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14. 綺麗な独房にて
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リリアナが連れてこられた場所は教会の地下だった。
といっても、リリアナが想像していたものとは違い、半地下になっていて、リリアナがどんなに手を伸ばしても届かない位置に横に細い窓があり、そこから太陽の光が差し込んでいた。
壁は赤色のレンガで鉄格子がなければ、平民が住むような小さな部屋のようにも見える。
鉄格子で中は丸見えになっていたが、ベッドや書物机だけでなく、お手洗いとお風呂もあり、さすがにそこには木材で作られたパーテーションが置かれてあった。
自分の部屋に戻る事も許されず、祈りの間から直接ここに連れてこられた為、アッシュに説明する事も出来なかったせいで、アッシュはかなり不満げな顔をしていたが、リリアナがなだめると渋々だが頷き、神官長や他の聖女、聖騎士達と一緒に付いて来ていた。
「アッシュ、あなたは独房には入れませんよ」
「わかってる」
神官長に言われ、アッシュはぶっきらぼうに答えると、独房の中に入れられたリリアナに鉄格子越しに小声で話しかける。
「事情は話してくれるんだろうな」
「もちろん。だけど今は駄目よ」
神官長やアッシュだけでなくフェナン達もいる為、リリアナも小さな声でアッシュに答えた。
扉の鍵が閉められ、しんと静まり返る。
一瞬の沈黙の後、神官長が悲しげな顔をしてリリアナに向かって口を開いた。
「申し訳ございません、リリアナ様。不吉の聖女が現れた際は、この独房で生活してもらうという事になっているのです」
「かまいません。ですが、きっとすぐに出る事になると思います」
リリアナは笑顔で神官長に答えてから続ける。
「アッシュと2人で話をしたいんですが…」
「いけません。アッシュは魔道士です。牢の鍵を壊す恐れがあります」
「あんたみたいな疫病神にウロウロされたら困るの! アッシュと2人になんてさせられるわけないじゃない!」
神官長の言葉の後に、オーブリーが叫び、フェナンが続ける。
「そうだ。2人きりになったら何をするかわからない! どうせやらしい事でもするんだろ!」
「お前、頭大丈夫か? というか、お前と一緒にするな」
アッシュは軽蔑するような目でフェナンを見た後、神官長に言う。
「見張りの神官をつけていてくれてもかまわない」
「…わかりました」
神官長は渋々といった感じで頷くと、中年の男性の神官を2人連れてくると、アッシュとリリアナを見張る様に伝え、オーブリー達を連れて地上へと続く階段をのぼっていった。
素直にアッシュと見張りの神官以外は帰っていくと思われたが、なぜだかトールが戻ってくると、リリアナに向かって言った。
「一体、何をしたんだよ? やっぱり2人はデキちゃってんの? 婚約者がいんのにそりゃあ駄目だぜ、リリアナ」
「はあ? 何を言ってるのよ! 私達はそんな関係じゃないし、何よりフェナンとオーブリーはどうなるのよ!?」
「あれは聖女と聖騎士同士だからいいんだよ」
「そんな訳ないでしょ! 馬鹿じゃないの!」
つい、カッとなったリリアナが暴言を吐くと、トールがニヤニヤしていた笑みを消して、侮蔑の目をリリアナに向ける。
「不吉の聖女に何を言われたって、痛くもかゆくもねぇんだよ」
「お前みたいな馬鹿に言われてもリリアナは痛くもかゆくもない。とっとと行け! リリアナに近寄るな」
黙って聞いていたアッシュだったが、やはり黙っていられなくなり、言葉と共にトールの脛に蹴りを入れた。
すると、トールが情けない声を上げて、蹴られた右足の脛をおさえながら叫ぶ。
「いってぇ! 何すんだ! つーか、お前の靴、どうなってんだ!」
「底とつま先に鉄板入れてる」
「何でそんな事する必要があんだよ!」
「色々と。それに今みたいな時にも役に立ったろ」
「最低な野郎だな!」
「お前に言われたくない」
冷たく答えたアッシュの言葉の後に、リリアナもトールに向かって叫ぶ。
「最低なのはあなたよ! 私の事が気に入らないなら、とっとと消えて!」
リリアナが鉄格子を両手でつかんで睨むと、トールは彼女を見上げた後、鼻を鳴らして立ち上がる。
「お前ら、お似合いだよ。2人そろって闇落ちすればいい」
「闇に片足突っ込んでんのはお前だよ」
アッシュが言い返すと、トールはリリアナとアッシュを睨んだ後、足を引きずりながら地上へ続く石の階段をのぼっていった。
トールの姿が見えなくなったあと、アッシュがリリアナの方に体を向ける。
「さて、リリアナ。話をしてくれるよな」
「それはもちろんなんだけど…」
神官2人に聞かせて良いものかとリリアナが迷っていると、アッシュが小声で呪文を呟いた。
すると突然、アッシュの後ろに立っていた神官2人が床に崩れ落ちた。
「え!? なに!?」
「心配するな。眠らせただけだ」
動揺しているリリアナにアッシュは微笑して言うと、すぐに表情を歪めて続ける。
