【完結】もう二度とあなたを選ぶことはありません

風見ゆうみ

文字の大きさ
3 / 28

3  親友たちの願い 

しおりを挟む
 何も知らない様子の使用人たちには部屋から出てもらい、朝食を取りながら話を聞いて知ってしまった。
 悲しいことに、私はやはりガンチャに殺されていた。表向きはロビンたちが話していた通り、使用人に殺されていて、殺害理由は陰で私にいじめられ、それを恨んでのことらしい。

「アリアナはそんなことをする子じゃないと訴えたが、本人が自供しているから騎士団は捜査する気はないようだった」
「その時のガンチャはどんな様子でしたか?」
「彼も彼の家族もお前の亡骸に縋りついて泣いていたよ」
「よくもそんなことができたわね。信じられないわ」

 ガンチャはショックを受けているお父様たちに『愛する妻を守れなかった』と泣いて詫びたということも教えてくれた。

「自分で手にかけておいてよく言うわ。で、確認なんですけど、ガンチャは私が亡くなったあと、レイネ様に近づきましたか?」
「……レイネ様?」

 不思議そうにするお父様の代わりにココナが答えてくれる。

「キマコマ公爵夫人のレイネ様ですよね? たしか、その時は実家に帰っておられたようですが、何かあったのですか?」
「実は私がガンチャに殺された理由は……」

 あの時のことを思い出すと体の震えが止まらない。だけど、もう二度とあんな目に遭わないようにするには、家族に伝えておかなければならないと思った。
 レイネ様がガンチャの初恋の相手であり、彼が彼女のことをずっと思い続けていたことを初めて家族に伝えると、四人全員が驚いた顔をした。

「奴に好きな女性がいたなんて、先代の辺境伯からは何も聞いていなかった」

 呟くお父様に私は苦笑して謝る。

「ごめんなさい。私は前々から知っていました。でも、彼と婚約できたことが嬉しくて、ガンチャのお父様には黙っていてもらったんです」

 ガンチャのお父様は二年前に何者かによって毒殺されている。毒見役が捕まったけれど、彼女は何もしていないと訴えていた。彼女の話は信じてもらえず、流星群の十日後に処刑されることが決まっていた。今の時期なら、裁判が長引いていて判決はまだかもしれない。

 平気で人を殺せるような人たちだもの。毒見役を罠にはめていたとしてもおかしくない。
 昔の私はそんなことを思いつきもしなかったが、毒見をしたあとに毒が入れられたのであればどうだろうか。そして、それが可能なのは一緒に食事を共にした家族なのではないかしら。

 そう思うとゾッとした。

 カラムとココナには学園を休んでもらい、これから起こっていくはずの出来事を時系列に書き出していくことにした。

 現在は私が殺される一年と少し前で、毒見役の裁判はまだ終わっておらず、私とガンチャの結婚は、今日から十日後だった。

「今から婚約破棄ができる理由を作るとしたら、やっぱり先代の辺境伯が亡くなった件しかないでしょうか」
「そうだな。ガンチャに好きな人がいたことをアリアナが知っていたのなら、今さら感が出てしまうから理由にはならないだろう」
「ガンチャの気持ちを認めていたことは確かですが、殺されるくらいなら結婚したくないですし、そんなことで人を殺す神経の持ち主と結婚なんてしたくありません」

 百年の恋も冷めるというのはこんな感じだろうか。それとも、本当の愛なら殺されても冷めないもの?

 きっとそれは人それぞれよね。私は自分のために平気で人を殺せる人なんて好きじゃない。あんなにも彼のことが好きだったのに、びっくりするくらい今はそんな気持ちは消え失せた。
 家族のためにも私はガンチャとは絶対に結婚しない。
 毒見役との面会を四日後に取り付けたその日の晩、私のもとに手紙が届いた。

 一通は親友の伯爵令嬢のルーナ・ローシス。そして、もう一通は幼馴染の公爵令息、アルフことアルフレッド・レイズからだった。

 二人共が私の生存確認をしてくれていて、アルフは話したいことがあるから、三日後に私の家に来ると書かれていた。

 もしかしたら、二人にも私たちのように記憶があるのかも。ということは、二人も私の家族のように一生に一度の願いを私のために使ってくれたのかもしれない。

 そう思うと、目の奥がじんと熱くなった。みんなの願いを無駄になんかしない。

 心に決めた私は、次の日に会う約束をしているガンチャとの戦いに備えることにした。
しおりを挟む
感想 62

あなたにおすすめの小説

無関心夫の手を離した公爵夫人は、異国の地で運命の香りと出会う

佐原香奈
恋愛
建国祭の夜、冷徹な公爵セドリック・グランチェスターは、妻セレスティーヌを舞踏会に残し、早々に会場を後にした。 それが、必死に縋り付いていた妻が、手を離す決意をさせたとも知らず、夜中まで仕事のことしか考えていなかった。 セドリックが帰宅すると、屋敷に残されていたのは、一通の離縁届と脱ぎ捨てられた絹の靴。そして、彼女が置いていった嗅いだことのない白檀の香りだけだった。 すべてを捨てて貿易都市カリアへ渡った彼女は、名もなき調香師「セレス」として覚醒する。 一方、消えた妻を追うセドリックの手元に届いたのは、かつての冷たい香りとは似て非なる、温かな光を宿した白檀の香水。 「これは、彼女の復讐か、それとも再生か——」 執念に駆られ、見知らぬ地へ降り立った公爵が目にしたのは、異国の貿易王の隣で、誰よりも自由に、見たこともない笑顔で微笑む「他人」となった妻の姿だった。 誤字、修正漏れ教えてくださってありがとうございます!

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

婚約者に突き飛ばされて前世を思い出しました

天宮有
恋愛
伯爵令嬢のミレナは、双子の妹キサラより劣っていると思われていた。 婚約者のルドノスも同じ考えのようで、ミレナよりキサラと婚約したくなったらしい。 排除しようとルドノスが突き飛ばした時に、ミレナは前世の記憶を思い出し危機を回避した。 今までミレナが支えていたから、妹の方が優秀と思われている。 前世の記憶を思い出したミレナは、キサラのために何かすることはなかった。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

婚約破棄された公爵令嬢ですが、戻らなかっただけです

鷹 綾
恋愛
王太子カイル殿下から、社交界の場で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リュシエンヌ。 理由は―― 「王太子妃には華が必要だから」。 新たに選ばれたのは、愛らしく無邪気な義妹セシリア。 誰もが思った。 傷ついた令嬢は泣き、縋り、やがて戻るのだと。 けれどリュシエンヌは、ただ一言だけ告げる。 「戻りません」 彼女は怒らない。 争わない。 復讐もしない。 ただ――王家を支えるのをやめただけ。 流通は滞り、商会は様子を見始め、焦った王太子は失点を重ねる。 さらに義妹の軽率な一言が決定打となり、王太子妃候補の座は静かに消えた。 強いざまあとは、叫ぶことではない。 自らの選択で、自らの立場を削らせること。 そして彼女は最後まで戻らない。 支えない。 奪わない。 ――選ばれなかったのではない。 彼女が、選ばなかったのだ。 これは、沈黙で勝つ公爵令嬢の物語。

婚約七年目、愛する人と親友に裏切られました。

テンテン
恋愛
男爵令嬢エミリアは、パーティー会場でレイブンから婚約破棄を宣言された。どうやら彼の妹のミラを、エミリアがいじめたことになっているらしい。エミリアはそのまま断罪されるかと思われたが、彼女の親友であるアリアが声を上げ……

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

処理中です...