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15 余計なお世話
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ワイズは近くにある店の屋根の方まで飛んでいき、私達は人の邪魔にならない様に横に避けてから、話を開始する。
「ミラン、どうして、こんな所にいるの? あなた、ご両親から何も聞いてない訳ではないわよね?」
「ワイズが君を探し出してくれたから、君を迎えに来た。まあ、すぐに連れて帰れる訳じゃないけど、とにかく話をしたい」
「迎えに来た……って、えっと、その、怒ってるわけではないのね?」
「怒ってるかと言われれば、怒ってるかもしれない。それは君に対してだけじゃなくて、自分自身や、両親にもだけど」
ミランはにっこりと笑うと、私に尋ねてくる。
「とにかく、人目を気にせずに、ゆっくり話せる場所はないか?」
「私の家の方が良いと思う。飲食店も近くにはあるけど、誰が聞き耳を立てているかわからないから」
「そうだな。君の周りには変わった人間がいるみたいだから、その方がいいだろう」
「変わった人間って、ワイズから聞いたの?」
尋ねてから、自分の家の方に向かって歩き出すと、ミランが答える。
「まあね。だから、逃げても無駄だよ。またワイズが君を探すから。というか、もう逃さないけど」
「ミラン、あなた、さっきも言ったけど、あなたのご両親からは何も言われてないの? 大体、私はあなたから逃げたんじゃないのよ!」
「わかってるよ。俺の両親がどうせ、君や君の両親に何か言ったんだろ?」
ミランは私の手をつかんで、先を歩こうとする。
「とりあえず、君の家に案内してくれる?」
「それはかまわないけど、どうして手をつかむの。それにあなたが先に歩いたら意味がないでしょ。私の家を知らないくせに」
「大丈夫だよ。ワイズが教えてくれるから」
言われて、上を見上げると、ワイズが家や店の屋根を先に飛んで、ミランを案内している。
「ワイズは本当に賢い子ね」
「まあね」
「もしかして、あなたの使い魔だったりする?」
「当たり。だけど、両親にも言ってないから、その事は誰にも言わないでくれ」
「え!? どうして? 隠す事でもないでしょ?」
魔法を使える人間の全てが使い魔を持てる訳ではない。
使い魔を持てる人って、この国ではすごい事だから、隠すものでもないと思うんだけど…。
色々とあるのかしら?
「知られていない方がいい時が多いだろ?」
「だからって、家族にまで言わないの?」
「家族だって裏切る事があるだろ? 今回みたいに」
家族が裏切るで思い出す。
私はミランの為と思って、この暮らしを始めたけど、きっかけとしては、ミランの家族から脅されたのだし、彼と一緒にいるのは良くない。
私の家族に何かあってはいけないもの。
「聞いて、ミラン」
彼の手を振り払おうとしたけど無理だったので、足を止めて続ける。
「私とあなたの事、あなたのご両親は良く思われていないの」
「知ってるよ。あの手この手で、俺と君との仲を裂こうとしてる」
「やっぱり、あなたもご両親から何か言われたの?」
「ご丁寧に、俺の失恋を癒やすために、婚約者候補を探してくれていたみたいだ」
「ねえ、聞いて、ミラン、お二人はあなたの将来を考えたのよ!」
もうこうなったら、素直にぶちまけてやろうと思った時だった。
「リディア?」
後ろからトータスの声が聞こえた。
トータスは私の腕を掴んでいるミランに気付き、こちらへ近寄ってくる。
そして、私と一緒に立ち止まって、振り返ったミランを睨みながら尋ねた。
「あんたがストーカーか?」
「は? ストーカー?」
ミランが聞き返す。
しまった!
トータスはミランをストーカーだと思ってるみたい!
って、どうしてトータスがストーカーの事を知ってるの?
「待って、トータス! 彼は違うわ! 絶対に彼じゃない! それに、どうして、あなたがその事を知ってるのよ!」
「今は、そんな事は関係ないだろ!」
「関係あるわよ! 私、あなたには教えてないし、他の人にも口止めしたのよ!?」
「パン屋から聞いたんだよ! それに、そいつがストーカーじゃないって、どうしてそう思えるんだよ?! イケメンって以外は、いかにもって感じの顔じゃねぇか」
ストーカーにいかにもって顔があるの?
目の下のクマがひどいから?
にしたって、意味がわからない!
イケメンでもストーカー気質の人がいてもおかしくないし!
