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20 元夫の執念 ②
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一緒にパーティーに行くということで、シリュウ兄さまからドレスをプレゼントしてもらった。人様の誕生日パーティーに行くのに、私までプレゼントをもらえるなんてと喜んだら、贈ることが普通なのだと言われてしまった。
レンジロード様から、プレゼントをもらったのは離婚してからが初めてだと言ったら、それはおかしいも呆れられた。
婚約者の女性に男性がプレゼントを贈ることは当たり前のことらしい。今まで贈られたことがなかったから、そんなことを考えたことがなかった。
「考えてみれば、今までわたしがレンジロード様に貢いでいたんですよね」
パーティー会場に向かう馬車の中で、その時のことを思い出しながら呟くと、シリュウ兄さまが苦笑する。
「いきなりどうしたの」
「ごめんなさい。先日、シリュウ兄さまからドレスやアクセサリーをプレゼントしてもらった時にした会話を思い出していました」
「ああ。贈り物の話か。非常識な話だよな。しかも、ブロフコス侯爵は贈り物をするのが普通だとわかっていて、君に何もしていない」
「ルイーダ様にしか贈り物はしたくないんだと思います」
「そういえば、今日、ルイーダが自分からブロフコス侯爵に話しかけると言ってたよ」
「そうなんですか!?」
レンジロード様と接触するということは、あの時の絵の感想を伝えてくれるのだと思う。その場面を見れるなんて楽しみ!
性格が悪いと言われてもいいわ!
レンジロード様の反応が見たい!
「リコットは素直だね」
想像しただけで笑顔になっていたからか、シリュウ兄さまに笑われてしまった。
「こんな性格だから、レンジロード様を好きでいられたんだと思います」
「ああ、そうかもしれないね。でも、もう忘れたんだろう?」
「はい!」
元気よく頷くと、シリュウ兄さまは笑みを浮かべたまま言う。
「今日のドレス、とても似合ってるよ」
「シリュウ兄さまからプレゼントしていただいたからだと思います」
今までに着たことのなかった鮮やかな赤色のドレスは、シリュウ兄さまの瞳の色だ。着替え終えて、姿見で自分の姿を見た時に、予想外に似合っていることに驚いた。
今まではレンジロード様の好みで寒色系の色ばかり着ていた。だから、暖色系のドレスを着た自分なんて想像もしたことがなかった。
「うーん。俺が贈ったからじゃなくて、リコット自身が可愛いのと、ドレス職人の腕が良いのかな」
「か、からかわないでください!」
「からかってなんかないよ。リコットは可愛いよ」
「ひええぇ。ありがとうございます!」
可愛いだなんて異性から言われたことが初めてで熱くなった頬を押さえて言うと、シリュウ兄さまは声をあげて笑った。
******
今日の主役である伯爵は、レンジロード様の繋がりで知り合った人だ。レンジロード様のそっけない態度を気にしないくらいに大らかな人で、わたしにもとても優しい人だから、レンジロード様が出席しているとわかっていても、顔を見て誕生日のお祝いをしたかった。
開始前のパーティー会場の中に入ると、薄い青色のドレスを着たルイーダ様と黒のタキシードを着たジリン様が近づいてきた。
「ブロフコス侯爵はもういらっしゃってますわ。パーティーが始まる前に、わたくしの用事を済ませてしまってもよろしいかしら?」
「もしかして、待っていてくださったのですか?」
「ええ。リコット様の描いた絵ですもの。できれば、本人の前で感想を述べたいですわ」
「ありがとうございます!」
ルイーダ様のこの様子だと、レンジロード様にとってはショックな、わたしにとっては楽しい感想を言ってくれそうな気がする。
胸を躍らせ、少し離れた場所からレンジロード様に近づくルイーダ様たちを見守っていると、レンジロード様が彼女に気がついて驚いた顔をした。
こうなった時のレンジロード様は周りが見えていないので、シリュウ兄さまと一緒に近づいていく。
すると、ルイーダ様が声をかける。
「ブロフコス侯爵、ごきげんよう」
「ご、ごご、ごきげんにょう」
盛大に噛んだので、わたしとシリュウ兄さま、そして、ルイーダ様の隣に立っているジリン様は同時に吹き出した。
「あの、今、お時間よろしいでしょうか」
「かまわない」
こほんと咳ばらいをしたレンジロード様に、ルイーダ様は柔らかな笑みを浮かべたまま話し始める。
「リコット様から、先日絵を見せていただいたんです。そのことでお話ししたいのですが」
「な、な、何の絵を!?」
「ブロフコス侯爵がシリュウ様に」
「や、や、やめ、やめてくれ!」
レンジロード様は頭を抱え、子供のようにいやいやと首を横に振った。
レンジロード様から、プレゼントをもらったのは離婚してからが初めてだと言ったら、それはおかしいも呆れられた。
婚約者の女性に男性がプレゼントを贈ることは当たり前のことらしい。今まで贈られたことがなかったから、そんなことを考えたことがなかった。
「考えてみれば、今までわたしがレンジロード様に貢いでいたんですよね」
パーティー会場に向かう馬車の中で、その時のことを思い出しながら呟くと、シリュウ兄さまが苦笑する。
「いきなりどうしたの」
「ごめんなさい。先日、シリュウ兄さまからドレスやアクセサリーをプレゼントしてもらった時にした会話を思い出していました」
「ああ。贈り物の話か。非常識な話だよな。しかも、ブロフコス侯爵は贈り物をするのが普通だとわかっていて、君に何もしていない」
「ルイーダ様にしか贈り物はしたくないんだと思います」
「そういえば、今日、ルイーダが自分からブロフコス侯爵に話しかけると言ってたよ」
「そうなんですか!?」
レンジロード様と接触するということは、あの時の絵の感想を伝えてくれるのだと思う。その場面を見れるなんて楽しみ!
