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26 次は間違えないと言われましても ④
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結婚式は夕方に予定されており、ディリング公爵邸の近くにあるチャペルで行われることになっています。実際は結婚式を挙げるふりをするだけなので、チャペルに集まるのは事情を知っているディリング公爵夫妻と、ランフェスや私と深いつながりのある、とあるお二人とその付き人や護衛だけです。牧師様には事情を話していて、理解してくれていると聞いています。
問題は式を終えて、ランフェスたちが帰ってきてからのことでした。魔法をかけられるはずだった料理人は昨日の内に手を打っておいたので、トーマス様の前ではユミの魔法にかかったふりをしてくれていますから、これは問題ありません。
ありがたいと言ってはなんですが、私を殺すための毒はトーマス様が用意してくれ、料理人に手渡したのもトーマス様だと教えてもらいました。
ただ、これだけでは彼を捕まえるのは厳しいです。トーマス様がすんなり罪を認めるとは思えません。
どうすれば彼の尻尾を掴むことができるのか。
考えた私は、ランフェスたちに一芝居うってもらうことにしたのでした。
結婚式の夜、毒など盛られていませんが、外部からお医者様を呼ぶなどして、何かが起きたことを匂わせる行動をしました。お医者様には事前に連絡をしていたので、今晩は公爵邸に泊まるつもりで来てもらいました。
そして次の日の朝、新妻が死亡したという嘘話をユミのほうからトーマス様に伝えてもらい、関係のない領民には嘘の情報が流れないようにしました。
「トーマス様は俺の姿を確認しに来るのかな」
「そう思うわ。ユミたちに止められても、あなたが絶望している顔を見たくて訪ねてくるはずよ。感情のコントロールはできない人だわ」
だから、自分が捕まることも忘れて、私を殺したのでしょう。
別邸に来てくれていたランフェスとそんな話をしていると、案の定、トーマス様が訪ねてきたとの知らせを受けたのです。
「この別邸に案内してくれ。それから父上たちにも連絡を頼む」
「「承知いたしました」」
来客を知らせに来てくれたメイドとお茶を入れてくれていたメイドは声を揃えて言うと、急ぎ足で部屋から出ていきました。私とランフェスもトーマス様を出迎えるために、エントランスホールに向かいます。
「これでやっと終わるかしら」
「そうだな。巻き戻しはユミがトーマス様に協力しない限り次はない。彼女は巻き戻すつもりはないようだから大丈夫だと思うが、まだ油断はできない」
「それはそうね」
「ユミリー、君は最初は隠れていてくれないか」
「わかったわ。ところであなたはどんな態度で応対するつもりなの?」
「……そうだな。最初はお望み通りに悲しんでいるふりをしておくよ。トーマス様の考えていることがあまりにも残念だから、そのことを考えれば上手く演技できると思う」
ランフェスはそう言って、出入り口の扉の前に立ちました。私はトーマス様たちが、中に入ってきてもに見えない位置にある柱の陰に隠れて話を聞くことにします。
私が生きているとわかった時のトーマス様はどんな顔をするのでしょうか。……変ですね。トーマス様への怒りが恐怖よりも勝っているようで、早く来てほしいと思ってしまいます。
「ユミリー様、お忘れですよ」
メイド長が近づいてきて、私にシルバートレイを手渡してくれました。このシルバートレイはメイドたちが食べ物などを運ぶ時に使うようなものと見た目は一緒ですが、使い方が違います。そして、ユミによって魔法で強化してもらっていました。
このシルバートレイに魔法を付与してもらう時、ユミはこう言っていました。
『あなたは私のライバルではありません。トーマスを私のものにするために協力してください』
『どうすればいいの?』
私の質問に答えたユミは恐ろしい表情をしていました。協力できる内容でもありませんでしたからお断りすると、ユミは気分を害した様子もなかったのです。
