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2 信用してくれない婚約者
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トーマス殿下から男性と話すなと言われたこともあり、私は女子生徒しかいない学園に通うことになりました。
これで満足してもらえると思っていましたら、たとえ女子生徒しかいない学園に通っていたとしても、男性の先生はいます。トーマス殿下は先生と会話することも許せないと言い出したのです。
ハズレー王国の両陛下は、トーマス殿下の言っていることは気にしなくても良いと言ってくださいましたが、私の両親はトーマス殿下の望み通りにしろと言い、私に男性教師と話をすることも禁じました。
同じクラスに私の侍女になる予定の伯爵令嬢、ファルナ・ノジルを編入させ私を監視するように命じたため、私の学園生活はとても息苦しいものになっています。
ファルナはウェーブのかかった金色の髪に碧色の瞳を持つ、とても美しい少女で、彼女も私と同じ年齢だというのに、かなり大人びた考えを持っていました。
ランフェスとは関わり合いがなくなり、トーマス殿下が恐れていることはなくなりました。これでやっと安心してくださるかと思いましたが無理でした。
トーマス殿下の十歳の誕生日を境に、彼がハズレー王国内の貴族の女性を口説いて回っているという噂が流れ始めたのです。このことで両親に罵られた私は、本人に会いに行き確認してみますと、案内されたガゼボの中でトーマス殿下は悪びれる様子もなくこう言ったのです。
「僕が魅力的な男になれば君は浮気しなくて良くなる。女性との経験人数を増やすのは全部君のためだよ」
「……納得できません」
「もしかして嫉妬してくれているのかな?」
こちらは怒っているというのに、喜んでいるトーマス殿下にいら立ちを覚えました。ですが、その感情を表に出すことは許されていません。
「嫉妬ではありません。婚約者としてお話ししているのです」
「なんだ。君はまだ僕を愛していないのか」
トーマス殿下はため息を吐くと、私の顎を掴んで上向けます。
「僕は次は間違えない。だから、君も間違えないように僕のことを早く思い出してくれ」
こんなことをされたら余計に思い出したくありません。
無言でトーマス殿下を見つめると、彼は頬を赤らめて私の顎を放してくれました。
「そんなに見つめないでくれ。照れるじゃないか」
「改めてお願いいたします。トーマス殿下が他の女性と噂になるたびに、私の印象は悪くなっていきます。トーマス殿下のことを思い出すように努力いたしますので、女性を口説くのはやめていただけませんか」
「……どうしようかなぁ」
トーマス殿下は自分の顎に指を当てて考える仕草をします。本当に考えているとは思えません。
「トーマス殿下、あなたが女性を口説くのは私に魅力がないからだと家族に責められているんです。どうしてそのようなことをするのですか? 私は浮気なんていたしません! もし、私のことが嫌いなのであれば、婚約を解消してくださいませ!」
たとえ、家から追い出されることになったとしても、馬鹿にされ続けるのは嫌です。
本音を伝えると、トーマス殿下の表情は無になり、冷たい目で私を見つめます。
「……ユミリー、嘘をつくな。正直に話をしてくれ」
「私は嘘はついていません」
「嘘だ! 君は他の誰かのことを好きになったんだろう!? だから、僕との婚約を解消したいんだ! 好きな人は誰だ!? ランフェスか!? そうなのか!?」
トーマス殿下は身を乗り出し、私の首を両手で掴んで絞め上げてきました。
「ち……っ、ちが……いますっ」
「トーマス殿下! おやめください!」
近くにいた兵士が慌てて止めに入ってくれたため、トーマス殿下の手から逃れることができました。何度か咳き込み、息を整えてから尋ねます。
「……トーマス殿下、あなたは次は間違えないとおっしゃっていましたよね?」
「……そうだよ。次は間違えない。今だってそうだ。だから、君を殺さなかった」
興奮した様子のトーマス殿下はそう言うと、私に背を向けて去っていきました。
婚約者の首を絞めておいて、謝りもしないだなんて信じられません。いえ、首を絞めること自体考えられないことです。
今回のことは、ハズレー王国の両陛下にも伝わり、私とトーマス殿下の婚約を解消する話が持ち上がった数日後。