「これで話せるようになったよな?」
アッシュの問いかけにリリアナは無言で首を大きく縦に振った。
といっても、リリアナが想像していたものとは違い、半地下になっていて、リリアナがどんなに手を伸ばしても届かない位置に横に細い窓があり、そこから太陽の光が差し込んでいた。
壁は赤色のレンガで鉄格子がなければ、平民が住むような小さな部屋のようにも見える。
鉄格子で中は丸見えになっていたが、ベッドや書物机だけでなく、お手洗いとお風呂もあり、さすがにそこには木材で作られたパーテーションが置かれてあった。
自分の部屋に戻る事も許されず、祈りの間から直接ここに連れてこられた為、アッシュに説明する事も出来なかったせいで、アッシュはかなり不満げな顔をしていたが、リリアナがなだめると渋々だが頷き、神官長や他の聖女、聖騎士達と一緒に付いて来ていた。
「アッシュ、あなたは独房には入れませんよ」
「わかってる」
神官長に言われ、アッシュはぶっきらぼうに答えると、独房の中に入れられたリリアナに鉄格子越しに小声で話しかける。
「事情は話してくれるんだろうな」
「もちろん。だけど今は駄目よ」
神官長やアッシュだけでなくフェナン達もいる為、リリアナも小さな声でアッシュに答えた。
扉の鍵が閉められ、しんと静まり返る。
一瞬の沈黙の後、神官長が悲しげな顔をしてリリアナに向かって口を開いた。
「申し訳ございません、リリアナ様。不吉の聖女が現れた際は、この独房で生活してもらうという事になっているのです」
「かまいません。ですが、きっとすぐに出る事になると思います」
リリアナは笑顔で神官長に答えてから続ける。
「アッシュと2人で話をしたいんですが…」
「いけません。アッシュは魔道士です。牢の鍵を壊す恐れがあります」
「あんたみたいな疫病神にウロウロされたら困るの! アッシュと2人になんてさせられるわけないじゃない!」
神官長の言葉の後に、オーブリーが叫び、フェナンが続ける。
「そうだ。2人きりになったら何をするかわからない! どうせやらしい事でもするんだろ!」
「お前、頭大丈夫か? というか、お前と一緒にするな」
アッシュは軽蔑するような目でフェナンを見た後、神官長に言う。
「見張りの神官をつけていてくれてもかまわない」
「…わかりました」
神官長は渋々といった感じで頷くと、中年の男性の神官を2人連れてくると、アッシュとリリアナを見張る様に伝え、オーブリー達を連れて地上へと続く階段をのぼっていった。
素直にアッシュと見張りの神官以外は帰っていくと思われたが、なぜだかトールが戻ってくると、リリアナに向かって言った。
「一体、何をしたんだよ? やっぱり2人はデキちゃってんの? 婚約者がいんのにそりゃあ駄目だぜ、リリアナ」
「はあ? 何を言ってるのよ! 私達はそんな関係じゃないし、何よりフェナンとオーブリーはどうなるのよ!?」
「あれは聖女と聖騎士同士だからいいんだよ」
「そんな訳ないでしょ! 馬鹿じゃないの!」
つい、カッとなったリリアナが暴言を吐くと、トールがニヤニヤしていた笑みを消して、侮蔑の目をリリアナに向ける。
「不吉の聖女に何を言われたって、痛くもかゆくもねぇんだよ」
「お前みたいな馬鹿に言われてもリリアナは痛くもかゆくもない。とっとと行け! リリアナに近寄るな」
黙って聞いていたアッシュだったが、やはり黙っていられなくなり、言葉と共にトールの脛に蹴りを入れた。
すると、トールが情けない声を上げて、蹴られた右足の脛をおさえながら叫ぶ。
「いってぇ! 何すんだ! つーか、お前の靴、どうなってんだ!」
「底とつま先に鉄板入れてる」
「何でそんな事する必要があんだよ!」
「色々と。それに今みたいな時にも役に立ったろ」
「最低な野郎だな!」
「お前に言われたくない」
冷たく答えたアッシュの言葉の後に、リリアナもトールに向かって叫ぶ。
「最低なのはあなたよ! 私の事が気に入らないなら、とっとと消えて!」
リリアナが鉄格子を両手でつかんで睨むと、トールは彼女を見上げた後、鼻を鳴らして立ち上がる。
「お前ら、お似合いだよ。2人そろって闇落ちすればいい」
「闇に片足突っ込んでんのはお前だよ」
アッシュが言い返すと、トールはリリアナとアッシュを睨んだ後、足を引きずりながら地上へ続く石の階段をのぼっていった。
トールの姿が見えなくなったあと、アッシュがリリアナの方に体を向ける。
「さて、リリアナ。話をしてくれるよな」
「それはもちろんなんだけど…」
神官2人に聞かせて良いものかとリリアナが迷っていると、アッシュが小声で呪文を呟いた。
すると突然、アッシュの後ろに立っていた神官2人が床に崩れ落ちた。
「え!? なに!?」
「心配するな。眠らせただけだ」
動揺しているリリアナにアッシュは微笑して言うと、すぐに表情を歪めて続ける。
「これで話せるようになったよな?」
アッシュの問いかけにリリアナは無言で首を大きく縦に振った。
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