言った。

「ユウヤが私の部屋にいますよ。呼びますか? それとも、ユウヤの話ですか?」

 ラス様は私に気を遣ってくれたんだろう。
 だから、先に自分だけ降りてきてくれたんだ。

「ラス様ぁ。私、どうしたらいいんでしょう」

 今の私の顔は本当にひどい顔をしていると思う。
 急に溢れ出した涙を止められないまま続ける。

「私にとって、婚約するなんて、そんな簡単なものじゃないんです。でも、私のせいでたくさんの人に迷惑かけてる」

 リリー様は別邸から出られる事を本当に幸せそうにしていた。

 でも、ユウヤくんの婚約者であるエアリー様は、私が決めないと、好きな人の元へはいけないんだ。

「ユーニさん・・・・・」

 ラス様があたしの名を呼び、肩に手をかけたあと叫んだ。

「ユウヤ!」
「・・・・・なんだよ」

 窓から顔を出したユウヤくんが、私の姿を認めるなり、ラス様に怒りの表情を向けた。

「なんでユーニが泣いてんだ」
「お前がかかわってんだよ。というか、抱きしめるぞ」
「やめろ!」
「泣いていいですよ」

 ラス様はそう言うと、私を彼の方に引き寄せた。

 どうやら、涙を見せないように隠してくれてるみたいだけど、逆にびっくりして涙がひっこんでしまった。

 それと同時。

「はなせ!」

 ユウヤくんがラス様から私を奪い取ると、背中から抱きしめてきた。

「何があったんだよ」
「ちょっと、頭がぐちゃぐちゃで」
「ユウマ達の事か?」
「それもあるけど・・・・・・」

 私は言葉を濁す。

 なんか、ユウヤくんには話しづらい。
 まあ、今、私の頭を悩ませている本人なのだから当たり前か。

「ユーニさん、焦らなくていいですよ」

 ラス様が私の頭をなでながら続ける。

「婚約や結婚なんて、そう簡単に決めれないのは当たり前です。それはユウヤの婚約者候補も、ユウヤ自身もわかっています。ユウヤが先を急ぐのは、あなたに手を出せないという邪な理由でしょう」
「それだけじゃねぇよ」
「泣かせるまで追い込んでおいて、よくそんな事を言えますね。あなたが何年でも待つ、と言ってあげれば良い事でしょうが」
「そんな悠長なこと言って、誰かにとられたくねぇんだよ」

 ユウヤくんが腕の力を強めて続ける。

「ユーニがオマエを好きになる可能性だってあるだろ」
「「は?」」

 ユウヤくんの言葉に私とラス様は同時に反応した。

「わかってるよ! 子供みたいな事、言ってんのくらい! でも、不安なんだよ。全部、オレのもんにしたい。誰とも話させたくない。それを押し殺すだけで精一杯なんだよ!」
「独占欲のかたまりかよ」

 ラス様があきれた表情で言った。

 どうやら、ラス様は地が出たときは敬語がなくなるんだな。
 というか。

 ユウヤくんの発言を思い出し、顔が熱くなる。

 な、なんか、凄いことを言われてたような。

「ユーニさん。ユウヤの事は気にしなくて良いです。あと、他の婚約者候補の事も。私の方から聞き取りをいれます。不満があるようでしたら、私の方で対処いたします」

 ラス様はかがんで、私に視線を合わせて柔らかい笑みを浮かべる。

「あなたの人生です。人の事を考えるのはあなたの優しさでしょうが、今は自分の将来にだけ目を向けて下さい」

「ラス様」

 ラス様の優しさに鼻がツンと痛くなる。

 ユウヤくんが耳元で囁く。

「・・・・・ごめんな」

「私こそ」

 ユウヤくんの腕を握って答えると、私の耳に口付けた。
 ほんと、ここ最近はスキンシップが激しい。
 嫌ではないけど。

「腹がへりましたね」

「そうだな
「ユーニさん、ユウヤと一緒に夕食を城下に食べに出る予定ですが、あなたもご一緒にいかがです?」
「あ、でも、用意してくれてるだろうから」
「帰ったらユウヤ様が食べますよ。ですよね、ユウヤ様?」

 ラス様の言葉にユウヤくんが苦い表情で頷く。

「じゃ、ご一緒させて下さい!」

 私はさっきまでの涙が嘘のように笑って言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユリアは、8歳の時に両親を亡くして以降、叔父に引き取られたものの、厄介者として虐げられて生きてきた。さらにこの世界では命を削る魔法と言われている、治癒魔法も長年強要され続けてきた。 そのせいで体はボロボロ、髪も真っ白になり、老婆の様な見た目になってしまったユリア。家の外にも出してもらえず、メイド以下の生活を強いられてきた。まさに、この世の地獄を味わっているユリアだが、“どんな時でも笑顔を忘れないで”という亡き母の言葉を胸に、どんなに辛くても笑顔を絶やすことはない。 そんな辛い生活の中、15歳になったユリアは貴族学院に入学する日を心待ちにしていた。なぜなら、昔自分を助けてくれた公爵令息、ブラックに会えるからだ。 「どうせもう私は長くは生きられない。それなら、ブラック様との思い出を作りたい」 そんな思いで、意気揚々と貴族学院の入学式に向かったユリア。そこで久しぶりに、ブラックとの再会を果たした。相変わらず自分に優しくしてくれるブラックに、ユリアはどんどん惹かれていく。 かつての友人達とも再開し、楽しい学院生活をスタートさせたかのように見えたのだが… ※虐げられてきたユリアが、幸せを掴むまでのお話しです。 ザ・王道シンデレラストーリーが書きたくて書いてみました。 よろしくお願いしますm(__)m

