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11 「言われなくてもわかってる!」
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目を瞑ると、何も攻撃はされなかった。
「まあまあ、可愛い顔はしているね。ただ、オレンジの瞳は気に入らないなあ。もしかして君、エアリーの遠い親戚の子供? いつの間に来てたの?」
子供だからと思い直したのか、レイシール様は早口で問いかけてくる。
私が部屋にいないから、苛立っているみたいだった。
別にレイシール様と会う約束をしたわけではないのだから、私が部屋にいなくても文句を言われる筋合いはない。
言い返したいけど、私の見た目は今は3歳くらい。
だから、子供らしくふるまうことにした。
「だれ?」
「誰だって? 僕を知らないのか? 僕はこの国の王太子だよ。とても偉いんだ」
「えりゃい?」
「そうだよ。で、エアリーはどこに行ったのかな?」
レイシール様はしゃがんで私に尋ねてきた。
「しらない」
「知らないだって?」
レイシール様の表情が不機嫌そうなものに変わった。
自分の納得する回答がもらえなかったからって、子供相手にイライラするのはおかしいでしょう。
「だってしらないもん」
「何か言って出て行っているだろう!?」
レイシール様が私の頭を掴んだところで、トントンと扉が叩かれた。
「誰だ!?」
慌てて手を離し、レイシール様が返事をすると、私のお祖父様にそっくりな見た目の人が扉を開けた。
そして、レイシール様を見て驚いた顔をする。
「これはこれは王太子殿下、お会いできて光栄です」
「お前もエアリーの親戚か?」
「そうでございます。あの、エアリーなら頼み事をされて出かけております」
「王太子妃になる人間に頼み事だって?」
不機嫌そうな声を上げて、レイシール様が立ち上がった時だった。
「兄上、私が頼んだのです。この方は何も悪くありませんよ」
デルトロさんに呼ばれて急いで来てくれたのか、ダニエル殿下の息が少しだけ荒い。
レイシール様はそんな彼を見つめて尋ねる。
「どうして、お前がエアリーと話をしているんだ」
「仕事上で関わりを持つようになったからです。兄上は自分がやらなければならない書類仕事を全てエアリー嬢に任せていますよね? それを知った父上たちから仕事を手伝うようにと連絡がありました」
「そんな余計なことはしなくていい!」
「文句があるなら父上たちにどうぞ?」
ダニエル殿下に冷たくあしらわれたレイシール様は声を荒らげる。
「お前はそんなに僕を王太子の座から引きずり下ろしたいのか!?」
「僕は言われたことをしようとしているだけです。それが嫌なら、自分の仕事は自分でされたらいかがです?」
「くそっ! 言われなくてもわかってる! お前とエアリーを近づけさせてなんてやるもんか!」
レイシール様は廊下に立っていたダニエル殿下にわざとぶつかってから去っていく。
一体、何をしに来たのかしら?
「大丈夫だった?」
デルトロさんが部屋に入り、妖精の姿に戻って聞いてきた。
「はい。ありがとうございましゅ」
ダニエル殿下も部屋に入ってきて、扉の鍵を締める。
「あなた一人でロアリン嬢の部屋に行くのは心配だ。だから、僕も行くよ。婚約者の部屋を訪ねてもおかしくないだろう?」
「ありがたいでしゅが、わたしとのことは、なんというおつもりでしゅか?」
「兄上にも言ったけど、僕があなたに仕事を頼んだんだ。仕事を頼んだ代わりに、僕が親戚の子供の相手をしていると言うよ」
「わかりまちた」
頷くと、ダニエル殿下は私の体を抱き上げた。
「ロアリン嬢は部屋にいるみたいだから行こうか。何とかして部屋に入るようにするし、僕が気を引いている間に、あなたにはエディールを見つけて、僕に知らせてほしい。妖精を捕まえるという行為はやってはいけないことだから、彼女を捕まえることができる」
エディールというのは捕まっている妖精さんの名前だった。
「はい! がんばりましゅ!」
理不尽な理由で私の命を狙ったことを後悔させてみせるわ!
