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閑話 オルザベートが思うこと
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私の名前は、オルザベート・トゥッチ。
男爵令嬢だけど、今は伯爵家に転がり込んでいる。
小さい頃、私はいじめられていた。
友達もいなくて、ずっと一人ぼっちだった。
そんな私に声をかけてくれたのが、ザーター領から引っ越してきたばかりのエアリスだった。
エアリスも最初はいじめられたりしていたけれど、自分の祖父母を馬鹿にされると、男子だろうが女子だろうがおかまいなく食って掛かっていたため、その内、エアリスをいじめる者はいなくなった。
友達もいっぱいいるのに、エアリスはブスでいじめられている私に声を掛けてくれた。
その日から、エアリスは私にとっての光だった。
エアリスの親友だと胸を張って言えるように、興味のなかったメイクなども頑張った。
「ねえ、エアリス。私達はずっと友達よね?」
「もちろん!」
そう言って、あの頃のあなたは笑ってくれた。
なのに…、あなたには私以外に特別がある事を知ってしまった。
それは、私達が15歳になった時だった。
長期休暇の際に、2人で街のお祭りに出かけた時の事。
手を繋ごうとしたけれど、エアリスは嫌がった。
別におかしい事なんかじゃない。
友人同士で手を繋ぐ人なんてたくさんいるのに…。
それだけでも苦しかったのに、彼女はある人物を見て、私のそばから離れた。
「エアリス」
「エド!」
人がたくさんいるというのに、彼女に向かって手を広げた少年に、エアリスは恥ずかしげもなく抱きついた。
そして、彼も彼女の背中に腕を回した。
「こっちに来るなら来るって連絡してよ」
「すまない。ちょうどこっちに用事があって…。会いに来られるかわからなかったから連絡しなかった」
「時間は大丈夫なの?」
「ああ。だからここに来てる。君の家に行ったら君はお祭りに出かけてるって言われて、そのまま一緒にお祭りに行って、今日は泊まっていけって言われたよ」
「嬉しい!」
2人は人の邪魔にならないように、道の端に避けて話をしていたけれど、エアリスが私と一緒に来ていた事に思い出してくれた。
「ごめんなさい。友達と来ているの。オルザベート、紹介するわね。彼はエドワード・カイジスよ。名前はさすがに知ってるかしら?」
「は、はじめまして、カイジス公爵令息にお会いできて光栄です。友人のオルザベー卜・トゥッチと申します」
「エアリスから話は聞いてるよ。仲良くしてくれてありがとう」
そう言ったエドワード様の顔は腹が立つほどに整っていた。
そして、そんな彼を見るエアリスの目は完全に彼に恋する少女のものだった。
嫌よ。
エアリスがいなくなったら、私は1人になってしまう。
そんなの嫌。
私からエアリスを奪わないで。
「エアリス、お祭りはどうするの?」
「ああ、そうよね。エド、申し訳ないんだけど、友達と一緒に来ていたのよ。だから、私はこのままオルザベー卜とお祭りを楽しむわ」
「せっかく会えたのに残念だけど、友達は大事だ。気を付けて楽しんで。また、後で会おう」
そう言って、エドワード様は、エアリスの頬にキスをした。
「もう!」
エアリスはエドワード様を押しのけると、私の隣に立って言った。
「待たせてしまってごめんなさい。行きましょう」
「ええ!」
エアリスと一緒に歩き出す。
エアリスが友情を選んでくれて嬉しかった。
だけど、エアリスは家に帰ったら、彼と一緒にいる。
それが怖かった。
エアリスをとられてしまいそうで。
「ねえ、エアリス。今日、あなたのお家に泊まってもいいかしら?」
「ごめんね。さすがにそれは無理だと思うわ。あなたのお家の人だっていい顔はしないはずよ」
私の家族の事なんてどうでも良かった。
だって、私がわがままを言っても、家族は私を見捨てたりなんかしないから。
この日から、私にとってエドワード様は敵になった。
それからしばらくして、私は彼の悪い噂を流してやった。
彼には実は恋人がいて、エアリスはキープなのだと。
「エドはそんな人じゃないわ。確認してみる」
「待ってエアリス。浮気をしている人が素直にそうと認めるわけはないじゃない。それにね…、私、見たの。彼が、噂の彼女とキスをしている所を」
作り話だった。
ちゃんと調べられればバレる嘘だった。
だから、彼女に言った。
「ご両親同士が喧嘩になっても大変だから、あなたのお父様とお母様にも相談しては駄目よ? 可哀想なアイリス。あなたには私がいるからね」
そして、次の日から、なぜかはわからないけれど、彼女はエドワード様の話を一切しなくなった。
私の気持ちが天に通じた。
そう信じて疑わなかった。
なのに、今度はロンバートが現れた。
最初はロンバートを嫌っていたエアリスはいつの日か、彼に夢中になり、そして、付き合い始めると、卒業後すぐに結婚した。
私からエアリスを奪うなんて許せない。
だから、私はエアリスからロンバートを寝取った。
こんな男と一緒にいないで、私とこれからも一緒に生きてほしかった。
なのに、子供が出来てしまった。
でも、エアリスがロンバートを愛していた事を知っていた私は、こんな事があったとしても、彼女が彼から離れないと思った。
だから、好都合だと思った。
ロンバートという邪魔者はいるけれど、3人で一緒に暮らせるのではないかと。
だけど違った。
エアリスはロンバートだけではなく、私の元からも離れていった。