嫌われていると思って彼を避けていたら、おもいっきり愛されていました

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のアメリナは、幼馴染の侯爵令息、ルドルフが大好き。ルドルフと少しでも一緒にいたくて、日々奮闘中だ。ただ、以前から自分に冷たいルドルフの態度を気にしていた。 そんなある日、友人たちと話しているルドルフを見つけ、近づこうとしたアメリナだったが “俺はあんなうるさい女、大嫌いだ。あの女と婚約させられるくらいなら、一生独身の方がいい!” いつもクールなルドルフが、珍しく声を荒げていた。 うるさい女って、私の事よね。以前から私に冷たかったのは、ずっと嫌われていたからなの? いつもルドルフに付きまとっていたアメリナは、完全に自分が嫌われていると勘違いし、彼を諦める事を決意する。 一方ルドルフは、今までいつも自分の傍にいたアメリナが急に冷たくなったことで、完全に動揺していた。実はルドルフは、誰よりもアメリナを愛していたのだ。アメリナに冷たく当たっていたのも、アメリナのある言葉を信じたため。 お互い思い合っているのにすれ違う2人。 さらなる勘違いから、焦りと不安を募らせていくルドルフは、次第に心が病んでいき… ※すれ違いからのハッピーエンドを目指していたのですが、なぜかヒーローが病んでしまいました汗 こんな感じの作品ですが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m

お妃候補に興味はないのですが…なぜか辞退する事が出来ません

Karamimi
恋愛
13歳の侯爵令嬢、ヴィクトリアは体が弱く、空気の綺麗な領地で静かに暮らしていた…というのは表向きの顔。実は彼女、領地の自由な生活がすっかり気に入り、両親を騙してずっと体の弱いふりをしていたのだ。 乗馬や剣の腕は一流、体も鍛えている為今では風邪一つひかない。その上非常に頭の回転が速くずる賢いヴィクトリア。 そんな彼女の元に、両親がお妃候補内定の話を持ってきたのだ。聞けば今年13歳になられたディーノ王太子殿下のお妃候補者として、ヴィクトリアが選ばれたとの事。どのお妃候補者が最も殿下の妃にふさわしいかを見極めるため、半年間王宮で生活をしなければいけないことが告げられた。 最初は抵抗していたヴィクトリアだったが、来年入学予定の面倒な貴族学院に通わなくてもいいという条件で、お妃候補者の話を受け入れたのだった。 “既にお妃には公爵令嬢のマーリン様が決まっているし、王宮では好き勝手しよう” そう決め、軽い気持ちで王宮へと向かったのだが、なぜかディーノ殿下に気に入られてしまい… 何でもありのご都合主義の、ラブコメディです。 よろしくお願いいたします。

全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のセーラは、1人崖から海を見つめていた。大好きだった父は、2ヶ月前に事故死。愛していた婚約者、ワイアームは、公爵令嬢のレイリスに夢中。 さらにレイリスに酷い事をしたという噂まで流されたセーラは、貴族世界で完全に孤立していた。独りぼっちになってしまった彼女は、絶望の中海を見つめる。 “私さえいなくなれば、皆幸せになれる” そう強く思ったセーラは、子供の頃から大好きだった歌を口ずさみながら、海に身を投げたのだった。 一方、婚約者でもあるワイアームもまた、一人孤独な戦いをしていた。それもこれも、愛するセーラを守るため。 そんなワイアームの気持ちなど全く知らないセーラは… 龍の血を受け継いだワイアームと、海神の娘の血を受け継いだセーラの恋の物語です。 ご都合主義全開、ファンタジー要素が強め?な作品です。 よろしくお願いいたします。 ※カクヨム、小説家になろうでも同時配信しています。

大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました

Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。 そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。 「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」 そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。 荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。 「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」 行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に ※他サイトにも投稿しています よろしくお願いします

あなたの事は好きですが私が邪魔者なので諦めようと思ったのですが…様子がおかしいです

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のカナリアは、原因不明の高熱に襲われた事がきっかけで、前世の記憶を取り戻した。そしてここが、前世で亡くなる寸前まで読んでいた小説の世界で、ヒーローの婚約者に転生している事に気が付いたのだ。 その物語は、自分を含めた主要の登場人物が全員命を落とすという、まさにバッドエンドの世界! 物心ついた時からずっと自分の傍にいてくれた婚約者のアルトを、心から愛しているカナリアは、酷く動揺する。それでも愛するアルトの為、自分が身を引く事で、バッドエンドをハッピーエンドに変えようと動き出したのだが、なんだか様子がおかしくて… 全く違う物語に転生したと思い込み、迷走を続けるカナリアと、愛するカナリアを失うまいと翻弄するアルトの恋のお話しです。 展開が早く、ご都合主義全開ですが、よろしくお願いしますm(__)m

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

公爵令息様を治療したらいつの間にか溺愛されていました

Karamimi
恋愛
マーケッヒ王国は魔法大国。そんなマーケッヒ王国の伯爵令嬢セリーナは、14歳という若さで、治癒師として働いている。それもこれも莫大な借金を返済し、幼い弟妹に十分な教育を受けさせるためだ。 そんなセリーナの元を訪ねて来たのはなんと、貴族界でも3本の指に入る程の大貴族、ファーレソン公爵だ。話を聞けば、15歳になる息子、ルークがずっと難病に苦しんでおり、どんなに優秀な治癒師に診てもらっても、一向に良くならないらしい。 それどころか、どんどん悪化していくとの事。そんな中、セリーナの評判を聞きつけ、藁をもすがる思いでセリーナの元にやって来たとの事。 必死に頼み込む公爵を見て、出来る事はやってみよう、そう思ったセリーナは、早速公爵家で治療を始めるのだが… 正義感が強く努力家のセリーナと、病気のせいで心が歪んでしまった公爵令息ルークの恋のお話です。

処理中です...