残念ながらすべてお見通しです

風見ゆうみ

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10 「機嫌は直ったかな?」

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 それから数時間後、私は元の姿に戻り、本物のメイドから毒味役が死んだという話を聞いた。

 このことによって、ロアリン様にしてみれば、妖精さんが悪いわけではなく、私の運が良かったと判断されることになった。
 毒味役が死んでしまったことにより、黒幕は誰だかわからず、王城の中で起こった犯罪を捜査する王城警察は彼女の単独犯だと決めつけてしまった。

 いつまでも、いるかいないかわからない犯人を追いたくないのと、ロアリン様の両親から手を引くように言われたのではないかと、デルトロさんが教えてくれた。

 両陛下に犯人はロアリン様だと訴えたけれど、証拠がないのならどうしようもないと言われた。
 お二人は私がここを出て行きたくて嘘をついているのだと思われているようだった。

 失礼な話よね。
 そんな事で人を殺人犯に仕立て上げようとしたりしないわ。

「元気になって良かったですわ。でも、これ以上、余計なことをすると、どうなるかわかっていますわよね?」

 ロアリン様はそう脅してきた。
 人を殺そうとしておいて、平気な顔をされているのには腹が立つ。
 こうなったら、捕まっている妖精さんを助け出して、証言してもらうわ!

 そう決めた翌日、ダニエル殿下と食堂で待ち合わせて話をすることになった。
 毒味役を一応付けてはもらっているけれど、デルトロさんがロアリン様の動きを見張ってくれているので安心だった。

 あくまでも食堂で偶然会ったふりをして、人が近くにいない端のテーブルに行って、向かい合って話す。

「問題の妖精さんは、ロアリン様のお部屋にいるのですよね? なら、私が助けて来ましょうか?」
「どうやって中に入るつもりなんだ? 素直にロアリン嬢があなたを部屋に招き入れるとは思えないんだが?」
「それに関しては子供のパワーを使おうと思っています」
「子供のパワー?」
「はい」

 不思議そうにしているダニエル殿下に話をすると、眉根を寄せながらも納得してくれた。

 それから私は、お忍びで市井に出て、子供服や靴、リボンなどを買った。
 婚約者ではあるけれど、城内で働いていたことにより給料をもらっていた。
 そのお金を使って買った。

 ただ、子供服は思いの外、値段が高くて痛い出費だった。

 次の日、デルトロさんがコーンスープを持ってやって来た。

「本当に実行するのかい?」
「はい。子供だから許されることもあると思うんです。普通の子供なら何も考えていません。だから、許さざるを得なくなることが多いです。私は今回、その手を上手く使おうと思います」

 にこりと微笑んだあとに、コーンスープを飲んだ。
 すると、前回と同じく、私は幼児の姿になった。
 素早く服を着て靴を履く。

「ふきをきがえたあとは、デルトロしゃま、てんいとほごしゃのやくをおねがいできましゅか?」
「妖精使いが荒いなあ。でも、しょうがない。貴族の偉い人みたいになったら良いのかな?」
「できればこのかおを、おねがいしたいでしゅ」

 書き物机の一番下引出しの中から写真を取り出す。
 写真には私に優しくしてくれた祖父母が笑顔で映っている。

「きょーはわたちのとおいしんしぇきのこどもがあそびにくると、ダニエルでんかから、りょーへいかにつたえてもらっていてきゃかもおりています」
「……わかった。僕は、君と城の外に出て、君の手を引いて城に入ればいいわけだ?」
「そうでしゅ。ばしゃのよーいはダニエルでんかがしてくださるそうでしゅ」

 私の計画は体が元に戻るまでの間に、子供の無邪気さを爆発させて、色々なところに忍び込むつもりだった。

「じゃあ転移しようか」

 デルトロ様が言った時、ガチャリと扉の鍵が外から解錠された。

 どこかに姿を隠す暇もなく、レイシール様が勝手に部屋の中に入って来た。

「そろそろ、機嫌は直ったかな?」

 そう言ってはみたものの、肝心の私がいないと気づいたらしく、部屋の中を歩き回る。

 そして、私に気付くと「どうして、子供がこんなとこにいるんだ?」と呟くと、なぜか、私を殴ろうとしてきたのだった。


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