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23 元婚約者の願いは叶わない ①
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アルフと腹を割って話をした結果、薄々、感じていたが、彼は私のことが昔から好きでいてくれたことがわかった。
「ガンチャに夢中になっていた時は、まったく気づけなかったわ。本当にごめんなさい」
「いや。昔はなるべく君に近づかないようにしていたし、学生時代の後半は学年も違って、余計に話す機会がなくなったしね。僕も忘れようと思って頑張っていたんだ」
「……そうだったのね。あの時の私は、あなたに思いを打ち明けられても、気持ちを返すことはできなかったし、忘れようとしてくれたのは、私への優しさでもあるわよね」
「まあ、意気地なしだったというのもあるけど」
アルフは苦笑して続ける。
「こんなことがあったからって、無理に好きになってもらおうなんて思っていない。ただ、君に幸せになってもらいたいだけなんだ」
きっとこんな言葉はガンチャの口からは、何度人生をやり直しても聞くことができない。本当に昔の私は馬鹿だわ。過去の出来事や思い出を大事にしてくれていただけでなく、私自身のことも大切に思ってくれていた人がいたのに、まったく気づいていなかった。
「ありがとう、アルフ」
「礼を言われることじゃないよ。一歩間違えたら、ウロイカ辺境伯と同じだからね」
「人を想い続けることと付きまとうことは違うわよ」
「それはまあ、そうだけどさ」
「実は、あなたのお父様から、私のお父様に連絡があったの。だから、こんな話をしたんだけど」
これだけで、アルフのお父様の話が何だったか、アルフは察したようだった。
「誤解しないでほしい。僕が動いたのはそれが目的だったわけじゃない」
「わかっているわ。あなたがそういう人だったら、もっと早くに同じことをしていたでしょう?」
アルフの両親も私の死を弔んで、流星群の日に願いをかけてくれたようで、私が殺されてしまったことを覚えている。嫁ぐのなら、私の死を願う人よりも私の幸せを願ってくれる人のほうがいいに決まっている。
「お話を受けるつもりなんだけど、アルフは本当にいいの?」
「そ、それはもちろん!」
不安そうにしていたアルフの表情が一変して満面の笑みを浮かべたから、私もつられて笑顔になった。
******
アルフとの婚約を正式に決めた次の日の朝、アルフや家族と一緒に朝食をとっていた時のことだった。執事がやって来て、とんでもないことを報告してきた。
「ウロイカ辺境伯が門の前にいらっしゃったので、お帰りを願ったところ、自分の喉元に短剣を押し当てて、アリアナ様が話をしてくれなければ、ここで死ぬと叫び始めたのです」
「ええっ!?」
私と弟妹は驚いて聞き返したけれど、お父様とお母様は眉をひそめただけだった。
「僕が様子を見に行ってきますよ」
そう言ってアルフが立ち上がったので、私も立ち上がる。
「アルフ、私も行くわ」
「駄目だよ。彼は君と話すのが目的なんだろう? 君が行ったら彼の思うつぼだし、婚約者に付きまとう蝿は駆除、じゃない。今日のところは追い払ってくるよ」
「迷惑をかけてごめんなさい。それから、ありがとう」
「迷惑をかけているのは君じゃない。ウロイカ辺境伯だからね」
アルフに任せるのはいいとして、ただ待っているだけでは嫌だわ。
そう考えた私は、ガンチャから見えない所で二人の話を聞くことにした。
「ガンチャに夢中になっていた時は、まったく気づけなかったわ。本当にごめんなさい」
「いや。昔はなるべく君に近づかないようにしていたし、学生時代の後半は学年も違って、余計に話す機会がなくなったしね。僕も忘れようと思って頑張っていたんだ」
「……そうだったのね。あの時の私は、あなたに思いを打ち明けられても、気持ちを返すことはできなかったし、忘れようとしてくれたのは、私への優しさでもあるわよね」
「まあ、意気地なしだったというのもあるけど」
アルフは苦笑して続ける。
「こんなことがあったからって、無理に好きになってもらおうなんて思っていない。ただ、君に幸せになってもらいたいだけなんだ」
きっとこんな言葉はガンチャの口からは、何度人生をやり直しても聞くことができない。本当に昔の私は馬鹿だわ。過去の出来事や思い出を大事にしてくれていただけでなく、私自身のことも大切に思ってくれていた人がいたのに、まったく気づいていなかった。
「ありがとう、アルフ」
「礼を言われることじゃないよ。一歩間違えたら、ウロイカ辺境伯と同じだからね」
「人を想い続けることと付きまとうことは違うわよ」
「それはまあ、そうだけどさ」
「実は、あなたのお父様から、私のお父様に連絡があったの。だから、こんな話をしたんだけど」
これだけで、アルフのお父様の話が何だったか、アルフは察したようだった。
「誤解しないでほしい。僕が動いたのはそれが目的だったわけじゃない」
「わかっているわ。あなたがそういう人だったら、もっと早くに同じことをしていたでしょう?」
アルフの両親も私の死を弔んで、流星群の日に願いをかけてくれたようで、私が殺されてしまったことを覚えている。嫁ぐのなら、私の死を願う人よりも私の幸せを願ってくれる人のほうがいいに決まっている。
「お話を受けるつもりなんだけど、アルフは本当にいいの?」
「そ、それはもちろん!」
不安そうにしていたアルフの表情が一変して満面の笑みを浮かべたから、私もつられて笑顔になった。
******
アルフとの婚約を正式に決めた次の日の朝、アルフや家族と一緒に朝食をとっていた時のことだった。執事がやって来て、とんでもないことを報告してきた。
「ウロイカ辺境伯が門の前にいらっしゃったので、お帰りを願ったところ、自分の喉元に短剣を押し当てて、アリアナ様が話をしてくれなければ、ここで死ぬと叫び始めたのです」
「ええっ!?」
私と弟妹は驚いて聞き返したけれど、お父様とお母様は眉をひそめただけだった。
「僕が様子を見に行ってきますよ」
そう言ってアルフが立ち上がったので、私も立ち上がる。
「アルフ、私も行くわ」
「駄目だよ。彼は君と話すのが目的なんだろう? 君が行ったら彼の思うつぼだし、婚約者に付きまとう蝿は駆除、じゃない。今日のところは追い払ってくるよ」
「迷惑をかけてごめんなさい。それから、ありがとう」
「迷惑をかけているのは君じゃない。ウロイカ辺境伯だからね」
アルフに任せるのはいいとして、ただ待っているだけでは嫌だわ。
そう考えた私は、ガンチャから見えない所で二人の話を聞くことにした。
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