20 / 30
16 気分転換にならないのですが?
しおりを挟む
「わあ! とても可愛いお店なのです!」
ケイン様に連れてきていただいたレストランの外見は、レンガ造りでシンプルではありますが、三角屋根と煙突が可愛らしいお店でした。
「ここにケイン様の意中の女性が!」
「いや、それを目的にしないで下さいよ」
「どんな方なのでしょう」
「聞いてませんね…。まあ、いいか。リノア様、やっといつもの笑顔を見せてくれましたしね」
ケイン様がにこっと白い歯を見せて笑って下さるので、私も礼を言う。
「こちらこそ、お気遣いいただきありがとうございます」
「いいえ。ラルフ様の奥様は俺達にとって、お仕えすべき人の一人ですから」
「奥様ではありません」
「リノア様、ラルフ様からは逃れられませんよ。それに、リノア様が出ていこうとしたら、騎士隊の皆で止めますから」
騎士の皆さんはなぜだか私に良くして下さいます。
ダラス様のような別邸の警護をされてる方でさえ優しいのです!
私が何か良いことをしたみたいですが、魔法のせいなのか、全く思い出せません。
「困りましたね」
「ラルフ様とリノア様の為なら俺達が出来る事は何でもしますよ!」
「ありがとうございます」
笑って、ケイン様と一緒に付いてきてくれた騎士の方にも頭を下げる。
ケイン様は中まで一緒に入ってくれますが、外を見張る方が必要なため、他の騎士の方も付いてきてくれているのです。
ケイン様が店の扉を開けてくださったので、中に入り店内を見回してみると、昼を過ぎているからか、人はまばらです。
そんな時、怒鳴り声が聞こえてきました。
「この人を誰だと思ってんだ! 辺境伯だぞ! お前みたいな男爵令嬢が話しかけて良い相手じゃねぇんだ」
「……」
店の窓際の席に座っている茶髪の大柄でな男が店員らしき女性にからんでおられます。
その横には紺色の肩まである髪をおろした、身なりの良い男性が座っていて、女性に絡んでいる男を止めずに、涼しい顔をして食事をしていて、なんだか腹が立ちます。
その方はパーティーで何度か見たことのある顔で、たしか、クラーク領の隣りにある、とても小さな領土の辺境伯だったような気がします。
…クリス・ランドン辺境伯だったかしら?
女性にからんでいる男は用心棒なのかはわかりませんが、酔っておられるようで、顔は真っ赤っかですし、このまま黙ってみてはいられません。
一歩、踏み出そうとした時、ケイン様が彼女達に近付きながら叫ばれました。
「ミリー!!」
「…ケイン?」
絡まれている店員らしき女性が紺色のセミロングの髪を揺らしてこちらに可愛らしいお顔を向けられた時でした。
男が立ち上がり、ミリー様のお腹に蹴りを入れたのです!
「くそっ!」
ミリー様が蹴り飛ばされた場所は、人がおらず、ちょうど壁でしたので、ケイン様がミリー様の身体を抱きとめられました。
「大丈夫か!?」
「自分で後ろに飛んで衝撃を逃したから大丈夫。ってか、ふざけんじゃないわよ。女の腹に蹴り入れてくれるなんて! しかも不意打ちで!」
ケイン様の腕からはなれ、男性に向かって行こうとするミリー様を見て、私は慌てて声を上げる。
「いけません!」
「…あなたは?」
ミリー様は初めて、私の存在に気が付いたようで、一瞬、訝しげな顔をしたあと、すぐに満面の笑みを浮かべ、エプロンをつけたスカートについたゴミを払ったあと、頭を下げた。
「リノア様ですね! お会いできて嬉しいです!」
「ミリー様、私もお会いできて嬉しいです。ぜひ、お話したいところなのですが、まずは、この方のお相手をしなくては」
「私がやりますから、リノア様は座っていて下さい!」
気が付くと、店内にいたお客様は全ていなくなっていて、中にいるのは、店員さん達とケイン様、ミリー様、私、そして酔っぱらい男と辺境伯だけになっていました。
「いけません。あなたは男爵令嬢なのでしょう? 後ろにいる方は辺境伯です。あなたが罰されるかもしれません」
「ですけどっ!」
「なんだ、嬢ちゃんがお相手してくれんのか?」
大柄な男が私達に向かって近付いて来た時、男の喉元にケイン様の剣の切先が当てられました。
「それ以上、リノア様に近づいたら、首をかっ切るぞ」
「ケイン! リノア様の前では駄目よ!」
ミリー様が私を庇うように立ったあと叫びました。
なんだか思いもよらぬ事になっているのです。
全然、気分転換にならないのですが?
いえ、ある意味、気分は転換してますかね…。
ケイン様に連れてきていただいたレストランの外見は、レンガ造りでシンプルではありますが、三角屋根と煙突が可愛らしいお店でした。
「ここにケイン様の意中の女性が!」
「いや、それを目的にしないで下さいよ」
「どんな方なのでしょう」
「聞いてませんね…。まあ、いいか。リノア様、やっといつもの笑顔を見せてくれましたしね」
ケイン様がにこっと白い歯を見せて笑って下さるので、私も礼を言う。
「こちらこそ、お気遣いいただきありがとうございます」
「いいえ。ラルフ様の奥様は俺達にとって、お仕えすべき人の一人ですから」
「奥様ではありません」
「リノア様、ラルフ様からは逃れられませんよ。それに、リノア様が出ていこうとしたら、騎士隊の皆で止めますから」
騎士の皆さんはなぜだか私に良くして下さいます。
ダラス様のような別邸の警護をされてる方でさえ優しいのです!