彼女の中ではランフェスを選ぼうとしている私は敵ではなく味方なのです。そして、彼女にとっての敵は――
悪寒を感じたちょうどその時、出入り口の扉が開き、トーマス様がユミとファルナと共に別邸の中に入ってきたのでした。
問題は式を終えて、ランフェスたちが帰ってきてからのことでした。魔法をかけられるはずだった料理人は昨日の内に手を打っておいたので、トーマス様の前ではユミの魔法にかかったふりをしてくれていますから、これは問題ありません。
ありがたいと言ってはなんですが、私を殺すための毒はトーマス様が用意してくれ、料理人に手渡したのもトーマス様だと教えてもらいました。
ただ、これだけでは彼を捕まえるのは厳しいです。トーマス様がすんなり罪を認めるとは思えません。
どうすれば彼の尻尾を掴むことができるのか。
考えた私は、ランフェスたちに一芝居うってもらうことにしたのでした。
結婚式の夜、毒など盛られていませんが、外部からお医者様を呼ぶなどして、何かが起きたことを匂わせる行動をしました。お医者様には事前に連絡をしていたので、今晩は公爵邸に泊まるつもりで来てもらいました。
そして次の日の朝、新妻が死亡したという嘘話をユミのほうからトーマス様に伝えてもらい、関係のない領民には嘘の情報が流れないようにしました。
「トーマス様は俺の姿を確認しに来るのかな」
「そう思うわ。ユミたちに止められても、あなたが絶望している顔を見たくて訪ねてくるはずよ。感情のコントロールはできない人だわ」
だから、自分が捕まることも忘れて、私を殺したのでしょう。
別邸に来てくれていたランフェスとそんな話をしていると、案の定、トーマス様が訪ねてきたとの知らせを受けたのです。
「この別邸に案内してくれ。それから父上たちにも連絡を頼む」
「「承知いたしました」」
来客を知らせに来てくれたメイドとお茶を入れてくれていたメイドは声を揃えて言うと、急ぎ足で部屋から出ていきました。私とランフェスもトーマス様を出迎えるために、エントランスホールに向かいます。
「これでやっと終わるかしら」
「そうだな。巻き戻しはユミがトーマス様に協力しない限り次はない。彼女は巻き戻すつもりはないようだから大丈夫だと思うが、まだ油断はできない」
「それはそうね」
「ユミリー、君は最初は隠れていてくれないか」
「わかったわ。ところであなたはどんな態度で応対するつもりなの?」
「……そうだな。最初はお望み通りに悲しんでいるふりをしておくよ。トーマス様の考えていることがあまりにも残念だから、そのことを考えれば上手く演技できると思う」
ランフェスはそう言って、出入り口の扉の前に立ちました。私はトーマス様たちが、中に入ってきてもに見えない位置にある柱の陰に隠れて話を聞くことにします。
私が生きているとわかった時のトーマス様はどんな顔をするのでしょうか。……変ですね。トーマス様への怒りが恐怖よりも勝っているようで、早く来てほしいと思ってしまいます。
「ユミリー様、お忘れですよ」
メイド長が近づいてきて、私にシルバートレイを手渡してくれました。このシルバートレイはメイドたちが食べ物などを運ぶ時に使うようなものと見た目は一緒ですが、使い方が違います。そして、ユミによって魔法で強化してもらっていました。
このシルバートレイに魔法を付与してもらう時、ユミはこう言っていました。
『あなたは私のライバルではありません。トーマスを私のものにするために協力してください』
『どうすればいいの?』
私の質問に答えたユミは恐ろしい表情をしていました。協力できる内容でもありませんでしたからお断りすると、ユミは気分を害した様子もなかったのです。
彼女の中ではランフェスを選ぼうとしている私は敵ではなく味方なのです。そして、彼女にとっての敵は――
悪寒を感じたちょうどその時、出入り口の扉が開き、トーマス様がユミとファルナと共に別邸の中に入ってきたのでした。
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