11 / 24
10. 公爵令嬢のアドバイス
しおりを挟む
結局、祈りを捧げ始めたオーブリーを見たフェナンも聖騎士の石膏像に話しかけ始めたので、神様との会話をしようとしているところを邪魔する事も出来ず、リリアナとアッシュは祈りの間を出た。
するとすぐに、アッシュがリリアナに問いかけてきた。
「神様と話は出来たのか?」
「ううん。会話をするどころじゃなかったの。聖女様らしき人の声で何か教えてくれようとしたところでフェナンが来たから」
「そうか。人払いをさせておけば良かった。悪い」
「アッシュが謝る事じゃないわ。祈りの間にあんな大声を出して入ってくる方がおかしいのよ」
アッシュにそう答えてから、リリアナは聖女の言葉を思い出す。
(全然、お話を聞く事が出来なかったけれど、私に闇に落ちないで、と言っていたわよね? あれってどういう事なのかしら)
「ねえ、アッシュ」
「ん?」
「闇に落ちるって聞いて、どんな事か想像はつく?」
「…たぶん。ただ、俺も人伝に聞いた話だけど、それでもいいか?」
「うん。闇に落ちるっていう言葉を今まで聞いた事がなかったら、私も調べた事もないから」
「教会内にある図書館では、そっち系の事が書いてある本はなかったんだが、魔道士仲間から聞いた事があるんだ。リリアナの前の3の数字を持つ聖女と関わりがあった奴がいてさ」
そこまで聞いたところで、リリアナはふと気になった事があり、忘れない内に聞いておく事にする。
「そういえば、先代の聖女様はどうしてお亡くなりに? たしか、そう年齢もいっておられなかったかと思うんだけど」
「先代の聖女様は30歳で亡くなられた」
「さ、30歳? 病気か何かで?」
「…いや。リリアナは新聞を読んでないのか?」
「ここに来てからは全く読めてないし、聖女様が亡くなった当日はそれどころじゃなかったのよ」
(まさか私が聖女に選ばれるだなんて思ってもみなかったから、聖女様がどうして亡くなったかとかは知らないのよね)
リリアナがそんな事を思いながらアッシュに答えると、彼は難しい顔をして答える。
「新聞では病死と書かれてるが、実際は精神を病んだらしい」
「精神を病んだ…?」
「魔道士の知り合いが言うには、闇落ちしたんじゃないかって言われてる」
「ど、どういう事!? というか、闇落ちって聖女なのに聖女じゃなくなるみたいな感じの事!?」
「それを言うと、オーブリーもフェナンも闇落ち間近だろうな」
アッシュの言葉を聞いたリリアナが不安そうな顔をしたのに気付いたアッシュは、リリアナの頭にぽんぽんと手を置いて言う。
「俺はお前がそうならない様にするためでもあるんだ。お前の心も守る」
「……ありがとう。でも、私も闇落ち? しない様に頑張るけれど、そうなってしまう様な何かがあるのかしら?」
「俺達が崇めている神がいるように邪神もいる。今の世の中は人を羨んだり蔑んだりする奴が増えて、他人の幸せを祈ったり、神様に感謝するよりも自分の事ばかり考えて他人の不幸を願う奴が増えた。そのせいで神の力のバランスが崩れてるんじゃないかと言われてる」
「邪神の力が強くなってるって事?」
「だと思う」
(邪神だなんて初めて聞いたわ。それにしても、どうしてアッシュの知り合いの魔道士の人はそんなに詳しいのかしら?)
聞こうと思ったリリアナだったが、アッシュがリリアナを部屋まで送り届けると、用事があると言ってさっさと行ってしまったので、フェナンとどこかで会うのが嫌だったリリアナは、大人しく部屋で過ごす事にしたのだった。
次の日から、フェナンは学園のリリアナのクラスまでやって来ては、彼女に訴え続けた。
彼女の部屋に行こうとしてもアッシュに阻止されるからだ。
「悪かったよ、リリアナ。許してほしい。なんて言ったらいいのかな。ああ、そうだ。火遊びだ! 火遊びだったんだよ」
(そんな言葉を大きな声で言わないでよ)
フェナンが毎日やって来るせいで、リリアナは昼休みはゆっくり友人と過ごす事ができなかった。
その都度、アッシュが彼を追い払ってくれたが、アッシュも生理現象はあるし、席を外している事もある。
そこを狙ってやってくるフェナンの執念に、ここ最近ではクラスメイトからフェナンが可哀想だという声が出始めていた。
「もう許してさしあげたら? フェナン様はあれだけ謝っているんですから」
あの一件から10日経ったある日、クラスの学級委員長であり、容姿端麗で噂のアプリコット・ラウロ公爵令嬢からそう言われ、リリアナは無言で苦笑した。
すると、ラウロ公爵令嬢はその苦笑が気に入らないと言わんばかりに金色の巻き髪を触りながら、リリアナを睨み付けた。
「笑い事じゃないですわ。フェナン様は素敵な方です。そんな方が浮気をしてもおかしくはないと思いますの」
「フェナンは聖騎士なんですよ? 聖なる力が使えない方でも浮気は駄目だと言われていますのにおかしくないんですか?」
「聖騎士様はいつだって私達の為に頑張ってくださってますのよ? 浮気は子孫を残そうとする行為ですわ。それを受け止めてあげられなくてどうなさるの?」
ラウロ公爵令嬢はこれ見よがしにため息を吐くと、リリアナに会う為にやって来たフェナンを見て、表情を輝かせた
(私との婚約を解消してくれたら、浮気にはならないんだけど…。あと子孫を残そうとするなら、オーブリーでいいじゃないの)
こういう相手には何を言っても無駄だと諦めたリリアナは、フェナンに夢中になっているラウロ公爵令嬢を見て小さく息を吐いた。
