あなたに未練などありません

風見ゆうみ

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第21話 踏み出すために…。

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 結局、ジェレミー殿下はヘイスト殿下からの手紙の封は切らずに持ち帰られた。
 メイドがヘイスト殿下にジェレミー殿下の話を伝えたところ、絶対にジェレミー殿下には読んでほしくないと叫んだらしく、慌てて手紙を持ってきたメイドが戻ってきて、ジェレミー殿下がわたしの部屋から出てくるまで待っていたのだ。

 ジェレミー殿下も脅しのつもりで言っていたらしく、ジェレミー殿下自身は読むつもりはなかったみたい。
 ただ、危険な事が書いてあっても困るからという事で、ジェレミー殿下の側近の人に手紙を開封してもらう事にすると言っていた。

 どうしてもわたしに伝えなければいけない事が書いてあったら教えてくれると言っていたけれど、その日の晩に何も連絡がなかったので、大した事は書かれていなかったみたいね。

 それに、どうしてもわたしに伝えたい事なんて、あるとしたら謝罪くらいでしょうけれど、本当に反省して謝ってくれているかはわからないわ。

 次の日の夕方にジェレミー殿下がまたわたしの所へやって来てくれて、キャロライン達の取り調べの内容やわたしが質問した事の答えを教えてくれた。

 結局、キャロラインは反省して、わたしに謝りたいと言っているようだった。
 そう言った時のキャロラインは涙を流していたらしい。

 それが嘘泣きなのか、本当の涙なのかはわからない。
 わたしが見たわけではないから。
 だけど、ジェレミー殿下が聞いた話では、嘘の様には見えなかったとの事だった。

「ヘイスト殿下は彼女について何と仰ってるんですか?」
「騙した彼女が悪いが、重い罪にする必要はないと言っているらしいよ」
「自分が簡単に騙されてしまった事については反省しているんですか?」
「それについては、騙した方が悪いのに騙された方が悪い様な言い方をされて不愉快だと言っているらしい」
「老人や幼い子供が騙されたというのなら、よっぽどの事じゃない限り責める気にはなれませんが、ヘイスト殿下は違うでしょうに…」
「自分はまだ子供のつもりなんだろう。この国の成人は18歳だから。未成年といえば未成年だからね」

 ジェレミー殿下はため息を吐いてから続ける。

「父上も母上も成人するまでに何とかヘイストの考え方が変わってくれたら良いと願っていたけれど、このままのやり方では確実に無理だろうね。ヘイストはもう叔父上の言う事しか聞く気がなさそうだから」
「…どういう事ですか?」
「叔父上がヘイストを養子にしたいと言い出したんだ。彼もそれに同意するつもりらしい」
「ええ!?」

 その時は驚いて大きな声を上げてしまったけれど、何か理由があるのだろうと思って聞いてみる。

「ヘイスト殿下を養子にする事で、ファブロー公爵にはどんなメリットがあるのでしょうか?」
「このままいけばヘイストは王族を除籍、もしくは王位継承の権利を剥奪される可能性がある」
「そ、それはそうかもしれませんが、それを待てばいいのでは?」
「さっきも言ったけれど、父上も母上も未成年の間はヘイストを更生させる事を諦めたくないみたいだ。甘いと言われるかもしれないが、親心なんだろう」
「今のところ、ヘイスト殿下が王位を継ぐわけではありませんしね」

 この国は国民から税金をとらないかわりに不動産や資源などは国のものになっている。

 だから、他の国の様に国民の税金で王家が暮らしているわけではないから、ヘイスト殿下に対して、お金の無駄遣いだなんて言われる事はないと思うから、成年になるまではと思ってしまう気持ちはわからないでもない。
 私には子供がいないからわからないけれど、親心とはそんなものなのかしら?

 もちろん、賛否はあるでしょうけれど。

「となると、ヘイストは少なくとも2年近くは王位継承権を手放さない事になる」
「……養子にしてしまえば、すぐに王位継承順位が変わるという事ですか…。でも、そうなると、ファブロー公爵の狙いは自分の子供に王位を継がせたいというわけではないんでしょうか」
「もしかすると、彼の中では言う事をきかない自分の息子よりもヘイストの方が可愛くなっているのかもしれない」

 …そりゃあ、人が言った事が嘘であっても自分にとって都合の良い事なら、なんでもかんでも信じる人ですものね。

「話を元に戻すけれど、君はセバン子爵令嬢や他の友人達についてはどうしたい?」
「そうですね…。あの、彼女達はどうしてそんな嘘をついたかに関してはわかったんでしょうか?」
「元友人達は君が羨ましかったからと言っていた」
「わたしの事が羨ましかった?」

 信じられなかった。
 何が羨ましかったというの?
 侯爵令嬢だったから?
 ヘイスト殿下の婚約者だったから?

 それに、キャロラインが反省しているかどうかは、やはりこの目で見てみたいし、本人の口から聞いてみたい。
 本当は二度と会いたくなかった。
 だけど、やっぱりちゃんと決着をつけないと。

「あの、ジェレミー殿下」
「何かな」
「キャロラインや他の友人達がどんな様子なのか知りたいんです。最初は会うだけ無駄かもしれないと思っていましたが、反省しているかどうか、自分自身の目で見て確認したくなりました。そして、もし、反省していないとわたしが判断した時は…」
「わかった。だけど、君が許したとしても、セバン子爵の爵位が男爵になる事は間違いない。許さなければ貴族じゃなくなる。それぞれの場合の結果が変わらない事は理解してくれ」
「承知しました」

 わたしがここを発つ日も近付いてきた。
 出来る限り、思い残す事無く、この地を去って新しい生活を始めたい。

 そのために、キャロラインや元友人達と、もう二度と関わる事のないように縁を断ち切ろうと思った。

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