【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?

風見ゆうみ

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19 もうお忘れですか?

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 引っ越してまだ二十日も経っていないこともあり、エントランスホールは、殺風景な場所だった。
 真正面の大階段に赤いカーペットが敷かれているだけで、壁には何も飾られていない。

 押しかけてきたエマオとフラワは、リミアリア大事な話があるから、立ち話ではなく、応接室で話がしたいと訴えたが、リミアリアは拒否した。

「申し訳ございませんが、ここは貴族の方が来るような場所ではありません。お引き取りいただけますか」
「リミアリア、これは命令よ! 私たちをちゃんともてなしなさい!」

 ピンク色のプリンセスラインのドレスを着たフラワは、いら立ちを隠さずに叫んだ。
 というのも、リミアリアが思った以上に良い暮らしをしているように見えたからだ。
 きっと、古くて今にも倒れそうな小さな家に暮らしていると思っていたのだ。

 リミアリアが呆れた表情で口を開こうとすると、フラワの隣で暗い顔をしていたエマオが、フラワの頬を平手打ちした。

「きゃあっ!」

 悲鳴を上げて、フラワは柔らかな赤いカーペットの上に倒れ込んだ。
 突然の出来事にリミアリアは驚いて言葉を失ったが、我に返ると、すぐにフラワに声をかけた。

「だ、大丈夫ですか」
「大丈夫じゃないわよ! エマオ様、一体どういうつもりなの!?」
「どうもこうもない! このクソ女が!」

 エマオは床に座っているフラワの背中を蹴ると、リミアリアのほうに振り返った。

「リミアリア、どうしてアドルファス殿下と仲が良いことを俺に知らせてくれなかったんだ?」

(アドルファス様と私が友人だったとわかったから手のひらを返したのね)

 媚びた笑いをしながら近寄ってくるエマオに不快感を覚えて、距離をとって答える。

「話をしようにも、あなたはフラワ様を連れて帰ってきただけでなく、離婚を求め、私をイランデス邸から追い出しましたよね?」
「アドルファス殿下との仲を知っていれば、そんなことはしなかった。なあ、リミアリア、俺と復縁しないか? 本当に反省しているんだ」
「お断りします」

 躊躇なく断ったが、エマオも必死だった。

「なあ、頼むよ。俺を助けると思って復縁してくれよ!」
「リミアリアと復縁ですって? エマオ様、あなた、何を言っているんですか!」

 リミアリアが反応する前に、フラワが立ち上がって叫んだ。

「うるさい! お前には関係ないだろう! 大体、お前が俺を誘惑するからこんなことになったんだ! 反省しろ!」
「なんですって!? あなたが断れば良かっただけではないですか! 意思の弱さを私のせいにするのはやめてくれませんか!」

 くだらないやり取りに嫌気がさし、リミアリアは大きなため息を吐いた。
 そして、まずはエマオに話しかける。

「エマオ様、あなたは私を捨てたのですよね?」
「い、いや、その、それは」

 しどろもどろになったエマオに冷たい視線を送りながら問いかける。

「捨てたものに用などない。あなたはそう、おっしゃっていました。自分で口にしたことですのに、もうお忘れですか?」
「そ、それはっ」

 言い返す言葉が見つからず、エマオは情けない顔でリミアリアを見つめた。

  
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