「まあまあ、可愛い顔はしているね。ただ、オレンジの瞳は気に入らないなあ。もしかして君、エアリーの遠い親戚の子供? いつの間に来てたの?」
子供だからと思い直したのか、レイシール様は早口で問いかけてくる。
私が部屋にいないから、苛立っているみたいだった。
別にレイシール様と会う約束をしたわけではないのだから、私が部屋にいなくても文句を言われる筋合いはない。
言い返したいけど、私の見た目は今は3歳くらい。
だから、子供らしくふるまうことにした。
「だれ?」
「誰だって? 僕を知らないのか? 僕はこの国の王太子だよ。とても偉いんだ」
「えりゃい?」
「そうだよ。で、エアリーはどこに行ったのかな?」
レイシール様はしゃがんで私に尋ねてきた。
「しらない」
「知らないだって?」
レイシール様の表情が不機嫌そうなものに変わった。
自分の納得する回答がもらえなかったからって、子供相手にイライラするのはおかしいでしょう。
「だってしらないもん」
「何か言って出て行っているだろう!?」
レイシール様が私の頭を掴んだところで、トントンと扉が叩かれた。
「誰だ!?」
慌てて手を離し、レイシール様が返事をすると、私のお祖父様にそっくりな見た目の人が扉を開けた。
そして、レイシール様を見て驚いた顔をする。
「これはこれは王太子殿下、お会いできて光栄です」
「お前もエアリーの親戚か?」
「そうでございます。あの、エアリーなら頼み事をされて出かけております」
「王太子妃になる人間に頼み事だって?」
不機嫌そうな声を上げて、レイシール様が立ち上がった時だった。
「兄上、私が頼んだのです。この方は何も悪くありませんよ」
デルトロさんに呼ばれて急いで来てくれたのか、ダニエル殿下の息が少しだけ荒い。
レイシール様はそんな彼を見つめて尋ねる。
「どうして、お前がエアリーと話をしているんだ」
「仕事上で関わりを持つようになったからです。兄上は自分がやらなければならない書類仕事を全てエアリー嬢に任せていますよね? それを知った父上たちから仕事を手伝うようにと連絡がありました」
「そんな余計なことはしなくていい!」
「文句があるなら父上たちにどうぞ?」
ダニエル殿下に冷たくあしらわれたレイシール様は声を荒らげる。
「お前はそんなに僕を王太子の座から引きずり下ろしたいのか!?」
「僕は言われたことをしようとしているだけです。それが嫌なら、自分の仕事は自分でされたらいかがです?」
「くそっ! 言われなくてもわかってる! お前とエアリーを近づけさせてなんてやるもんか!」
レイシール様は廊下に立っていたダニエル殿下にわざとぶつかってから去っていく。
一体、何をしに来たのかしら?
「大丈夫だった?」
デルトロさんが部屋に入り、妖精の姿に戻って聞いてきた。
「はい。ありがとうございましゅ」
ダニエル殿下も部屋に入ってきて、扉の鍵を締める。
「あなた一人でロアリン嬢の部屋に行くのは心配だ。だから、僕も行くよ。婚約者の部屋を訪ねてもおかしくないだろう?」
「ありがたいでしゅが、わたしとのことは、なんというおつもりでしゅか?」
「兄上にも言ったけど、僕があなたに仕事を頼んだんだ。仕事を頼んだ代わりに、僕が親戚の子供の相手をしていると言うよ」
「わかりまちた」
頷くと、ダニエル殿下は私の体を抱き上げた。
「ロアリン嬢は部屋にいるみたいだから行こうか。何とかして部屋に入るようにするし、僕が気を引いている間に、あなたにはエディールを見つけて、僕に知らせてほしい。妖精を捕まえるという行為はやってはいけないことだから、彼女を捕まえることができる」
エディールというのは捕まっている妖精さんの名前だった。
「はい! がんばりましゅ!」
理不尽な理由で私の命を狙ったことを後悔させてみせるわ!
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