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9−1 行方
ビアラがロードウェル伯爵家に行ったその日、夜に帰ってくると言っていた彼女が、昼過ぎに帰ってきたので、慌てて出迎えに行くと、彼女の顔色が真っ青なので驚いて声を上げた。
「ビアラ、一体どうしたの!?」
「ロードウェル家の邪気か何かにやられたっぽいわ。たぶん、ゆっくりしていたら治ると思うから、気にしないで大丈夫よ。…といっても、仕事にならないから早退させてもらったけど」
奪うようにしてビアラが持っていた鞄を持つと、彼女は力ない笑みでお礼を言ってくれたあと、部屋に向かって歩き出す。
辛そうにしている時に聞くのは申し訳ないけれど、気になって尋ねてみる。
「今、あの家はどうなってるの?」
「最悪な状態ね。私は独学で魔法を覚えただけだから、魔力の流れをはっきりと感じる事はできないけど、たぶん、たぶんよ? ロードウェル家に魔法使いがいたと思う」
「あ、うん。そっか。あなたに伝えるのを忘れてたわ! それはそうで合ってるんだけど、でも、いるんじゃなくて、いた、なの?」
「じゃないかな。もしかして、あの家にいないだけかもしれないけど」
言い方が過去形な事が気になって聞いてみると、ビアラが首を縦に振る。
顔色がやはり良くならないので、彼女を部屋まで送り届けて、鞄を指定された場所に置くと、自分の部屋からネックレスを取ってきて、またビアラの部屋に向かった。
「ビアラ、上手くいくかわからないけれど、試してみてくれない?」
「…何をしたらいいの?」
「この石に魔力を込めてみて」
「…わかった」
ベッドの上に座っている彼女の手のひらの上にのせると、ビアラは頷いて軽く握りしめた。
私とビアラが仲良くなったきっかけは、私が彼女の魔力量に気付いたから。
ビアラは幼い頃は、自分が魔法を使えるほどの魔力がある事を知らなかった。
だから、彼女は魔力をうまく体内に留めておく事が出来ず、わかる人間には彼女の魔力がダダ漏れしている事がわかった。
私は小さい頃に祖父母から、多少のコントロールの仕方を教えてもらっていたから、そうはならなかったのだけど、ビアラの場合は家族の死のショックと家族を殺した相手への怒りで、彼女の体内に眠っていた魔力が目覚めたようなので、彼女にそれを教えてあげられる大人がいなかった。
だから、おせっかいかもしれないけれど、私から声をかけたのを思い出した。
そういえば、学園にもう1人、公言はしていないけれど、魔力の高い人間がいた気がする。
あれは誰だった?
生徒ではなかった?
どうして思い出せないの?
「エアリス、魔力を込めてみたけど反応はないみたい」
ビアラに話しかけられて我に返る。
「やっぱり、私の魔力、もしくはお兄様の魔力じゃないと駄目なのかしら。もしくは邪気のせいか」
答えてから、彼女からネックレスを返してもらい、自分の手で握りしめて、お祖父様達にお願いして、ビアラの身体にまとわりついていた嫌な何かを消し去ってもらった。
「ありがとう。一気に楽になったわ」
「良かった。でも、あまり無理はしないでね」
「大丈夫よ。トゥッチさんが話を早く切り上げてくれて助かったわ。あの人に苦しんでる所は見られたくなかったし。あなたの元旦那は苦しんでたけれど、トゥッチさんは苦しんでいる様子がなかったのよね。もしかしたら、一緒に住んでるわけじゃないのかしら?」
「ロードウェル家のメイドに私達と連絡をとってくれている子がいるんだけど、その子が言うには、今、使用人の間で原因不明の体調不良が流行っていて、伯爵家から出て、しばらくすると治るみたいなの。オルザベートもそれがあるから、普段は実家に戻ったりしているか、別邸にいるのかもしれないわね」
「ずっとあの家にいればいいのに、って思うけど、お腹に子供がいるのよね? それを考えるとしょうがないかぁ」
ビアラはそう言うと、立ち上がって続ける。
「エドワード様に報告しないといけないわよね。今はお仕事中かしら?」
「そうだと思うけど、話を先に聞きたいんじゃないかしら。あ、あとビアラ。忘れないうちに聞きたいんだけど」
「何?」
「私達が学園に通っている時に、違うクラスの生徒だったと思うんだけど、魔力の高い人間がいた様な気がするの」
「…あんまり他人に興味がないから、詳しくは覚えてないけど、もしかして、あの人じゃない? 珍しくトゥッチさんがエアリス以外と話をしていたから印象に残ってるの。そういえば、あの人の事をディランも気にしてたわ。それに、そう言われてみれば、ロードウェルの家で感じた魔力の感覚があの人に似てるかも…」
ロンバート家の話に繋がりそうなので、一度、ここでこの話題は止めて、エドのいる執務室に向かって歩き始める。
歩きながら、学生時代に戻った気分で、ビアラに聞いてみる。
「ねえ、ビアラ」
「何?」
「いま、ディラン様とどうなってるの?」
「どうもこうもなってない!」
ビアラが焦った顔をして答える。
こんなに動揺しているという事は、何かあったのかも!
