残念ながらすべてお見通しです

風見ゆうみ

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27 「取っ組み合いの喧嘩をしてるんだ」

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 ダニエル殿下の部屋に連れてきてもらった私は「ふたりっきりであしょびたい」とメイドたちにお願いして、二人にさせてもらった。
 メイドたちは知らないけれど、デルトロさんとエディールさんもいるので、本当は二人きりではない。
 それに、さすがにダニエル殿下が幼女のわたしをどうこうするとは思われていないようだから、信用があるのだと思う。

 そして、メイドたちは私がダニエル殿下に恋をしているのだと思い込んでいて、絶対に実るはずのない恋だからこそ、温かく応援しようとしているといった感じだった。

 実際、ダニエル殿下はシャーロットの中身がエアリーだとわかっているから、絶対に手を出したりしてくることはないとわかっているので、私も特に恐怖心はない。

 これが、他の男性が相手だったら別だ。
 レイシール様とだったりしたら、何をされるかわからないから、絶対に二人きりになんかなりたくない。

 私はメイドに淹れてもらったフルーツジュースを一口飲んだあと、ロアリン様の話を聞く前に、先程、出会った女性のことをダニエル殿下に話してみた。

「しゃっき、レイシールしゃまの、あたらしいあいじんだと、いうかたと、おあいちまちた」
「ああ。ベラ嬢のせいで、多くの人が辞めていったから補充したみたいだね」
「あいじんしけんってなんでしゅか?」

 ふかふかの3人がけのソファに私とダニエル殿下は並んで座っているので、彼を見上げて尋ねる。
 すると、ダニエル殿下は苦笑して教えてくれる。

「兄上の愛人の試験のことだが、この国では有名だよ。といっても、受かるのは簡単らしいけど」
「どんなしけんなのでしゅか?」
「兄上のことをどれだけ褒めそやすことが出来るかだよ。問題は、兄上のその時の気分によって、褒め言葉の気に入る気に入らないかが変わるから運みたいなものらしい」
「ほんしんじゃないとわかっているのに、ほめりゃれてなにが、うれしいんでしょうか」
「兄上が何を考えているかは僕にはよくわからない。でも、本気でそう思ってくれていると思っているんじゃないか?」

 ダニエル殿下はずっと苦笑したままだ。
 口ではそう言いつつも、ダニエル殿下自身も納得はしていないのかもしれない。

「なんだか、めんどくしゃしょうなひとでした」
「面倒くさい?」
「はい。ベラとけんかになりしょうなきがしましゅ」
「それについては君は気にしなくて良い。ベラ嬢と新しい愛人の女性が本格的に揉め始めたら、君と兄上の婚約についても、父上たちは考え直してくれるかもしれない」
「たとえば、どんなことでしょうか?」

 小首を傾げて尋ねた時、デルトロさんが手を挙げる。

「どうなっているか見てきてあげるよ。その間に、エアリーはダニエルから、ロアリンの話を聞けばいい」
「ありがとうございます。でも、いきなり興味を持つなんて、どうかされたんですか?」
「いや、もしかしたら、面白いことになってるかもしれないと思ってさ」
「一緒に行くっ!」

 楽しそうなデルトロさんを見て、自分もワクワクしてしまったのか、エディールさんも一緒に窓から外へ出て行ってしまった。

「困った妖精たちだな」

 ダニエル殿下は呆れた顔をして呟いた後に、今日の本題である、ロアリン様の話をしてくれた。

 ロアリン様のご実家はやはり、ロアリン様を許さなかったらしい。
 かといって、外に放り出せば、魔法を使える彼女が何をしでかすかわからないということで、修道院送りになったそうだ。
 しかも、この国にあるのではなく、留学していた国の修道院で、そこでは魔法は一切使えないらしく、たとえ逃げ出せたとしても、国境で止められてしまうから一緒だった。

「ひとをころそうとちたんですから、しゅこしはいたいめに、あってもらわないとだめでしゅ」
「そうだな」

 ダニエル殿下が頷いた時、コツコツと窓が叩かれた。
  
 デルトロさんだけが帰ってきていて、目をキラキラさせて言う。

「ちょっと部屋の外を覗いてごらんよ! レイシールの部屋の前でベラと新しい愛人の女が取っ組み合いの喧嘩をしてるんだ」

 楽しそうに話すデルトロさんとは違い、私とダニエル殿下は呆れた顔で顔を見合わせた。
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