駄目よ、エアリス。
私とあなたは友達なの。
ずっと一緒にいなくちゃいけないのよ。
男爵令嬢だけど、今は伯爵家に転がり込んでいる。
小さい頃、私はいじめられていた。
友達もいなくて、ずっと一人ぼっちだった。
そんな私に声をかけてくれたのが、ザーター領から引っ越してきたばかりのエアリスだった。
エアリスも最初はいじめられたりしていたけれど、自分の祖父母を馬鹿にされると、男子だろうが女子だろうがおかまいなく食って掛かっていたため、その内、エアリスをいじめる者はいなくなった。
友達もいっぱいいるのに、エアリスはブスでいじめられている私に声を掛けてくれた。
その日から、エアリスは私にとっての光だった。
エアリスの親友だと胸を張って言えるように、興味のなかったメイクなども頑張った。
「ねえ、エアリス。私達はずっと友達よね?」
「もちろん!」
そう言って、あの頃のあなたは笑ってくれた。
なのに…、あなたには私以外に特別がある事を知ってしまった。
それは、私達が15歳になった時だった。
長期休暇の際に、2人で街のお祭りに出かけた時の事。
手を繋ごうとしたけれど、エアリスは嫌がった。
別におかしい事なんかじゃない。
友人同士で手を繋ぐ人なんてたくさんいるのに…。
それだけでも苦しかったのに、彼女はある人物を見て、私のそばから離れた。
「エアリス」
「エド!」
人がたくさんいるというのに、彼女に向かって手を広げた少年に、エアリスは恥ずかしげもなく抱きついた。
そして、彼も彼女の背中に腕を回した。
「こっちに来るなら来るって連絡してよ」
「すまない。ちょうどこっちに用事があって…。会いに来られるかわからなかったから連絡しなかった」
「時間は大丈夫なの?」
「ああ。だからここに来てる。君の家に行ったら君はお祭りに出かけてるって言われて、そのまま一緒にお祭りに行って、今日は泊まっていけって言われたよ」
「嬉しい!」
2人は人の邪魔にならないように、道の端に避けて話をしていたけれど、エアリスが私と一緒に来ていた事に思い出してくれた。
「ごめんなさい。友達と来ているの。オルザベート、紹介するわね。彼はエドワード・カイジスよ。名前はさすがに知ってるかしら?」
「は、はじめまして、カイジス公爵令息にお会いできて光栄です。友人のオルザベー卜・トゥッチと申します」
「エアリスから話は聞いてるよ。仲良くしてくれてありがとう」
そう言ったエドワード様の顔は腹が立つほどに整っていた。
そして、そんな彼を見るエアリスの目は完全に彼に恋する少女のものだった。
嫌よ。
エアリスがいなくなったら、私は1人になってしまう。
そんなの嫌。
私からエアリスを奪わないで。
「エアリス、お祭りはどうするの?」
「ああ、そうよね。エド、申し訳ないんだけど、友達と一緒に来ていたのよ。だから、私はこのままオルザベー卜とお祭りを楽しむわ」
「せっかく会えたのに残念だけど、友達は大事だ。気を付けて楽しんで。また、後で会おう」
そう言って、エドワード様は、エアリスの頬にキスをした。
「もう!」
エアリスはエドワード様を押しのけると、私の隣に立って言った。
「待たせてしまってごめんなさい。行きましょう」
「ええ!」
エアリスと一緒に歩き出す。
エアリスが友情を選んでくれて嬉しかった。
だけど、エアリスは家に帰ったら、彼と一緒にいる。
それが怖かった。
エアリスをとられてしまいそうで。
「ねえ、エアリス。今日、あなたのお家に泊まってもいいかしら?」
「ごめんね。さすがにそれは無理だと思うわ。あなたのお家の人だっていい顔はしないはずよ」
私の家族の事なんてどうでも良かった。
だって、私がわがままを言っても、家族は私を見捨てたりなんかしないから。
この日から、私にとってエドワード様は敵になった。
それからしばらくして、私は彼の悪い噂を流してやった。
彼には実は恋人がいて、エアリスはキープなのだと。
「エドはそんな人じゃないわ。確認してみる」
「待ってエアリス。浮気をしている人が素直にそうと認めるわけはないじゃない。それにね…、私、見たの。彼が、噂の彼女とキスをしている所を」
作り話だった。
ちゃんと調べられればバレる嘘だった。
だから、彼女に言った。
「ご両親同士が喧嘩になっても大変だから、あなたのお父様とお母様にも相談しては駄目よ? 可哀想なアイリス。あなたには私がいるからね」
そして、次の日から、なぜかはわからないけれど、彼女はエドワード様の話を一切しなくなった。
私の気持ちが天に通じた。
そう信じて疑わなかった。
なのに、今度はロンバートが現れた。
最初はロンバートを嫌っていたエアリスはいつの日か、彼に夢中になり、そして、付き合い始めると、卒業後すぐに結婚した。
私からエアリスを奪うなんて許せない。
だから、私はエアリスからロンバートを寝取った。
こんな男と一緒にいないで、私とこれからも一緒に生きてほしかった。
なのに、子供が出来てしまった。
でも、エアリスがロンバートを愛していた事を知っていた私は、こんな事があったとしても、彼女が彼から離れないと思った。
だから、好都合だと思った。
ロンバートという邪魔者はいるけれど、3人で一緒に暮らせるのではないかと。
だけど違った。
エアリスはロンバートだけではなく、私の元からも離れていった。
駄目よ、エアリス。
私とあなたは友達なの。
ずっと一緒にいなくちゃいけないのよ。
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