「え? だって連絡をとってるんでしょ?」
「それとこれとは別」
「ねぇ、ねぇ、聞きたいんだけど! エドに話を終えたら恋バナ聞かせてね?」
「そんなに恋バナがしたいの? じゃあ、私はあなたがエドワード様にどれだけメロメロだったかを話す事にするわ」
「それは別にしなくてもいい!」
「何言ってるの。あなたがしたがってる恋バナじゃない」
そんな状況ではないのかもしれないけれど、エドの執務室に着くまでの会話は、私にとっては久しぶりに楽しく笑えた気がした。
「ビアラ、一体どうしたの!?」
「ロードウェル家の邪気か何かにやられたっぽいわ。たぶん、ゆっくりしていたら治ると思うから、気にしないで大丈夫よ。…といっても、仕事にならないから早退させてもらったけど」
奪うようにしてビアラが持っていた鞄を持つと、彼女は力ない笑みでお礼を言ってくれたあと、部屋に向かって歩き出す。
辛そうにしている時に聞くのは申し訳ないけれど、気になって尋ねてみる。
「今、あの家はどうなってるの?」
「最悪な状態ね。私は独学で魔法を覚えただけだから、魔力の流れをはっきりと感じる事はできないけど、たぶん、たぶんよ? ロードウェル家に魔法使いがいたと思う」
「あ、うん。そっか。あなたに伝えるのを忘れてたわ! それはそうで合ってるんだけど、でも、いるんじゃなくて、いた、なの?」
「じゃないかな。もしかして、あの家にいないだけかもしれないけど」
言い方が過去形な事が気になって聞いてみると、ビアラが首を縦に振る。
顔色がやはり良くならないので、彼女を部屋まで送り届けて、鞄を指定された場所に置くと、自分の部屋からネックレスを取ってきて、またビアラの部屋に向かった。
「ビアラ、上手くいくかわからないけれど、試してみてくれない?」
「…何をしたらいいの?」
「この石に魔力を込めてみて」
「…わかった」
ベッドの上に座っている彼女の手のひらの上にのせると、ビアラは頷いて軽く握りしめた。
私とビアラが仲良くなったきっかけは、私が彼女の魔力量に気付いたから。
ビアラは幼い頃は、自分が魔法を使えるほどの魔力がある事を知らなかった。
だから、彼女は魔力をうまく体内に留めておく事が出来ず、わかる人間には彼女の魔力がダダ漏れしている事がわかった。
私は小さい頃に祖父母から、多少のコントロールの仕方を教えてもらっていたから、そうはならなかったのだけど、ビアラの場合は家族の死のショックと家族を殺した相手への怒りで、彼女の体内に眠っていた魔力が目覚めたようなので、彼女にそれを教えてあげられる大人がいなかった。
だから、おせっかいかもしれないけれど、私から声をかけたのを思い出した。
そういえば、学園にもう1人、公言はしていないけれど、魔力の高い人間がいた気がする。
あれは誰だった?
生徒ではなかった?
どうして思い出せないの?
「エアリス、魔力を込めてみたけど反応はないみたい」
ビアラに話しかけられて我に返る。
「やっぱり、私の魔力、もしくはお兄様の魔力じゃないと駄目なのかしら。もしくは邪気のせいか」
答えてから、彼女からネックレスを返してもらい、自分の手で握りしめて、お祖父様達にお願いして、ビアラの身体にまとわりついていた嫌な何かを消し去ってもらった。
「ありがとう。一気に楽になったわ」
「良かった。でも、あまり無理はしないでね」
「大丈夫よ。トゥッチさんが話を早く切り上げてくれて助かったわ。あの人に苦しんでる所は見られたくなかったし。あなたの元旦那は苦しんでたけれど、トゥッチさんは苦しんでいる様子がなかったのよね。もしかしたら、一緒に住んでるわけじゃないのかしら?」
「ロードウェル家のメイドに私達と連絡をとってくれている子がいるんだけど、その子が言うには、今、使用人の間で原因不明の体調不良が流行っていて、伯爵家から出て、しばらくすると治るみたいなの。オルザベートもそれがあるから、普段は実家に戻ったりしているか、別邸にいるのかもしれないわね」
「ずっとあの家にいればいいのに、って思うけど、お腹に子供がいるのよね? それを考えるとしょうがないかぁ」
ビアラはそう言うと、立ち上がって続ける。
「エドワード様に報告しないといけないわよね。今はお仕事中かしら?」
「そうだと思うけど、話を先に聞きたいんじゃないかしら。あ、あとビアラ。忘れないうちに聞きたいんだけど」
「何?」
「私達が学園に通っている時に、違うクラスの生徒だったと思うんだけど、魔力の高い人間がいた様な気がするの」
「…あんまり他人に興味がないから、詳しくは覚えてないけど、もしかして、あの人じゃない? 珍しくトゥッチさんがエアリス以外と話をしていたから印象に残ってるの。そういえば、あの人の事をディランも気にしてたわ。それに、そう言われてみれば、ロードウェルの家で感じた魔力の感覚があの人に似てるかも…」
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「ねえ、ビアラ」
「何?」
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「どうもこうもなってない!」
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こんなに動揺しているという事は、何かあったのかも!
「え? だって連絡をとってるんでしょ?」
「それとこれとは別」
「ねぇ、ねぇ、聞きたいんだけど! エドに話を終えたら恋バナ聞かせてね?」
「そんなに恋バナがしたいの? じゃあ、私はあなたがエドワード様にどれだけメロメロだったかを話す事にするわ」
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