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25 次は間違えないと言われましても ③ (トーマス視点)
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今日はランフェスとユミリーの結婚式の日の前日だ。数日前から僕たちはディリング公爵領内にある宿屋にやって来ている。このことは、ランフェスたちもさすがに知っているだろうし、警戒しているだろうから、僕は大人しくしていなければならない。
セレスは本当にすごい。僕が疑われない方法でユミリーを殺したいと言うと、魔法で人を操ってくれると言ってくれた。セレスと出会ったことは不幸中の幸いだ。だが、一つ気になることがあった。
「セレス、人の心を操れる魔法が使えるなら、どうして僕の心を自分のものにしようとしないんだ?」
「あら。私にだってプライドはあるのよ。でも、あなたがそうしてほしいって言うんなら、遠慮なくそうさせてもらうけど?」
「いや。別にそんなことは望んでない。というよりも、絶対にしないでくれ」
「残念。まあ、安心してよ。一人ぼっちでいつ死んでも良いと思っていた私に生きていこうと思わせてくれたのはあなたよ。どんなことがあっても、私はあなたに付いていくわ」
「そうか。なら、僕が不幸になったら、また時間を巻き戻してくれないか」
そうお願いした時、お手洗いに行っていたファルナが戻ってきたので、話は中断となった。返事は聞けなかったが、セレスは僕に夢中だ。僕が頼めば、また時間を巻き戻してくれるだろう。
「料理人に魔法をかけるには、どうすれば良いんだ?」
「遠隔も可能だけれど、魔法をかける時は相手の近くにいないと難しいわ」
「なら、結婚式の当日、自宅からディリング家に通っている人物を捕まえよう」
「そうね」
セレスと打ち合わせていると、ファルナが尋ねてくる。
「どうしてユミリー様を狙うのですか? ランフェス様が憎いのであれば、ランフェス様を殺してしまえば良いかと思うのですけれど」
「そんなことをしたら、ランフェスが苦しむ様子が見れないじゃないか」
毒を盛られて苦しむランフェスを見ることも楽しいだろう。でも、その場に僕がいることは難しい。近しい人間以外でも彼の悲しむ顔が見られるのは、誰かの不幸があった時だろう。たとえ葬式に行けなくても、彼はどこかに必ず現れる。以前、ユミリーが死んだ時のランフェスの顔は酷いものだった。また、あの顔が見られるのかと思うと、楽しみで仕方がない。
「そういうことですのね。では、ランフェス様の奥様になる方がユミリー様ではなかった時はどうされるおつもりですの?」
「ランフェスが選ぶ女性はユミリー以外いないはずだよ」
「そんなことはわからないわよ。ちゃんと確認したほうが良いわ」
ファルナに答えた僕に、セレスは難しい顔をして言った。
「確認って言ったってどうすれば良いんだよ」
「私に任せてちょうだい」
「そ、そうか。セレスなら魔法で何でもできるものな」
「ええ、そうよ」
セレスは笑顔で頷くと、悔しそうにしているファルナに声を掛ける。
「あら、どうしたの。自分は役に立てないからって悔しいの?」
「あなたは本当に嫌な性格ですわね」
「嫌な性格でも何でもいいわ。トーマスを私のものにできればそれでいいもの」
「わたくしは魔法は使えませんけれど、トーマス様のためなら何でもできます!」
そう言ったファルナの目に、セレスへの憎しみの炎が見えたような気がした。こうなってくると、ファルナが面倒だな。セレスは便利だからこれからも使えるし、いなくなっては困る。
ファルナも僕と結婚できただけで満足だろう。不自然なく死んでもらうにはどうしたら良いだろうか。
……まあ、このことを考えるのはユミリーが死んでからで良いか。
セレスは本当にすごい。僕が疑われない方法でユミリーを殺したいと言うと、魔法で人を操ってくれると言ってくれた。セレスと出会ったことは不幸中の幸いだ。だが、一つ気になることがあった。
「セレス、人の心を操れる魔法が使えるなら、どうして僕の心を自分のものにしようとしないんだ?」
「あら。私にだってプライドはあるのよ。でも、あなたがそうしてほしいって言うんなら、遠慮なくそうさせてもらうけど?」
「いや。別にそんなことは望んでない。というよりも、絶対にしないでくれ」
「残念。まあ、安心してよ。一人ぼっちでいつ死んでも良いと思っていた私に生きていこうと思わせてくれたのはあなたよ。どんなことがあっても、私はあなたに付いていくわ」
「そうか。なら、僕が不幸になったら、また時間を巻き戻してくれないか」
そうお願いした時、お手洗いに行っていたファルナが戻ってきたので、話は中断となった。返事は聞けなかったが、セレスは僕に夢中だ。僕が頼めば、また時間を巻き戻してくれるだろう。
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「遠隔も可能だけれど、魔法をかける時は相手の近くにいないと難しいわ」
「なら、結婚式の当日、自宅からディリング家に通っている人物を捕まえよう」
「そうね」
セレスと打ち合わせていると、ファルナが尋ねてくる。
「どうしてユミリー様を狙うのですか? ランフェス様が憎いのであれば、ランフェス様を殺してしまえば良いかと思うのですけれど」
「そんなことをしたら、ランフェスが苦しむ様子が見れないじゃないか」
毒を盛られて苦しむランフェスを見ることも楽しいだろう。でも、その場に僕がいることは難しい。近しい人間以外でも彼の悲しむ顔が見られるのは、誰かの不幸があった時だろう。たとえ葬式に行けなくても、彼はどこかに必ず現れる。以前、ユミリーが死んだ時のランフェスの顔は酷いものだった。また、あの顔が見られるのかと思うと、楽しみで仕方がない。
「そういうことですのね。では、ランフェス様の奥様になる方がユミリー様ではなかった時はどうされるおつもりですの?」
「ランフェスが選ぶ女性はユミリー以外いないはずだよ」
「そんなことはわからないわよ。ちゃんと確認したほうが良いわ」
ファルナに答えた僕に、セレスは難しい顔をして言った。
「確認って言ったってどうすれば良いんだよ」
「私に任せてちょうだい」
「そ、そうか。セレスなら魔法で何でもできるものな」
「ええ、そうよ」
セレスは笑顔で頷くと、悔しそうにしているファルナに声を掛ける。
「あら、どうしたの。自分は役に立てないからって悔しいの?」
「あなたは本当に嫌な性格ですわね」
「嫌な性格でも何でもいいわ。トーマスを私のものにできればそれでいいもの」
「わたくしは魔法は使えませんけれど、トーマス様のためなら何でもできます!」
そう言ったファルナの目に、セレスへの憎しみの炎が見えたような気がした。こうなってくると、ファルナが面倒だな。セレスは便利だからこれからも使えるし、いなくなっては困る。
ファルナも僕と結婚できただけで満足だろう。不自然なく死んでもらうにはどうしたら良いだろうか。
……まあ、このことを考えるのはユミリーが死んでからで良いか。
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