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24 元婚約者の願いは叶わない ②
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門のすぐ近くに守衛が交代で休憩するための小屋がある。外の声が聞こえやすいように薄い木の板で建てられているため、窓の部分以外、外を見ることはできないが話を聞く分にはちょうど良かった。
アルフと一緒に庭園のほうから向かい、小屋の前で彼と別れた。
それまでの間、ガンチャは「脅しじゃないぞ! 俺は本気だ! 早くアリアナを呼んでこい」などと叫んでいたが、それに対して兵士が応えている声は聞こえてこなかった。
呆れてものも言えないといったところかもね。
私が小屋の中に入ったところで、アルフがガンチャに話しかける声が聞こえてきた。
「アリアナに何の用? というか、キマコマ公爵夫人のように接近禁止命令が出ていないからって、他の女性に迷惑をかけるのはおかしいと思わない?」
「あなただって、アリアナの家に長い間、滞在しているだろう! 人のことは言えないはずだ!」
「正確に言えば、アリアナの家ではなくてスサウ辺境伯の家だよね。僕はスサウ辺境伯から許可をもらってるよ」
「俺は辺境伯だ! 公爵家の嫡男だからって偉そうにするな!」
今まではアルフに媚びへつらっていたことが多かったけど、今はそんな余裕はないらしい。
「そうだね。僕自身にはまだ公爵という爵位はない。ただ、あなたがその話をするならば辺境伯らしい態度をとってほしいものですね」
「お、俺は……っ、アリアナと話がしたいだけだ! とにかくアリアナを呼んでこい!」
「どうしてですか?」
「ど、どうしてって! 話がしたいんだ! 見ろ! アリアナと話ができないんなら、俺はこの場で死ぬぞ!」
「場所を移動してください」
「……は?」
どうしても外が気になって、閉められたカーテンの隙間から覗いてみる。アルフは背を向けているけれど、ガンチャの姿は確認することができ、間抜けな顔をしているのがよくわかった。
「アリアナと話をさせる気はありません」
「お、お前にそんな権利は」
「婚約者になることが決まったんです。ですから、アリアナに近づく虫には容赦しません」
アルフの表情は見えないけれど、恐ろしい顔をしているのか、ガンチャの顔色が一気に青くなった。
「ウロイカ辺境伯、あなたが死ぬのは勝手です。ですが、ここは他人の家の前ですよ? 迷惑ですよね。それに動かなくなったあなたを片付ける人が気の毒じゃないですか」
「な……、なんて薄情な!」
ガンチャは自分の首に短剣を当てたまま叫んだ。
「言っておきますが、あなたが相手だからいうのです。真剣に死を選ぼうとしている人間には言いませんよ」
「俺だって真剣だ!」
「そうですか」
そう言うと、アルフは素早くガンチャに近づき、短剣を持ったほうの手首を掴んで首から引き離すと、反対の手で首に手刀を入れた。
「あっ!」
という一声と共に、ガンチャはふらりと前に倒れ込み、それと同時にアルフは手首を離して後ろに避けた。
どさりとガンチャが地面に倒れ込むと、素早く短剣を足で蹴って遠ざける。
公爵令息だから護身術なども学んだのだろうけど、ガンチャ、簡単にやられすぎじゃない? 昔は強かったのに、今はどうなの? 学生時代が華だったってとこかしら。
「短剣を持ってスサウ辺境伯家に乗り込もうとしたということで、騎士隊には連絡を入れてもらっているから、騎士隊が来るまでは手足を縛っておいてもらえるかな」
「「承知いたしました!」」
アルフに指示された二人の守衛の声は、なぜか弾んでいるような気がした。
アルフと一緒に庭園のほうから向かい、小屋の前で彼と別れた。
それまでの間、ガンチャは「脅しじゃないぞ! 俺は本気だ! 早くアリアナを呼んでこい」などと叫んでいたが、それに対して兵士が応えている声は聞こえてこなかった。
呆れてものも言えないといったところかもね。
私が小屋の中に入ったところで、アルフがガンチャに話しかける声が聞こえてきた。
「アリアナに何の用? というか、キマコマ公爵夫人のように接近禁止命令が出ていないからって、他の女性に迷惑をかけるのはおかしいと思わない?」
「あなただって、アリアナの家に長い間、滞在しているだろう! 人のことは言えないはずだ!」
「正確に言えば、アリアナの家ではなくてスサウ辺境伯の家だよね。僕はスサウ辺境伯から許可をもらってるよ」
「俺は辺境伯だ! 公爵家の嫡男だからって偉そうにするな!」
今まではアルフに媚びへつらっていたことが多かったけど、今はそんな余裕はないらしい。
「そうだね。僕自身にはまだ公爵という爵位はない。ただ、あなたがその話をするならば辺境伯らしい態度をとってほしいものですね」
「お、俺は……っ、アリアナと話がしたいだけだ! とにかくアリアナを呼んでこい!」
「どうしてですか?」
「ど、どうしてって! 話がしたいんだ! 見ろ! アリアナと話ができないんなら、俺はこの場で死ぬぞ!」
「場所を移動してください」
「……は?」
どうしても外が気になって、閉められたカーテンの隙間から覗いてみる。アルフは背を向けているけれど、ガンチャの姿は確認することができ、間抜けな顔をしているのがよくわかった。
「アリアナと話をさせる気はありません」
「お、お前にそんな権利は」
「婚約者になることが決まったんです。ですから、アリアナに近づく虫には容赦しません」
アルフの表情は見えないけれど、恐ろしい顔をしているのか、ガンチャの顔色が一気に青くなった。
「ウロイカ辺境伯、あなたが死ぬのは勝手です。ですが、ここは他人の家の前ですよ? 迷惑ですよね。それに動かなくなったあなたを片付ける人が気の毒じゃないですか」
「な……、なんて薄情な!」
ガンチャは自分の首に短剣を当てたまま叫んだ。
「言っておきますが、あなたが相手だからいうのです。真剣に死を選ぼうとしている人間には言いませんよ」
「俺だって真剣だ!」
「そうですか」
そう言うと、アルフは素早くガンチャに近づき、短剣を持ったほうの手首を掴んで首から引き離すと、反対の手で首に手刀を入れた。
「あっ!」
という一声と共に、ガンチャはふらりと前に倒れ込み、それと同時にアルフは手首を離して後ろに避けた。
どさりとガンチャが地面に倒れ込むと、素早く短剣を足で蹴って遠ざける。
公爵令息だから護身術なども学んだのだろうけど、ガンチャ、簡単にやられすぎじゃない? 昔は強かったのに、今はどうなの? 学生時代が華だったってとこかしら。
「短剣を持ってスサウ辺境伯家に乗り込もうとしたということで、騎士隊には連絡を入れてもらっているから、騎士隊が来るまでは手足を縛っておいてもらえるかな」
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