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16 気分転換にならないのですが?
「わあ! とても可愛いお店なのです!」
ケイン様に連れてきていただいたレストランの外見は、レンガ造りでシンプルではありますが、三角屋根と煙突が可愛らしいお店でした。
「ここにケイン様の意中の女性が!」
「いや、それを目的にしないで下さいよ」
「どんな方なのでしょう」
「聞いてませんね…。まあ、いいか。リノア様、やっといつもの笑顔を見せてくれましたしね」
ケイン様がにこっと白い歯を見せて笑って下さるので、私も礼を言う。
「こちらこそ、お気遣いいただきありがとうございます」
「いいえ。ラルフ様の奥様は俺達にとって、お仕えすべき人の一人ですから」
「奥様ではありません」
「リノア様、ラルフ様からは逃れられませんよ。それに、リノア様が出ていこうとしたら、騎士隊の皆で止めますから」
騎士の皆さんはなぜだか私に良くして下さいます。
ダラス様のような別邸の警護をされてる方でさえ優しいのです!
私が何か良いことをしたみたいですが、魔法のせいなのか、全く思い出せません。
「困りましたね」
「ラルフ様とリノア様の為なら俺達が出来る事は何でもしますよ!」
「ありがとうございます」
笑って、ケイン様と一緒に付いてきてくれた騎士の方にも頭を下げる。
ケイン様は中まで一緒に入ってくれますが、外を見張る方が必要なため、他の騎士の方も付いてきてくれているのです。
ケイン様が店の扉を開けてくださったので、中に入り店内を見回してみると、昼を過ぎているからか、人はまばらです。
そんな時、怒鳴り声が聞こえてきました。
「この人を誰だと思ってんだ! 辺境伯だぞ! お前みたいな男爵令嬢が話しかけて良い相手じゃねぇんだ」
「……」
店の窓際の席に座っている茶髪の大柄でな男が店員らしき女性にからんでおられます。
その横には紺色の肩まである髪をおろした、身なりの良い男性が座っていて、女性に絡んでいる男を止めずに、涼しい顔をして食事をしていて、なんだか腹が立ちます。
その方はパーティーで何度か見たことのある顔で、たしか、クラーク領の隣りにある、とても小さな領土の辺境伯だったような気がします。
…クリス・ランドン辺境伯だったかしら?
女性にからんでいる男は用心棒なのかはわかりませんが、酔っておられるようで、顔は真っ赤っかですし、このまま黙ってみてはいられません。
一歩、踏み出そうとした時、ケイン様が彼女達に近付きながら叫ばれました。
「ミリー!!」
「…ケイン?」
絡まれている店員らしき女性が紺色のセミロングの髪を揺らしてこちらに可愛らしいお顔を向けられた時でした。
男が立ち上がり、ミリー様のお腹に蹴りを入れたのです!
「くそっ!」
ミリー様が蹴り飛ばされた場所は、人がおらず、ちょうど壁でしたので、ケイン様がミリー様の身体を抱きとめられました。
「大丈夫か!?」
「自分で後ろに飛んで衝撃を逃したから大丈夫。ってか、ふざけんじゃないわよ。女の腹に蹴り入れてくれるなんて! しかも不意打ちで!」
ケイン様の腕からはなれ、男性に向かって行こうとするミリー様を見て、私は慌てて声を上げる。
「いけません!」
「…あなたは?」
ミリー様は初めて、私の存在に気が付いたようで、一瞬、訝しげな顔をしたあと、すぐに満面の笑みを浮かべ、エプロンをつけたスカートについたゴミを払ったあと、頭を下げた。
「リノア様ですね! お会いできて嬉しいです!」
「ミリー様、私もお会いできて嬉しいです。ぜひ、お話したいところなのですが、まずは、この方のお相手をしなくては」
「私がやりますから、リノア様は座っていて下さい!」
気が付くと、店内にいたお客様は全ていなくなっていて、中にいるのは、店員さん達とケイン様、ミリー様、私、そして酔っぱらい男と辺境伯だけになっていました。
「いけません。あなたは男爵令嬢なのでしょう? 後ろにいる方は辺境伯です。あなたが罰されるかもしれません」
「ですけどっ!」
「なんだ、嬢ちゃんがお相手してくれんのか?」
大柄な男が私達に向かって近付いて来た時、男の喉元にケイン様の剣の切先が当てられました。
「それ以上、リノア様に近づいたら、首をかっ切るぞ」
「ケイン! リノア様の前では駄目よ!」
ミリー様が私を庇うように立ったあと叫びました。
なんだか思いもよらぬ事になっているのです。
全然、気分転換にならないのですが?
いえ、ある意味、気分は転換してますかね…。
ケイン様に連れてきていただいたレストランの外見は、レンガ造りでシンプルではありますが、三角屋根と煙突が可愛らしいお店でした。
「ここにケイン様の意中の女性が!」
「いや、それを目的にしないで下さいよ」
「どんな方なのでしょう」
「聞いてませんね…。まあ、いいか。リノア様、やっといつもの笑顔を見せてくれましたしね」
ケイン様がにこっと白い歯を見せて笑って下さるので、私も礼を言う。
「こちらこそ、お気遣いいただきありがとうございます」
「いいえ。ラルフ様の奥様は俺達にとって、お仕えすべき人の一人ですから」
「奥様ではありません」
「リノア様、ラルフ様からは逃れられませんよ。それに、リノア様が出ていこうとしたら、騎士隊の皆で止めますから」
騎士の皆さんはなぜだか私に良くして下さいます。
ダラス様のような別邸の警護をされてる方でさえ優しいのです!
私が何か良いことをしたみたいですが、魔法のせいなのか、全く思い出せません。
「困りましたね」
「ラルフ様とリノア様の為なら俺達が出来る事は何でもしますよ!」
「ありがとうございます」
笑って、ケイン様と一緒に付いてきてくれた騎士の方にも頭を下げる。
ケイン様は中まで一緒に入ってくれますが、外を見張る方が必要なため、他の騎士の方も付いてきてくれているのです。
ケイン様が店の扉を開けてくださったので、中に入り店内を見回してみると、昼を過ぎているからか、人はまばらです。
そんな時、怒鳴り声が聞こえてきました。
「この人を誰だと思ってんだ! 辺境伯だぞ! お前みたいな男爵令嬢が話しかけて良い相手じゃねぇんだ」
「……」
店の窓際の席に座っている茶髪の大柄でな男が店員らしき女性にからんでおられます。
その横には紺色の肩まである髪をおろした、身なりの良い男性が座っていて、女性に絡んでいる男を止めずに、涼しい顔をして食事をしていて、なんだか腹が立ちます。
その方はパーティーで何度か見たことのある顔で、たしか、クラーク領の隣りにある、とても小さな領土の辺境伯だったような気がします。
…クリス・ランドン辺境伯だったかしら?
女性にからんでいる男は用心棒なのかはわかりませんが、酔っておられるようで、顔は真っ赤っかですし、このまま黙ってみてはいられません。
一歩、踏み出そうとした時、ケイン様が彼女達に近付きながら叫ばれました。
「ミリー!!」
「…ケイン?」
絡まれている店員らしき女性が紺色のセミロングの髪を揺らしてこちらに可愛らしいお顔を向けられた時でした。
男が立ち上がり、ミリー様のお腹に蹴りを入れたのです!
「くそっ!」
ミリー様が蹴り飛ばされた場所は、人がおらず、ちょうど壁でしたので、ケイン様がミリー様の身体を抱きとめられました。
「大丈夫か!?」
「自分で後ろに飛んで衝撃を逃したから大丈夫。ってか、ふざけんじゃないわよ。女の腹に蹴り入れてくれるなんて! しかも不意打ちで!」
ケイン様の腕からはなれ、男性に向かって行こうとするミリー様を見て、私は慌てて声を上げる。
「いけません!」
「…あなたは?」
ミリー様は初めて、私の存在に気が付いたようで、一瞬、訝しげな顔をしたあと、すぐに満面の笑みを浮かべ、エプロンをつけたスカートについたゴミを払ったあと、頭を下げた。
「リノア様ですね! お会いできて嬉しいです!」
「ミリー様、私もお会いできて嬉しいです。ぜひ、お話したいところなのですが、まずは、この方のお相手をしなくては」
「私がやりますから、リノア様は座っていて下さい!」
気が付くと、店内にいたお客様は全ていなくなっていて、中にいるのは、店員さん達とケイン様、ミリー様、私、そして酔っぱらい男と辺境伯だけになっていました。
「いけません。あなたは男爵令嬢なのでしょう? 後ろにいる方は辺境伯です。あなたが罰されるかもしれません」
「ですけどっ!」
「なんだ、嬢ちゃんがお相手してくれんのか?」
大柄な男が私達に向かって近付いて来た時、男の喉元にケイン様の剣の切先が当てられました。
「それ以上、リノア様に近づいたら、首をかっ切るぞ」
「ケイン! リノア様の前では駄目よ!」
ミリー様が私を庇うように立ったあと叫びました。
なんだか思いもよらぬ事になっているのです。
全然、気分転換にならないのですが?
いえ、ある意味、気分は転換してますかね…。
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