私が何か良いことをしたみたいですが、魔法のせいなのか、全く思い出せません。
「困りましたね」
「ラルフ様とリノア様の為なら俺達が出来る事は何でもしますよ!」
「ありがとうございます」
笑って、ケイン様と一緒に付いてきてくれた騎士の方にも頭を下げる。
ケイン様は中まで一緒に入ってくれますが、外を見張る方が必要なため、他の騎士の方も付いてきてくれているのです。
ケイン様が店の扉を開けてくださったので、中に入り店内を見回してみると、昼を過ぎているからか、人はまばらです。
そんな時、怒鳴り声が聞こえてきました。
「この人を誰だと思ってんだ! 辺境伯だぞ! お前みたいな男爵令嬢が話しかけて良い相手じゃねぇんだ」
「……」
店の窓際の席に座っている茶髪の大柄でな男が店員らしき女性にからんでおられます。
その横には紺色の肩まである髪をおろした、身なりの良い男性が座っていて、女性に絡んでいる男を止めずに、涼しい顔をして食事をしていて、なんだか腹が立ちます。
その方はパーティーで何度か見たことのある顔で、たしか、クラーク領の隣りにある、とても小さな領土の辺境伯だったような気がします。
…クリス・ランドン辺境伯だったかしら?
女性にからんでいる男は用心棒なのかはわかりませんが、酔っておられるようで、顔は真っ赤っかですし、このまま黙ってみてはいられません。
一歩、踏み出そうとした時、ケイン様が彼女達に近付きながら叫ばれました。
「ミリー!!」
「…ケイン?」
絡まれている店員らしき女性が紺色のセミロングの髪を揺らしてこちらに可愛らしいお顔を向けられた時でした。
男が立ち上がり、ミリー様のお腹に蹴りを入れたのです!
「くそっ!」
ミリー様が蹴り飛ばされた場所は、人がおらず、ちょうど壁でしたので、ケイン様がミリー様の身体を抱きとめられました。
「大丈夫か!?」
「自分で後ろに飛んで衝撃を逃したから大丈夫。ってか、ふざけんじゃないわよ。女の腹に蹴り入れてくれるなんて! しかも不意打ちで!」
ケイン様の腕からはなれ、男性に向かって行こうとするミリー様を見て、私は慌てて声を上げる。
「いけません!」
「…あなたは?」
ミリー様は初めて、私の存在に気が付いたようで、一瞬、訝しげな顔をしたあと、すぐに満面の笑みを浮かべ、エプロンをつけたスカートについたゴミを払ったあと、頭を下げた。
「リノア様ですね! お会いできて嬉しいです!」
「ミリー様、私もお会いできて嬉しいです。ぜひ、お話したいところなのですが、まずは、この方のお相手をしなくては」
「私がやりますから、リノア様は座っていて下さい!」
気が付くと、店内にいたお客様は全ていなくなっていて、中にいるのは、店員さん達とケイン様、ミリー様、私、そして酔っぱらい男と辺境伯だけになっていました。
「いけません。あなたは男爵令嬢なのでしょう? 後ろにいる方は辺境伯です。あなたが罰されるかもしれません」
「ですけどっ!」
「なんだ、嬢ちゃんがお相手してくれんのか?」
大柄な男が私達に向かって近付いて来た時、男の喉元にケイン様の剣の切先が当てられました。
「それ以上、リノア様に近づいたら、首をかっ切るぞ」
「ケイン! リノア様の前では駄目よ!」
ミリー様が私を庇うように立ったあと叫びました。
なんだか思いもよらぬ事になっているのです。
全然、気分転換にならないのですが?
いえ、ある意味、気分は転換してますかね…。
134
あなたにおすすめの小説
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ
棗
恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。
王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。
長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。
婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。
ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。
濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。
※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています
【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
愛を語れない関係【完結】
迷い人
恋愛
婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。
そして、時が戻った。
だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。
[完結]不実な婚約者に「あんたなんか大っ嫌いだわ」と叫んだら隣国の公爵令息に溺愛されました
masato
恋愛
アリーチェ・エストリアはエスト王国の筆頭伯爵家の嫡女である。
エストリア家は、建国に携わった五家の一つで、エストの名を冠する名家である。
エストの名を冠する五家は、公爵家、侯爵家、伯爵家、子爵家、男爵家に別れ、それぞれの爵位の家々を束ねる筆頭とされていた。
それ故に、エストの名を冠する五家は、爵位の壁を越える特別な家門とされていた。
エストリア家には姉妹しかおらず、長女であるアリーチェは幼い頃から跡取りとして厳しく教育を受けて来た。
妹のキャサリンは母似の器量良しで可愛がられていたにも関わらず。
そんな折、侯爵家の次男デヴィッドからの婿養子への打診が来る。
父はアリーチェではなくデヴィッドに爵位を継がせると言い出した。
釈然としないながらもデヴィッドに歩み寄ろうとするアリーチェだったが、デヴィッドの態度は最悪。
その内、デヴィッドとキャサリンの恋の噂が立ち始め、何故かアリーチェは2人の仲を邪魔する悪役にされていた。
学園内で嫌がらせを受ける日々の中、隣国からの留学生リディアムと出会った事で、
アリーチェは家と国を捨てて、隣国で新しい人生を送ることを決める。
妹なんだから助けて? お断りします
たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる