婚約解消は諦めましたが、平穏な生活を諦めるつもりはありません!

風見ゆうみ

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21 囮にしませんか?

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 ラルフ様は早速、転移の魔道具で王都へ出向かれていきました。
 そして、残った私の元へはパメル様からの手紙が届き、内容を読んでみると、直接謝りたいので時間をとってほしいと書かれてありました。
 突然、押しかけてきて、文句だけ言って帰っていかれたばかりなのに、また会いたいと言われましても、ただでさえ会いたくないのに、同じ日にまた会いたくもありません。
 都合がついたら、連絡を入れるという返事だけ返して、今日は何もせずにのんびり過ごす事にしました。
 
 だって、おかしいじゃないですか。
 私はまだ婚約者であって、妻ではありません。
 この家に慣れるためにと、招待されてやって来ているだけですから。
 滞在中は何も考えずに、ゆっくり過ごそうと思っていた目論見は全く果たせていません。
 
 陛下もお暇な方ではないですから、ラルフ様も行かれてすぐに謁見は出来ないでしょう。
 ですから、ラルフ様のお帰りは遅くなるはず。
 お帰りまではゆっくりするんです!
 
 ゆっくりする…、そう思っていたのですが、パメル様の手紙攻撃が止みませんでした。
 屋敷に来ても門前払いされるとわかっているのかもしれませんが、律儀に返せば、それに対しての返事が届きますし、無視していると、何通も返事を催促する手紙が来るのです。

「ソラ。もう破り捨てても良いでしょうか」
「処理しておきますから貸して下さい。昼寝でもされます?」
「お腹いっぱいになってから眠る事にします」

 考えたら、朝からあまりご飯を食べられていません。
 なんだかんだとしている内に、時間はもう昼過ぎです。
 ダイニングルームに向かうと、私一人分のご飯が用意されていましたが、私の好物ばかり用意されていて、胸をはずませていると、メイドが言いました。

「リノア様がお疲れの様ですので、元気になるものを、とお願いしましたら、料理長が献立を考えて下さったようです。リノア様のお好きなものばかり用意してくれたみたいですね」

 料理人の方が自ら気付いてくださったのか、それともラルフ様が私の好きなものや嫌いなものをお伝えしていたのかはわかりませんが、スープに入っている具材もいつもなら苦手なものが入っていたりするのですが、それは一つも入っておりません。
 
 なんというか、ワガママスープなのです。

「後でお礼を言いにいかなければいけませんね」
「喜ばれると思います」

 メイドと笑いあっていると、扉がノックされ、ソラが入ってきました。
 ソラの彼女であるメイドと話をしていたので、ソラは一瞬、彼女の方に笑いかけたあと、仕事中だからか、すぐに私に視線を戻しました。
 
 別に少し話すくらいは良いですのに。

 メイドはメイドで「失礼します」と一声かけて、部屋を出ていってしまいました。

「どうせ2人の仲は知っているのですから、会話くらいしても良いのですよ」
「仕事の事を忘れてしまいそうなので」
「ソラが忘れても彼女が思い出しますよ」
「…うるさいな。それより、ランドン辺境伯からバカみたいに贈り物が届いてるぞ」

 ソラの言葉を聞いて、せっかくの嬉しい気持ちが吹き飛んでしまいましたが、まだ、まだです。
 美味しい料理が待っています。

「全て送り返して下さい。私への謝罪は必要ありませんから」
「承知しました」

 ソラは頷くと、一礼して部屋を出ていきました。
 プレゼントで機嫌を取ろうと思っておられるのかもしれませんが、元々、許すつもりもないのに、プレゼントで機嫌が直るはずがありませんし、そんな風に思われている事自体も腹が立ちます。
 それからは気を取り直して食事をして、幸せな気持ちになった後は、自分へのご褒美として、ゆっくり休む事にしました。

 ランドン辺境伯からのプレゼント攻撃や、パメル様からの手紙攻撃は私が休んでいる間もあったようですが、さすがに夕方にもなるとそれも無くなり、屋敷内はやっと静かになりました。
 ラルフ様のお屋敷の使用人の方にまで迷惑をかけてしまったので、本当に申し訳ないのです。
 もちろん、それを謝ると、私のせいじゃないと言って下さいましたが。

 結局、その日の夜遅くにラルフ様は屋敷に戻られたようですが、その時の私は彼の戻りに気付く事なく、呑気に朝まで眠ってしまっておりました。
 次の日、ラルフ様にお話を聞いてみると、今まで多めに見ていた所もあるけれど、今回は伯爵家に飛び火した事もあり、何らかの処罰を下すという話で終わったようです。
 どんな罰を下すかについては、すぐには決められないという事で、その話は後日という事になったそうです。

「処分が決まるまではランドンは軟禁状態になる。あと、ソラから聞いたが、アイツがリノア宛に色々と送ってきているらしいが、金を自由に使わせないようにしておいたから、もう送られてくる事はないだろう」
「もったいないですし、それが良いのです」

 頷いてから、あのお方について聞いてみる。

「カーミラ様はどうなります?」
「母は関与を否定するだろうな。そこは証拠を残さないように上手く立ち回っているようだ。手紙も読んだ後は燃えるような魔法をかけているだろうから」
「私だってカーミラ様の立場でしたらそうしますもの」
「けれど、このままではいけないだろう。どうしたら母を罪に問えるか考えてるんだが」

 苦しそうな表情をされるラルフ様に、一つ提案をしてみる。

「私を囮にしませんか?」

 ラルフ様は眉をひそめて私を見られました。
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