するとすぐに、アッシュがリリアナに問いかけてきた。
「神様と話は出来たのか?」
「ううん。会話をするどころじゃなかったの。聖女様らしき人の声で何か教えてくれようとしたところでフェナンが来たから」
「そうか。人払いをさせておけば良かった。悪い」
「アッシュが謝る事じゃないわ。祈りの間にあんな大声を出して入ってくる方がおかしいのよ」
アッシュにそう答えてから、リリアナは聖女の言葉を思い出す。
(全然、お話を聞く事が出来なかったけれど、私に闇に落ちないで、と言っていたわよね? あれってどういう事なのかしら)
「ねえ、アッシュ」
「ん?」
「闇に落ちるって聞いて、どんな事か想像はつく?」
「…たぶん。ただ、俺も人伝に聞いた話だけど、それでもいいか?」
「うん。闇に落ちるっていう言葉を今まで聞いた事がなかったら、私も調べた事もないから」
「教会内にある図書館では、そっち系の事が書いてある本はなかったんだが、魔道士仲間から聞いた事があるんだ。リリアナの前の3の数字を持つ聖女と関わりがあった奴がいてさ」
そこまで聞いたところで、リリアナはふと気になった事があり、忘れない内に聞いておく事にする。
「そういえば、先代の聖女様はどうしてお亡くなりに? たしか、そう年齢もいっておられなかったかと思うんだけど」
「先代の聖女様は30歳で亡くなられた」
「さ、30歳? 病気か何かで?」
「…いや。リリアナは新聞を読んでないのか?」
「ここに来てからは全く読めてないし、聖女様が亡くなった当日はそれどころじゃなかったのよ」
(まさか私が聖女に選ばれるだなんて思ってもみなかったから、聖女様がどうして亡くなったかとかは知らないのよね)
リリアナがそんな事を思いながらアッシュに答えると、彼は難しい顔をして答える。
「新聞では病死と書かれてるが、実際は精神を病んだらしい」
「精神を病んだ…?」
「魔道士の知り合いが言うには、闇落ちしたんじゃないかって言われてる」
「ど、どういう事!? というか、闇落ちって聖女なのに聖女じゃなくなるみたいな感じの事!?」
「それを言うと、オーブリーもフェナンも闇落ち間近だろうな」
アッシュの言葉を聞いたリリアナが不安そうな顔をしたのに気付いたアッシュは、リリアナの頭にぽんぽんと手を置いて言う。
「俺はお前がそうならない様にするためでもあるんだ。お前の心も守る」
「……ありがとう。でも、私も闇落ち? しない様に頑張るけれど、そうなってしまう様な何かがあるのかしら?」
「俺達が崇めている神がいるように邪神もいる。今の世の中は人を羨んだり蔑んだりする奴が増えて、他人の幸せを祈ったり、神様に感謝するよりも自分の事ばかり考えて他人の不幸を願う奴が増えた。そのせいで神の力のバランスが崩れてるんじゃないかと言われてる」
「邪神の力が強くなってるって事?」
「だと思う」
(邪神だなんて初めて聞いたわ。それにしても、どうしてアッシュの知り合いの魔道士の人はそんなに詳しいのかしら?)
聞こうと思ったリリアナだったが、アッシュがリリアナを部屋まで送り届けると、用事があると言ってさっさと行ってしまったので、フェナンとどこかで会うのが嫌だったリリアナは、大人しく部屋で過ごす事にしたのだった。
次の日から、フェナンは学園のリリアナのクラスまでやって来ては、彼女に訴え続けた。
彼女の部屋に行こうとしてもアッシュに阻止されるからだ。
「悪かったよ、リリアナ。許してほしい。なんて言ったらいいのかな。ああ、そうだ。火遊びだ! 火遊びだったんだよ」
(そんな言葉を大きな声で言わないでよ)
フェナンが毎日やって来るせいで、リリアナは昼休みはゆっくり友人と過ごす事ができなかった。
その都度、アッシュが彼を追い払ってくれたが、アッシュも生理現象はあるし、席を外している事もある。
そこを狙ってやってくるフェナンの執念に、ここ最近ではクラスメイトからフェナンが可哀想だという声が出始めていた。
「もう許してさしあげたら? フェナン様はあれだけ謝っているんですから」
あの一件から10日経ったある日、クラスの学級委員長であり、容姿端麗で噂のアプリコット・ラウロ公爵令嬢からそう言われ、リリアナは無言で苦笑した。
すると、ラウロ公爵令嬢はその苦笑が気に入らないと言わんばかりに金色の巻き髪を触りながら、リリアナを睨み付けた。
「笑い事じゃないですわ。フェナン様は素敵な方です。そんな方が浮気をしてもおかしくはないと思いますの」
「フェナンは聖騎士なんですよ? 聖なる力が使えない方でも浮気は駄目だと言われていますのにおかしくないんですか?」
「聖騎士様はいつだって私達の為に頑張ってくださってますのよ? 浮気は子孫を残そうとする行為ですわ。それを受け止めてあげられなくてどうなさるの?」
ラウロ公爵令嬢はこれ見よがしにため息を吐くと、リリアナに会う為にやって来たフェナンを見て、表情を輝かせた
(私との婚約を解消してくれたら、浮気にはならないんだけど…。あと子孫を残そうとするなら、オーブリーでいいじゃないの)
こういう相手には何を言っても無駄だと諦めたリリアナは、フェナンに夢中になっているラウロ公爵令嬢を見て小さく息を吐いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,496
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる