残念ながらすべてお見通しです

風見ゆうみ

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26 「ゆるちてもらわなくてもいいでしゅ」

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 ロアリン様の件で詳しい話を聞こうと思った私だったけれど、今のところ、私はまだレイシール様の婚約者なので、ダニエル殿下と二人きりで会うのは難しかった。
 そのため、シャーロットの姿になって、ダニエル殿下の部屋まで、メイドたちに手を引かれて向かっていた。

 城の使用人たちの間では、私とダニエル殿下はとても仲が良いのだと思われている。 
 可愛い子供と戯れる美青年ということで、私とダニエル殿下が遊んでいるふりをしているのを見るのが、一つの楽しみとされていた。

 喜んでくれるのは良いけど、何だか複雑な気分だった。

 短い足のため、大人にしてみれば、かなり遅いペースで歩いていると、後ろから声を掛けられる。

「そこの、お嬢さん!」

 耳に響く甲高い声だった。
 まるで、子供が癇癪をおこして泣き喚くような声だ。

「わぁ、可愛いわぁ! どちらのご令嬢なのかしら?」
「エアリー様のご親戚の方になります」

 私の代わりにメイドが答えると、ダークパープルのウェーブのかかった長い髪をハーフツインにした女性は、私に近づいてくる。

 大人バージョンの私よりもだいぶ小柄で痩せ型のせいか、大きく空いたドレスの胸元は少し寂しいことになっている。
 
「エアリー様ってわたしのライバルの一人よね?」

 女性は小首を傾げて、後ろに控えているメイドに話しかけた。

「ライバルといいますか、エアリー様はレイシール様の婚約者でございます」
「そうよね? うん、覚えてるわ!」
「あなた、だあれ?」

 こういう時に子供の姿は役に立つ。
 相手が誰だかわからなくても、失礼な話にならないし、素直に聞いても許されるからだ。

「わたしはレイシール様の新しい愛人よ。前々から希望していたのだけど、補欠合格だったから順番を待っていたのよ」
「ほけちゅごうかく」

 愛人に試験なんてあったの?
 いつの間にそんな試験をしていたのかわからないし、そんな試験があったことも信じられないんだけど?

「そうよ。でも、たくさんの中から選ばれたんだから補欠合格でも十分すごいでしょう?」
「うん。しゅごい」

 ある意味すごいわ。
 私だったら愛人になる試験なんて受けないもの。
 馬鹿にしているわけではなくて、本当にすごい。

 これが大人の状態だったら、嫌味だととる人もいたかもしれない。
 でも、使用人たちは微笑ましい様子で私を見つめている。

 そう。
 私はシャーロットである。
 だから、言いたいことを言う。

「でも、あいじんってひちゅようなの? レイシールしゃまは、あいじん、たくしゃんいるよ?」

 大きく首を傾げて尋ねると、メイドたちの表情が凍りついた。
 新たな愛人は身を屈め、わたしの着ているワンピースの胸元に付いている大きなリボンを掴む。

「次にそんなことを言ったら許さないから」
「べつにゆるちてもらわなくてもいいでしゅ」

 言い返すと、新たな愛人は私の服から手を離し、忌々しげな表情で私を睨みつけたあと、コツコツとヒール音を鳴らして去っていった。

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