ハズレー王国の両陛下が毒殺されるという痛ましい事件が起きたのでした。
これで満足してもらえると思っていましたら、たとえ女子生徒しかいない学園に通っていたとしても、男性の先生はいます。トーマス殿下は先生と会話することも許せないと言い出したのです。
ハズレー王国の両陛下は、トーマス殿下の言っていることは気にしなくても良いと言ってくださいましたが、私の両親はトーマス殿下の望み通りにしろと言い、私に男性教師と話をすることも禁じました。
同じクラスに私の侍女になる予定の伯爵令嬢、ファルナ・ノジルを編入させ私を監視するように命じたため、私の学園生活はとても息苦しいものになっています。
ファルナはウェーブのかかった金色の髪に碧色の瞳を持つ、とても美しい少女で、彼女も私と同じ年齢だというのに、かなり大人びた考えを持っていました。
ランフェスとは関わり合いがなくなり、トーマス殿下が恐れていることはなくなりました。これでやっと安心してくださるかと思いましたが無理でした。
トーマス殿下の十歳の誕生日を境に、彼がハズレー王国内の貴族の女性を口説いて回っているという噂が流れ始めたのです。このことで両親に罵られた私は、本人に会いに行き確認してみますと、案内されたガゼボの中でトーマス殿下は悪びれる様子もなくこう言ったのです。
「僕が魅力的な男になれば君は浮気しなくて良くなる。女性との経験人数を増やすのは全部君のためだよ」
「……納得できません」
「もしかして嫉妬してくれているのかな?」
こちらは怒っているというのに、喜んでいるトーマス殿下にいら立ちを覚えました。ですが、その感情を表に出すことは許されていません。
「嫉妬ではありません。婚約者としてお話ししているのです」
「なんだ。君はまだ僕を愛していないのか」
トーマス殿下はため息を吐くと、私の顎を掴んで上向けます。
「僕は次は間違えない。だから、君も間違えないように僕のことを早く思い出してくれ」
こんなことをされたら余計に思い出したくありません。
無言でトーマス殿下を見つめると、彼は頬を赤らめて私の顎を放してくれました。
「そんなに見つめないでくれ。照れるじゃないか」
「改めてお願いいたします。トーマス殿下が他の女性と噂になるたびに、私の印象は悪くなっていきます。トーマス殿下のことを思い出すように努力いたしますので、女性を口説くのはやめていただけませんか」
「……どうしようかなぁ」
トーマス殿下は自分の顎に指を当てて考える仕草をします。本当に考えているとは思えません。
「トーマス殿下、あなたが女性を口説くのは私に魅力がないからだと家族に責められているんです。どうしてそのようなことをするのですか? 私は浮気なんていたしません! もし、私のことが嫌いなのであれば、婚約を解消してくださいませ!」
たとえ、家から追い出されることになったとしても、馬鹿にされ続けるのは嫌です。
本音を伝えると、トーマス殿下の表情は無になり、冷たい目で私を見つめます。
「……ユミリー、嘘をつくな。正直に話をしてくれ」
「私は嘘はついていません」
「嘘だ! 君は他の誰かのことを好きになったんだろう!? だから、僕との婚約を解消したいんだ! 好きな人は誰だ!? ランフェスか!? そうなのか!?」
トーマス殿下は身を乗り出し、私の首を両手で掴んで絞め上げてきました。
「ち……っ、ちが……いますっ」
「トーマス殿下! おやめください!」
近くにいた兵士が慌てて止めに入ってくれたため、トーマス殿下の手から逃れることができました。何度か咳き込み、息を整えてから尋ねます。
「……トーマス殿下、あなたは次は間違えないとおっしゃっていましたよね?」
「……そうだよ。次は間違えない。今だってそうだ。だから、君を殺さなかった」
興奮した様子のトーマス殿下はそう言うと、私に背を向けて去っていきました。
婚約者の首を絞めておいて、謝りもしないだなんて信じられません。いえ、首を絞めること自体考えられないことです。
今回のことは、ハズレー王国の両陛下にも伝わり、私とトーマス殿下の婚約を解消する話が持ち上がった数日後。
ハズレー王国の両陛下が毒殺されるという痛ましい事件が起きたのでした。
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