婚約解消しろ? 頼む相手を間違えていますよ?

風見ゆうみ

文字の大きさ
12 / 30

10 一人でここに来たとは言っていませんよ?

しおりを挟む
※ 不快になる表現があります。読み飛ばしいただいても結構です。









「君だって自分で思わないか? どうせ、ラルフ兄さんの外見や地位で婚約者になる事を決めたんだろ!」
「婚約を決められたのはラルフ様ですよ」
「じゃあ、どうして断らないんだよ! ラルフ兄さんにふさわしいのは君みたいな、どこにでもいそうな令嬢じゃない! ミラルル姉さまや母上の様な人だ!」
「あらあら」

 ラルフ様の事が大好きなだけかと思っていましたが、お母様やお姉様の事も大好きなのですね。
 それは悪いことではありません。
 現に、私は弟のヒナタをとても可愛がっていますし、ヒナタはヒナタで婚約者の次に私が、可愛いだなんて嬉しい事を言ってくれます。
 姉弟全てが仲が良いとは限りませんし、フレイ様のように家族が大好きなのは、私としてはとても良い事だと思われます。
 ですから、それを止める気持ちは全くないのですけれど、このような家族のお家にお嫁に行くというのは勇気がいりますね。
 だって、部外者扱いされる事は間違いありませんもの。
 私はヒナタの心に決めた人であれば、よっぽどの方でない限り仲良くなりたいですし、幸せになってほしいとも思いますが、フレイ様達はそんな感じではなさそうですし…。

 いつでも逃げれるようにと扉の前に立っていた私でしたが、フレイ様は近付いてくると、私の手を引っ張り、なぜかベッドの方へ連れて行こうとします。

「あの、手をはなしていただけますか」
「何を言ってるんだよ。どうせ、その気で来たんだろう?」
「何を言っているかという台詞はこちらの台詞です。それに何を考えていらっしゃるんです?」

 部屋の外に聞こえるように大きな声で言うと、フレイ様は舌打ちをしたあと、私の腕をつかんだまま扉の方に行き、鍵を締めてしまわれました。
 抵抗されて逃げられたら困るとでも思ったのでしょう。

 そんな事を考える余裕があるなら、最初からこんな事をしたって意味がない事くらいわかるでしょうに。
 
 ため息をつきながら、空いている方の手で着ているワンピースのポケットから魔道具を取り出して、バレないように強く握りしめる。
 
「さっきも言ったが、どうせ他の令嬢と同じでラルフ兄さんの地位や顔が目当てなんだろう? 僕は顔はラルフ兄さんに似てると言われてるんだ」
「顔は似ておられるのかもしれませんが、性格はちっとも似ておられませんね」
「それはそうだよ! 兄さんのほうが素晴らしいんだから!」

 うーん。
 お兄様愛が強すぎやしないでしょうか。
 まあ、カーミラ様もあんな感じでしたし、想像がつかないわけでもなかったのですが。

「お話はそれだけですか? ラルフ様には私がフレイ様のお部屋にやって来た事、伝えてくださってかまいませんよ?」
「ちょっと待て!」

 フレイ様は私より背丈が少し高いくらいの華奢な男性ですが、私の手首を掴む手の力はやはり男性のものです。
 
「フレイ様はおいくつでしたっけ?」
「18だ」
「あら、私よりも年上なのですね」
「なんだよ! 背が低いからって馬鹿にしてるのか!」

 そういうつもりではなかったのですが、どうやら背が低い事がコンプレックスだったようで、フレイ様は私をベッドの上に押し倒して言いました。

「物分りが良さそうだったから、何もせずに返してあげようと思ったけど気が変わったよ。君をきずものにして、二度とラルフ兄さんの前に立てないようにしてやる」
「きずもの?」
「そうだよ。背は足りないけど、僕の顔立ちはラルフ兄さんと似てるって言ったろ? だから感謝しろよ」

 フレイ様がにやりと笑います。
 
「嫌ですよ。別にラルフ様の顔を好きになって婚約者になったわけではありません。なぜかわかりませんが、ラルフ様が私を選んでくださったんです」
「お前! ラルフ兄さんを馬鹿にするのか!」
「馬鹿にしているのはあなたです! こんな事をすればするほど、ラルフ様の評判が悪くなるのがわからないんですか!」
「口答えするな!」

 首を軽くしめられましたが、まだ大丈夫です。
 それよりも、これだけは言わせていただきたいのです。

「きずものという発言を撤回して下さい」
「は?」
「もし、あなたがご令嬢の大切なものを無理やり奪ったというのなら、きずものという言葉は撤回して下さい! あなたの言う様に頭が足りなかったのかもしれませんが、彼女達なりにあなたと仲良くなろうとしてここに来られたはずです!」

 自分で誘惑したならまだしも、無理やりされたものなら、傷つけた人が悪いのです!

「嫌だって言ったら?」
「困るのはあなたです」

 だって、私は一人でここに来たとは言っていませんよ?
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」 婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。 婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。 ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/01  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過 2022/07/29  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過 2022/02/15  小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位 2022/02/12  完結 2021/11/30  小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位 2021/11/29  アルファポリス HOT2位 2021/12/03  カクヨム 恋愛(週間)6位

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

王家の面子のために私を振り回さないで下さい。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。 愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。 自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。 国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。 実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。 ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

始まりはよくある婚約破棄のように

喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」 学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。 ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。 第一章「婚約者編」 第二章「お見合い編(過去)」 第三章「結婚編」 第四章「出産・育児編」 第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

処理中です...