性格が悪いと言われてもいいわ!
レンジロード様の反応が見たい!
「リコットは素直だね」
想像しただけで笑顔になっていたからか、シリュウ兄さまに笑われてしまった。
「こんな性格だから、レンジロード様を好きでいられたんだと思います」
「ああ、そうかもしれないね。でも、もう忘れたんだろう?」
「はい!」
元気よく頷くと、シリュウ兄さまは笑みを浮かべたまま言う。
「今日のドレス、とても似合ってるよ」
「シリュウ兄さまからプレゼントしていただいたからだと思います」
今までに着たことのなかった鮮やかな赤色のドレスは、シリュウ兄さまの瞳の色だ。着替え終えて、姿見で自分の姿を見た時に、予想外に似合っていることに驚いた。
今まではレンジロード様の好みで寒色系の色ばかり着ていた。だから、暖色系のドレスを着た自分なんて想像もしたことがなかった。
「うーん。俺が贈ったからじゃなくて、リコット自身が可愛いのと、ドレス職人の腕が良いのかな」
「か、からかわないでください!」
「からかってなんかないよ。リコットは可愛いよ」
「ひええぇ。ありがとうございます!」
可愛いだなんて異性から言われたことが初めてで熱くなった頬を押さえて言うと、シリュウ兄さまは声をあげて笑った。
******
今日の主役である伯爵は、レンジロード様の繋がりで知り合った人だ。レンジロード様のそっけない態度を気にしないくらいに大らかな人で、わたしにもとても優しい人だから、レンジロード様が出席しているとわかっていても、顔を見て誕生日のお祝いをしたかった。
開始前のパーティー会場の中に入ると、薄い青色のドレスを着たルイーダ様と黒のタキシードを着たジリン様が近づいてきた。
「ブロフコス侯爵はもういらっしゃってますわ。パーティーが始まる前に、わたくしの用事を済ませてしまってもよろしいかしら?」
「もしかして、待っていてくださったのですか?」
「ええ。リコット様の描いた絵ですもの。できれば、本人の前で感想を述べたいですわ」
「ありがとうございます!」
ルイーダ様のこの様子だと、レンジロード様にとってはショックな、わたしにとっては楽しい感想を言ってくれそうな気がする。
胸を躍らせ、少し離れた場所からレンジロード様に近づくルイーダ様たちを見守っていると、レンジロード様が彼女に気がついて驚いた顔をした。
こうなった時のレンジロード様は周りが見えていないので、シリュウ兄さまと一緒に近づいていく。
すると、ルイーダ様が声をかける。
「ブロフコス侯爵、ごきげんよう」
「ご、ごご、ごきげんにょう」
盛大に噛んだので、わたしとシリュウ兄さま、そして、ルイーダ様の隣に立っているジリン様は同時に吹き出した。
「あの、今、お時間よろしいでしょうか」
「かまわない」
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「リコット様から、先日絵を見せていただいたんです。そのことでお話ししたいのですが」
「な、な、何の絵を!?」
「ブロフコス侯爵がシリュウ様に」
「や、や、やめ、やめてくれ!」
レンジロード様は頭を抱え、子供のようにいやいやと首を横に振った。
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