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7 新たな出会い 1
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朝食を終えた後からは、ヌービン夫人により、私の事をリュシリュー男爵が気にかけているという噂がまたたく間に広がってしまった為、私が挨拶に行かなくても、リュシリュー男爵と少しでもお近付きになりたいという魂胆が見え見えの人達が家に訪ねてきて大変だった。
どの人がご近所さんかもわからないので、菓子折りは渡さず、訪問客が落ち着いた昼頃に、お昼ごはんの調達も兼ねて外へ出て、ご近所さんに挨拶する事にした。
朝に閉まっていたお店も開いていたので、まず両隣に菓子折りを持っていった。
話を聞いてみたところ、私の家は商店街の中にある様で、どうやら、元々は洋服屋さんだったのを、一階も住める様に公爵家が改築してくれたみたいだった。
両隣共に、中年の夫婦が店番をしていて、とても明るくて陽気な人達だった。
ご近所さん付き合いは大事だし、食材が必要な時は両隣で買う事に決め、付近の散歩を終えた後に、お店で買い物をして帰ろうと考えながら、広い通りを歩く。
家の前の道は、馬車が3台程通れそうな広い道で、人通りも多い。
ただ、道は整備されていなくて、でこぼこ道なので、足元を注意して歩かないといけない。
何か、手軽に買って食べれそうな物を、と考えながら歩いていると、噴水のある広場にたどり着いた。
広場には出店が並んでいて、近くにベンチもあったので、何か美味しそうなものを選んで買う事にした。
男爵令嬢時代ではありえなかった事ばかりで、胸がワクワクする。
一人で散歩や買い物だなんて初めてだから!
「お嬢さん、見ない顔だな! もしかして、噂の子かな? おまけするし食べてみない? 美味しいよ!」
ホットドッグ屋さんのお兄さんから声を掛けられて我に返る。
近寄っていくと、お兄さんに尋ねられた。
「字は読める?」
「はい、読めます!」
「じゃあこれ」
メニュー表を渡されて目を通した後、看板メニューであり、一番人気のホットドッグにする事に決めた。
「えっと、辛いものが苦手なんですが、マスタード抜きって出来ます?」
「出来るよ! ちょっと待ってな」
結局、ホットドッグ屋のお兄さんは、おまけといって、ホットドッグ一つの代金で、飲み物まで付けてくれた。
作ってもらっている間に話を聞いてみると、この街は比較的治安も良くて、知り合い同士が多い為、見ない顔がいると、すぐにわかるんだそうだ。
しかも、リュシリュー男爵の件もあるから、私に悪さしようとする人間はいないだろうと教えてくれた。
公爵家から支援してもらってるから、遊んで暮らせるだけのお金は、しばらくはもらえそうだけど、いつ支援がなくなるかわからないし、職を見つけないといけないけど、募集してる所はあるかな?
ヌービン夫人に相談してみよう。
公園のベンチでホットドッグを食べながら、そんな事を考えていると、私とそう年齢の変わらない、背が高くてやせ細った、大人しそうな眼鏡をかけた男性が近づいてきた。
「こ、こんにちは」
「え? あ、こんにちは」
「隣、いいですか?」
尋ねられて、私は周りを見回す。
ベンチは他にもいくつかあって、人が誰も座っていないベンチもある。
なのに、わざわざ、どうして隣に…?
嫌な考えが浮かんだけれど、口に出す訳にはいかず、ベンチの端の方に座り直してから、笑顔で頷く。
「かまいませんよ。私はもうすぐ食べ終えますから」
「えっと、あの、あなたは、文字が読めるんですね」
肩まであるストレートの黒髪で、長い前髪を横に分けているので、髪が落ちてきて邪魔なのか、男性は髪を耳にかけながら話しかけてきたので頷く。
「ああ。はい。読めますけど」
「すごいですね。平民は生活に必要な単語以外は文字が読めない人間が多いのに…。あの、もしかして、あなたは、リュシリュー男爵のご親戚の方ですか?」
「違います」
「あの、でも、リュシリュー男爵が引っ越してきた人に挨拶だなんて、今までにないんですよ」
本当にリュシリュー男爵の権力、いや、ヌービン夫人の口の軽さは良し悪しだわ。
…って、ヌービン夫人に口止めするのを忘れたのは私だから、自業自得なの?
とにかく、見知らぬ人だし、早くこの場を離れよう。
「たまたまですよ。では、失礼します」
残っていたホットドッグを急いで食べ終えてから、頭を下げて立ち上がると、彼が言う。
「あの、何か困った事があったら言って下さい! あの! 力になりますのから!」
「あー、はい。でも、ご近所の皆さんが良くして下さってるので大丈夫です。お気遣い、ありがとうございました」
初対面、しかも、どこの誰かわからない人間に頼る気はさらさらない。
逆に、彼の事は要注意人物に認定する事にした。
だって、人に親切にしたいというより、リュシリュー男爵に近付きたいという人だろうし…。
これからも、こんな風に知らない人から話しかけられるのかしら…。
迷惑な話だわ。
飲食し終えた後のゴミは公園のゴミ箱に捨てて、今日は気分が削がれたので、家の方に戻る事にした。
一応、後ろを振り返ると、さっきの人は付いてきていないみたいだったけど、念の為、早足で歩く。
すぐに、お隣さんのお店が見えてきたので、買い物を終えてから、家の中に入った。
自分で、ご飯を本格的に作るのは初めてだけど、レシピももらったし、何とか頑張ってみよう!
一人ぼっちの家は本当に静かで、また不安がこみ上げてきたけれど、この家の中にいれば安全なので、今日はもう外には出ずに荷解きや、料理をしてみる事にした。
どの人がご近所さんかもわからないので、菓子折りは渡さず、訪問客が落ち着いた昼頃に、お昼ごはんの調達も兼ねて外へ出て、ご近所さんに挨拶する事にした。
朝に閉まっていたお店も開いていたので、まず両隣に菓子折りを持っていった。
話を聞いてみたところ、私の家は商店街の中にある様で、どうやら、元々は洋服屋さんだったのを、一階も住める様に公爵家が改築してくれたみたいだった。
両隣共に、中年の夫婦が店番をしていて、とても明るくて陽気な人達だった。
ご近所さん付き合いは大事だし、食材が必要な時は両隣で買う事に決め、付近の散歩を終えた後に、お店で買い物をして帰ろうと考えながら、広い通りを歩く。
家の前の道は、馬車が3台程通れそうな広い道で、人通りも多い。
ただ、道は整備されていなくて、でこぼこ道なので、足元を注意して歩かないといけない。
何か、手軽に買って食べれそうな物を、と考えながら歩いていると、噴水のある広場にたどり着いた。
広場には出店が並んでいて、近くにベンチもあったので、何か美味しそうなものを選んで買う事にした。
男爵令嬢時代ではありえなかった事ばかりで、胸がワクワクする。
一人で散歩や買い物だなんて初めてだから!
「お嬢さん、見ない顔だな! もしかして、噂の子かな? おまけするし食べてみない? 美味しいよ!」
ホットドッグ屋さんのお兄さんから声を掛けられて我に返る。
近寄っていくと、お兄さんに尋ねられた。
「字は読める?」
「はい、読めます!」
「じゃあこれ」
メニュー表を渡されて目を通した後、看板メニューであり、一番人気のホットドッグにする事に決めた。
「えっと、辛いものが苦手なんですが、マスタード抜きって出来ます?」
「出来るよ! ちょっと待ってな」
結局、ホットドッグ屋のお兄さんは、おまけといって、ホットドッグ一つの代金で、飲み物まで付けてくれた。
作ってもらっている間に話を聞いてみると、この街は比較的治安も良くて、知り合い同士が多い為、見ない顔がいると、すぐにわかるんだそうだ。
しかも、リュシリュー男爵の件もあるから、私に悪さしようとする人間はいないだろうと教えてくれた。
公爵家から支援してもらってるから、遊んで暮らせるだけのお金は、しばらくはもらえそうだけど、いつ支援がなくなるかわからないし、職を見つけないといけないけど、募集してる所はあるかな?
ヌービン夫人に相談してみよう。
公園のベンチでホットドッグを食べながら、そんな事を考えていると、私とそう年齢の変わらない、背が高くてやせ細った、大人しそうな眼鏡をかけた男性が近づいてきた。
「こ、こんにちは」
「え? あ、こんにちは」
「隣、いいですか?」
尋ねられて、私は周りを見回す。
ベンチは他にもいくつかあって、人が誰も座っていないベンチもある。
なのに、わざわざ、どうして隣に…?
嫌な考えが浮かんだけれど、口に出す訳にはいかず、ベンチの端の方に座り直してから、笑顔で頷く。
「かまいませんよ。私はもうすぐ食べ終えますから」
「えっと、あの、あなたは、文字が読めるんですね」
肩まであるストレートの黒髪で、長い前髪を横に分けているので、髪が落ちてきて邪魔なのか、男性は髪を耳にかけながら話しかけてきたので頷く。
「ああ。はい。読めますけど」
「すごいですね。平民は生活に必要な単語以外は文字が読めない人間が多いのに…。あの、もしかして、あなたは、リュシリュー男爵のご親戚の方ですか?」
「違います」
「あの、でも、リュシリュー男爵が引っ越してきた人に挨拶だなんて、今までにないんですよ」
本当にリュシリュー男爵の権力、いや、ヌービン夫人の口の軽さは良し悪しだわ。
…って、ヌービン夫人に口止めするのを忘れたのは私だから、自業自得なの?
とにかく、見知らぬ人だし、早くこの場を離れよう。
「たまたまですよ。では、失礼します」
残っていたホットドッグを急いで食べ終えてから、頭を下げて立ち上がると、彼が言う。
「あの、何か困った事があったら言って下さい! あの! 力になりますのから!」
「あー、はい。でも、ご近所の皆さんが良くして下さってるので大丈夫です。お気遣い、ありがとうございました」
初対面、しかも、どこの誰かわからない人間に頼る気はさらさらない。
逆に、彼の事は要注意人物に認定する事にした。
だって、人に親切にしたいというより、リュシリュー男爵に近付きたいという人だろうし…。
これからも、こんな風に知らない人から話しかけられるのかしら…。
迷惑な話だわ。
飲食し終えた後のゴミは公園のゴミ箱に捨てて、今日は気分が削がれたので、家の方に戻る事にした。
一応、後ろを振り返ると、さっきの人は付いてきていないみたいだったけど、念の為、早足で歩く。
すぐに、お隣さんのお店が見えてきたので、買い物を終えてから、家の中に入った。
自分で、ご飯を本格的に作るのは初めてだけど、レシピももらったし、何とか頑張ってみよう!
一人ぼっちの家は本当に静かで、また不安がこみ上げてきたけれど、この家の中にいれば安全なので、今日はもう外には出ずに荷解きや、料理をしてみる事にした。
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