「リディア、彼とは知り合い?」
ミランが私の耳に彼の口を寄せて聞いてくるので、こんな時なのに、ゾクゾクしてしまい、声を上げそうになるのをこらえてから答える。
「私の住んでいる家の隣の家に住んでる人の息子さんよ。簡単に言うと、隣の住人」
ミランに答えてから、今度はトータスに向かって言う。
「トータス、前に言ったでしょう。好きな人がいるって。彼がそうなの」
ミランの方を手で示すと、トータスは不機嫌そうな顔になる。
「女って皆、顔で選ぶんだな」
「ちょっと、それってどういう意味!?」
聞き捨てならなくて言い返すと、トータスは言う。
「そいつのせいでリディアは引っ越してきたんだろ!? それなのに、どうしてそいつを憎んだりしないんだよ!?」
「彼のせいじゃないからよ!」
「そうやって庇うんだな!」
「あなた、自分が何を言ってるかわかってるの!? それに私にとっては、あなたの言ってる事は余計なお世話なんだけど!? 私、あなたの所有物じゃないのよ!?」
ほんと、この人、何を言ってるのかわかんないんだけど!?
トータスが何か言い返してくる前に、ミランが私の肩を持って、トータスに言う。
「僕の顔を褒めてくれるのは有り難いけど、君だって、黙っていれば整った顔立ちだと思うよ? リディアに興味がある様だけど、残念ながら、彼女は君のものにはならない」
「そうよ! 悪いけど、私、あなたみたいなタイプは男性として好みじゃない! 心配してくれる気持ちは有り難いけど、踏み込みすぎよ!」
「思わせぶりな態度をみせやがって!」
「はあ!?」
捨て台詞を吐いて、去っていくトータスの背中に向かって言い返してやりたかったけど、ミランに止められる。
「ああいう奴には何を言っても無駄だ」
「だけど、思わせぶりな態度って、私、記憶にないんだけど!?」
「少し優しくしただけで、自分を好きだと思い込む人もいるみたいだから、そういうタイプかもしれないな」
ミランは呆れた顔で言った後、続ける。
「とりあえず君の家に行ってもいいかな? また、変な邪魔が入っても困るから」
「そうね」
頷いてから、何とか怒りをおさえて、ミランと一緒に私の家に向かったのだった。
「ミラン、どうして、こんな所にいるの? あなた、ご両親から何も聞いてない訳ではないわよね?」
「ワイズが君を探し出してくれたから、君を迎えに来た。まあ、すぐに連れて帰れる訳じゃないけど、とにかく話をしたい」
「迎えに来た……って、えっと、その、怒ってるわけではないのね?」
「怒ってるかと言われれば、怒ってるかもしれない。それは君に対してだけじゃなくて、自分自身や、両親にもだけど」
ミランはにっこりと笑うと、私に尋ねてくる。
「とにかく、人目を気にせずに、ゆっくり話せる場所はないか?」
「私の家の方が良いと思う。飲食店も近くにはあるけど、誰が聞き耳を立てているかわからないから」
「そうだな。君の周りには変わった人間がいるみたいだから、その方がいいだろう」
「変わった人間って、ワイズから聞いたの?」
尋ねてから、自分の家の方に向かって歩き出すと、ミランが答える。
「まあね。だから、逃げても無駄だよ。またワイズが君を探すから。というか、もう逃さないけど」
「ミラン、あなた、さっきも言ったけど、あなたのご両親からは何も言われてないの? 大体、私はあなたから逃げたんじゃないのよ!」
「わかってるよ。俺の両親がどうせ、君や君の両親に何か言ったんだろ?」
ミランは私の手をつかんで、先を歩こうとする。
「とりあえず、君の家に案内してくれる?」
「それはかまわないけど、どうして手をつかむの。それにあなたが先に歩いたら意味がないでしょ。私の家を知らないくせに」
「大丈夫だよ。ワイズが教えてくれるから」
言われて、上を見上げると、ワイズが家や店の屋根を先に飛んで、ミランを案内している。
「ワイズは本当に賢い子ね」
「まあね」
「もしかして、あなたの使い魔だったりする?」
「当たり。だけど、両親にも言ってないから、その事は誰にも言わないでくれ」
「え!? どうして? 隠す事でもないでしょ?」
魔法を使える人間の全てが使い魔を持てる訳ではない。
使い魔を持てる人って、この国ではすごい事だから、隠すものでもないと思うんだけど…。
色々とあるのかしら?
「知られていない方がいい時が多いだろ?」
「だからって、家族にまで言わないの?」
「家族だって裏切る事があるだろ? 今回みたいに」
家族が裏切るで思い出す。
私はミランの為と思って、この暮らしを始めたけど、きっかけとしては、ミランの家族から脅されたのだし、彼と一緒にいるのは良くない。
私の家族に何かあってはいけないもの。
「聞いて、ミラン」
彼の手を振り払おうとしたけど無理だったので、足を止めて続ける。
「私とあなたの事、あなたのご両親は良く思われていないの」
「知ってるよ。あの手この手で、俺と君との仲を裂こうとしてる」
「やっぱり、あなたもご両親から何か言われたの?」
「ご丁寧に、俺の失恋を癒やすために、婚約者候補を探してくれていたみたいだ」
「ねえ、聞いて、ミラン、お二人はあなたの将来を考えたのよ!」
もうこうなったら、素直にぶちまけてやろうと思った時だった。
「リディア?」
後ろからトータスの声が聞こえた。
トータスは私の腕を掴んでいるミランに気付き、こちらへ近寄ってくる。
そして、私と一緒に立ち止まって、振り返ったミランを睨みながら尋ねた。
「あんたがストーカーか?」
「は? ストーカー?」
ミランが聞き返す。
しまった!
トータスはミランをストーカーだと思ってるみたい!
って、どうしてトータスがストーカーの事を知ってるの?
「待って、トータス! 彼は違うわ! 絶対に彼じゃない! それに、どうして、あなたがその事を知ってるのよ!」
「今は、そんな事は関係ないだろ!」
「関係あるわよ! 私、あなたには教えてないし、他の人にも口止めしたのよ!?」
「パン屋から聞いたんだよ! それに、そいつがストーカーじゃないって、どうしてそう思えるんだよ?! イケメンって以外は、いかにもって感じの顔じゃねぇか」
ストーカーにいかにもって顔があるの?
目の下のクマがひどいから?
にしたって、意味がわからない!
イケメンでもストーカー気質の人がいてもおかしくないし!
「リディア、彼とは知り合い?」
ミランが私の耳に彼の口を寄せて聞いてくるので、こんな時なのに、ゾクゾクしてしまい、声を上げそうになるのをこらえてから答える。
「私の住んでいる家の隣の家に住んでる人の息子さんよ。簡単に言うと、隣の住人」
ミランに答えてから、今度はトータスに向かって言う。
「トータス、前に言ったでしょう。好きな人がいるって。彼がそうなの」
ミランの方を手で示すと、トータスは不機嫌そうな顔になる。
「女って皆、顔で選ぶんだな」
「ちょっと、それってどういう意味!?」
聞き捨てならなくて言い返すと、トータスは言う。
「そいつのせいでリディアは引っ越してきたんだろ!? それなのに、どうしてそいつを憎んだりしないんだよ!?」
「彼のせいじゃないからよ!」
「そうやって庇うんだな!」
「あなた、自分が何を言ってるかわかってるの!? それに私にとっては、あなたの言ってる事は余計なお世話なんだけど!? 私、あなたの所有物じゃないのよ!?」
ほんと、この人、何を言ってるのかわかんないんだけど!?
トータスが何か言い返してくる前に、ミランが私の肩を持って、トータスに言う。
「僕の顔を褒めてくれるのは有り難いけど、君だって、黙っていれば整った顔立ちだと思うよ? リディアに興味がある様だけど、残念ながら、彼女は君のものにはならない」
「そうよ! 悪いけど、私、あなたみたいなタイプは男性として好みじゃない! 心配してくれる気持ちは有り難いけど、踏み込みすぎよ!」
「思わせぶりな態度をみせやがって!」
「はあ!?」
捨て台詞を吐いて、去っていくトータスの背中に向かって言い返してやりたかったけど、ミランに止められる。
「ああいう奴には何を言っても無駄だ」
「だけど、思わせぶりな態度って、私、記憶にないんだけど!?」
「少し優しくしただけで、自分を好きだと思い込む人もいるみたいだから、そういうタイプかもしれないな」
ミランは呆れた顔で言った後、続ける。
「とりあえず君の家に行ってもいいかな? また、変な邪魔が入っても困るから」
「そうね」
頷いてから、何とか怒りをおさえて、ミランと一緒に私の家に向かったのだった。
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